Shygirlが日本で語る 妖精のような浮遊感、ビョークからの学び、XGへの熱視線

〈Ethereal〉な世界観、ビョークからの学び

―セガ・ボデガやダニー・L・ハール、アルカ、ムラ・マサなど多くの人とコラボレーションされています。様々な方と制作することで、ご自身の音楽家としての特徴で見えてきたものはありますか?

シャイガール:確かに、コラボレーションは自分の声を理解したり、本来やりたいことが何か私自身について振り返ったりする機会になってる。アルバム制作を終えた時、私は何者かってことがはっきりと理解できたし、アルバムは当時のタイムカプセルのような存在になった。今、新しい音楽に取り組んでるけど、以前よりもエグゼクティブ・プロデューサーとして意思決定やリスクを負う覚悟ができるようになったし、完成を見届けるのを楽しみにしてる! 今までやってきたことを誇りに思っているし、もちろん、それは私を支えてくれたコラボレーターたちのおかげでもある。


ライブのハイライトとなった「Heaven」は、ソニックマニアに出演したムラ・マサ、キャロライン・ポラチェックにも携わるダニー・L・ハールが制作に参加

―Spotifyの公式プレイリスト〈Ethereal〉が継続的にあなたの曲をピックしている通り、シャイガールの作品には天使・妖精のような浮遊感を感じます。タイトルも“Nymph”や“Heaven”など天使や妖精を彷彿とさせるモチーフが多いですよね。ご自身では、自らの音楽としてEthereal(エーテル的)なものが生まれる背景をどのように捉えていますか?

シャイガール:エモーションは時折、まるで聖書の中のストーリーのようなパワフルさを発揮して、人間の身体を超えていくように感じることがある。その感情って代々多くの人たちにも起こってきたことで、たくさんのキャラクターや表現方法に影響を与えてきたんだと思うと、安心感を覚える。私たちがどうしてそういった感情を持つのか、それには何か理由があると思う。天使や妖精、誘惑、願望の概念を知れば、自分の感情に折り合いをつけて自分を納得させることもできる。そういうふうに考えることに私はなんのためらいもないし、みんなと共有できる、人間の特別な資質の一つだとも思う。私には幼い頃から自分を理解しようとする時にいつも語りかけてくるキャラクターがいて、そういった定義できないようなミステリアスな存在に惹かれてる。



―Etherealな世界観について、あなたが共感を覚えるアーティストや作品は?

シャイガール:やっぱりビョーク。彼女と同じ時間軸にいるなんて信じられない! こんなに影響を受けた人と同じ時間を生きられるなんて、まさか想像しなかった。サウンドだけじゃなくて、私の人生にも影響を与えたアーティスト。子どもの頃にビョークの音楽を聴いて、私は居場所を見つけることができた。別にどこかに逃げようとしていたわけじゃなかったんだけど、存在を認めてくれるような、安心できるような居場所だった。この世界にいて、Etherealな空間にアクセスできるってことを教えてくれたんだよね。ただの逃避じゃない。それは、あなたがいる場所と実際につながるということだから。




―今年の春に「Woe」のビョーク・リミックスをリリースされましたね。自分の曲がリミックスされたものを聴いて、あなたはどのような発見を得ましたか?

シャイガール:まず、ビョークの方からアプローチしてくれたってことが本当に幸せ! 少しの言葉を交わしただけで、あとはこちらを信頼してくれた。それほど貴重なことってないと思う。ステム(楽曲を構成するトラックのグループ)ができて、ボーカルを受け取った時のことーー想像できる? ファンが歌手のボーカル音源をゲットするなんて! クレイジーな経験だった。でも、私にとってビョークというアーティストの期待に応えようというプレッシャーは心地良くもあった。相手にすばらしい機会を与えて、信じることの大切さ。音楽業界の多くは、相手との信頼関係で動いていると思う。自分を信じるだけじゃなくて、誰かが「きっとあなたならできる、美しいものを生み出せる」って言ってくれることで、それが原動力になったりするものだよね。

―しかも、あなたが尊敬する相手から……!

シャイガール:ええ! ほんとに信じられないよね? デモができあがった時、 セガ(・ボデガ)が送ってくれたの。私はロサンゼルスにいて、車の中で窓の外を眺めながら、”Oh my gosh…”ってうわの空だった(笑)。こんな貴重な瞬間を味わえたことに、本当に感謝してる。

Translated by Natsumi Ueda

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