父親との関係性ー日高さんのお父さんは何をされてた方なんですか?SKY-HI:パイロットってやつですね。飛行機乗りをやってました。
ー自分の生き方に影響を与えた部分があると思いますか?SKY-HI:あるんじゃないですか。SKY-HIになっちゃったし(笑)。
ー間違いないですね(笑)。SKY-HI:あと親父のメンタリティは終始ポジティブなところがありましたね。楽観的というよりは、問題に対してあんまりぺシミスティックにならない。どっちかっていうと、「そうなっちゃったらなっちゃったでしょうがないだろ」っていう方のマインドなのは確かで、だから自分もあんまりペシミスティックにならないようにはなった気がする。そういう部分も含めて、親父に対してはリスペクトがあるし、すげえなと思うことがたくさんあります。
ー刃牙も勇次郎に対してはリスペクトの精神を持ってますよね。SKY-HI:「Sarracenia」にしろ「Salvia」にしろ、リスペクトと愛情はすごく大事にしました。特に「Salvia」は強く意識したけど、さっきも言ったようにボーイズグループとしてどんなフェイズにいるかわからなかったから、ちゃんと性愛にも聴こえる余白を残しておかないといけないっていう、すげえ難しい作詞だったのを覚えてます。
ーたしかに、「Sarracenia」の方がよりアニメに寄り添ってる感じで、「Salvia」はアニメとリンクする部分もありつつ、もう少し広くいろんな意味に取れる歌詞になっているなと。SKY-HI:それがすごく大事だったんですよね。「Sarracenia」は勇次郎の曲でないとあり得ないものにする必要があったし、逆に「Salvia」は「BE:FIRSTっていうボーイズグループの新曲ですよ」って言って聞いたときに、「今回こういう曲なんだ、かっこいいね」って思われるものでないといけない。そこはすごくシビアに考えました。
ーでは「Sarracenia」は『範馬刃牙』のテーマ曲であることを強く意識して作られているわけですね。SKY-HI:むしろ勇次郎に引き出してもらったものすらあります。書いててすっげえ楽しかった。一ヴァース目とかプリプロの日にツルッと書けたと思うんだけど、ホントに一筆書きですよ。
ー〈この地球上全てが俺の遊び場 半端な覚悟で汚すなよ坊や〉はまさに勇次郎ですよね。あと〈さぁおかわりはいかがですか?〉とか〈お味の程はいかがですか?〉はやはり食卓のシーンを連想させます。SKY-HI:そうそう。ただ勇次郎にインスパイアを受けて、「刃牙」のオープニングソングを書くってなったときに、当然その全部を注釈するわけにはいかないわけじゃないですか……って思ってたんだけど、YOASOBIの「アイドル」を聴いてたら、そこまでやるのもありなんだなと……まあそれは置いといて、やっぱり自分の歌である必要は最低限あると思ってたから、一人称として自分じゃないといけない部分を気にしながら書いてはいて。ただその中でも絶対に抽出しないといけない勇次郎の部分は何だろうって考えると、「食」がでっかいワードとしてあったのは確かですね。「食」だけという概念にやたらこだわるから、あの人。
ートラックのプロデュースはどちらの曲もRyosuke“Dr.R”Sakaiさんですが、「Sarracenia」はどのように作っていったのでしょうか?SKY-HI:「刃牙の曲」という意識もあったけど、どのみちこのテンションをやりたいと思ってたのは間違いなくて、それは『THE DEBUT』収録の「Dramatic」にも繋がってくるところがあったりして。「Dramatic」のプロデュースはSUNNY BOYだからまた全然違う曲ではあるけど、SKY-HIとしてあのときやりたいと思ってたのはああいう音像で。
ー「Sarracenia」と『THE DEBUT』は近いタイミングで作ってたわけですか?SKY-HI:「Sarracenia」の方が『THE DEBUT』よりも前に作ってますね。このフックの発声、シャウトに近い声でずっと歌うみたいなことは多分「刃牙」じゃなかったらやってないと思うんですよ。キーがだいぶ高いから、普段なら「こんな無理して出してもしょうがないから、いくつか下げた感じで様子みようか」ってなってたと思うんですけど、Sakaiさんとも「刃牙のオープニングはこれくらい行った方がいいんじゃないか」みたいな話になって。この発声は俺とSakaiさんの中で発明で、ここから「Dramatic」にも繋がったし、この吠えながら歌う感じが一個の新しい武器になった感じがします。だから自分のやりたいこととやるべきことを考えた上で、「寄せようとした」というよりは「結果的に寄った」っていう方が近いかもしれないですね。タイアップソングの功罪みたいなのってやっぱりあって、自分がやりたいことじゃないことをやってもあんまりいい結果は生まれないし、あとで整合性を取ろうとしてもどっかで破綻しちゃうから、ゼロイチの部分はフルで自分のやりたいことをやるっていうのはすごく大事にしました。
Photo by Mitsuru Nishimura