テデスキ・トラックス・バンドが語る来日の抱負、夫婦の絆、クラプトンやジェフ・ベックへの敬意

テデスキ・トラックス・バンド(Photo by David McClister)

 
テデスキ・トラックス・バンド(Tedeschi Trucks Band)が10月18日、20日〜22日に東京・TOKYO DOME CITY HALL、24日に名古屋・Zepp Nagoya、25日に兵庫・あましんアルカイックホールで来日公演を開催する。Rolling Stone Japanでは昨年のスーザン・テデスキ取材に引き続き、今回はデレク・トラックスへのインタビューを実施した。

昨年アルバム4枚に及ぶ超大作『アイ・アム・ザ・ムーン』シリーズに取り組んだテデスキ・トラックス・バンドが、コロナ禍以降初めて日本にやって来る。オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー、ブッチ・トラックスの甥であり、デュアン・オールマンが参加したデレク&ザ・ドミノズから名前を授かったデレク・トラックスにとって、『いとしのレイラ』(1970年)は逃れようがない宿命のアルバム。2019年に同作の再演ライブ・アルバム『レイラ・リヴィジテッド』をリリースして決着をつけたかと思いきや、デレクはさらに奥へと足を踏み入れ、『いとしのレイラ』に影響を与えたペルシアの詩人、ニザーミー・ギャンジャヴィーの物語詩「ライラとマジュヌーン」をテーマに据え、『アイ・アム・ザ・ムーン』プロジェクトを遂行した。

村上春樹から受けた助言が作品に独自の視点をもたらした『アイ・アム・ザ・ムーン』のあらましは、スーザン・テデスキが昨年詳しく語った通り。今回は同作に対するエリック・クラプトンの反応や、若いメンバーが加わったバンドの現在、ジャパンツアーにかける意気込みをデレク・トラックスに語ってもらった。



─大作『アイ・アム・ザ・ムーン』プロジェクトをやり遂げたことに、達成感があったと思います。ツアーでもそこから何曲か演奏していますが、ライブでやってみた手応えはどうですか? 曲が成長しているのを感じる?

デレク:確かに独自の命を宿しつつあるなと感じるよ。あのアルバムを作った時はパンデミックの最中だったので、ライブで演奏する機会はなくて、何カ月も自分達だけの世界、つまりスタジオの中で過ごしていた。でもそれはそれで良かったんだ。すっかり自分達のものになるまでやれたし、あれはああいう形で出すしかないアルバムだった。でも実際にツアーに出てみると、ステージは毎晩違う。レコーディング中に参加した新しいメンバーもいるので、新鮮に感じながらも、全曲が自分達のものなんだという自信というか……昔の曲に関しては、そう思えるまでに少し時間がかかったよ。もともと他のメンバーがやっていたパートを、新しいメンバーは自分の解釈でやらねばならなかったわけだからね。むしろ『アイ・アム・ザ・ムーン』からの新曲は苦労することなくやれているよ。バンドにとってホッとできる場所、みたいに自信を持ってパワフルな演奏ができてるんじゃないかな。



─ファンの多くは、日本でも長尺の「パサクアン」をたっぷり聴けることを期待していると思います。やってくれる可能性はあるでしょうか?

デレク:(笑)あれは僕も弾いていて楽しいよ。ドラマーたちが息切れしない限りね。二人からは「ライブ開始から2時間後にあの曲をやるのだけはやめてほしい」と頼まれた(笑)。なので、もう少し早い段階で、彼らにまだガソリンが残ってるうちにやることにするよ。あれはいつやっても楽しい曲だ。どう発展するかわからないけど、楽しい。



─『アイ・アム・ザ・ムーン』はエリック・クラプトンと切っても切れない作品ですよね。エリックから何か感想を聞く機会はありましたか?

デレク: 実は『アイ・アム・ザ・ムーン』を作ってから、しばらく後まで話してなかったんだ。僕らのショウがロンドンのパラディアムで数日あった時、僕とスーザンとエリックと彼の奥さんとで食事をしたんだけど、奥さんがアルバムの話を持ち出してくれた。で、エリックはライブも観に来てくれたので、『アイ・アム・ザ・ムーン』の曲を実際に聴いてもらえて、反応も見ることができて良かったよ。エリックはすごく感激してくれてたし、そんなエリックを見ることができて、僕もうれしかった。スーザンにとってもエリックは昔からのヒーローなわけで……それまでは常に僕とスーザンはペアというか、エリックと会う時はいつも僕と一緒だったけれど、その時初めて一人のミュージシャンとしてスーザンを観て、リスペクトを払ってくれた。『アイ・アム・ザ・ムーン』を作ったことにも感激してくれてたみたいだ。エリックと長年にわたり、友情が続いていることをうれしく思うよ。初めてエリックと日本に来たのがきっかけで、ウドーの人たちと会い、僕もツアーで来るようになったので、彼には感謝しかない。親しい友人たちもたくさんできた。その前にも日本には行ってたけど、エリックのツアーで行った時は別世界だったからね。

─今やっているツアーでは、ジェフ・ベックの「ベックズ・ボレロ」も演奏していますね。あなたとジェフは、実は共通点が多そうな気がします。彼のどんなところから影響を受けましたか?

デレク:昔から彼の曲を聴いていたわけじゃないんだけど、彼とツアーをするようになって「ジェフみたいに弾ける人間は他にいない」と、みんなが思うのと同じ感想を抱いたよ。まさにユニーク。僕もそうだけど、ピックなしで弾くギタリストはそう多くないので、そのことで余計にジェフが好きになった! 彼がワミーバー(トレモロアーム)を使って弾くと、まるでスライド奏者のようだし、そういう意味で考え方やプレイに共通点があるのかもね。彼の古い曲を演奏し始めたら、すぐにしっくりきて、演奏するのが本当に楽しかった。ジェフのトリビュート・ライブで「ベックズ・ボレロ」を演奏したのがきっかけでジェフの曲の楽しさを再認識できたので、今後もカバーしていくと思う。ジェフは唯一無二の存在だったから、生きている時は彼の曲を演奏すること自体に違和感を覚えるほどだった。何をやってもジェフの方がうまいんだ、なぜ手を出す必要がある?って(笑)。でも彼が亡くなってしまった後は、それを将来に引き継いでいくことも大切だと思う。正しい形でリスペクトするのであればね。

ジェフとはいろんな形で一緒になることがあった。僕らのバンドが前座を務めたこともあるし、スーザンもフェスで一緒になったことがあったと思う。彼女はジェフを僕以上によく知っていたし、ツアー中に割と会うことがあったよ。


Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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