U2、「新時代のコンサート」でラスベガスを席巻 歴史的一夜の総括レポート

壮大な会場と演出、ヴァン・デン・ベルクの貢献

2曲目の「The Fly」は、この30年間がまるでなかったかのような、この夜一番のノスタルジックな瞬間だった。Zoo TVの映像がそのまま使われ、ボノは自身のオルターエゴであるThe Flyになってステージを歩き回る。彼らは一晩中このモードのままで、多くの昔からのファンを喜ばせることもできただろうが、それでは大きく後退することになっただろう。

「Even Better Than the Real Thing」では、エルヴィス・プレスリーのアーカイブから、ジョニー・デップ出演『ラスベガスをやっつけろ』や、ニコラス・ケイジ出演『リービング・ラスベガス』のシーンまで、ラスベガスの映像がトリッピーなコラージュが映し出される。ステージそのものが天井に向かって移動しているように感じられるほど、それらの映像はあっという間に通り過ぎていった。


Photo by RICH FURY

「なんてファンシーな会場だろうね」ボノは曲の最後にそう言った。「エルヴィスは間違いなくこの建物にいる。ここはエルヴィスの礼拝堂だ。エルヴィスの大聖堂だ。そうだろう。そして今夜、この大聖堂に入るには“flirtation(戯れの恋)”というパスワードが必要だった。このあと、僕たちは結婚するんだ。いいね?」

陽気な「Mysterious Ways」から「One」へと移行したときは、スクリーンを消してアンセムだけで会場を満たすという英断を下した。黙示録的な「Until the End of the World」は嵐雲と稲妻が対となり、バンドが30年ぶりにライブで演奏した「Tryin' to Throw Your Arms Around the World」では、ボノがステージを引き回す大きな白い紐に結ばれた風船の映像が映し出された。途中、彼はとても興奮した女性ファンをステージに招き入れ、風船とスイングしながら一緒に歌った。



このまま最後までアルバム収録曲をパワフルに駆け抜けるかと思われたが、その予想は外れた。「俺たちは『Achtung Baby』としばらく距離を置く必要があった』とボノは言った。「お互いを知るために、あの強烈さ(intensity)から離れる必要があったんだ。『Achtung Baby』は難産だった。子供を育てることは大冒険であり、自分を育ててくれるのは子供だということを発見することなんだ」。

「このことは誰にも話したことがなかった」彼は続けた。「この曲は、女性の視点からウェディングソングを書こうとしたものなんだ」

そこからストリップダウンした「All I Want Is You」を皮切りに、「Desire」「Angel of Harlem」、ボノがジミー・バフェット(今年9月1日に死去)と彼の家族に捧げた「Love Rescue Me」の4曲からなる『Rattle & Hum』のミニセットが披露された。その途中、ボノはブラム・ヴァン・デン・ベルグを紹介した。「1978年の10月以来、ラリー・ミューレン抜きでライブをやったことはない」ボノは言う。「彼の代わりを任せられる唯一の男を紹介しよう。ブラム・ヴァン・デン・ベルク! 今日は彼の誕生日なんだ(1982年9月29日生まれ)! 何か言いたいことはあるかい?」

「お間違いのないように」ドラマーはこの夜、ただ一言こう言った。「ラリー・マレン・ジュニアは唯一無二の存在です」。観客は喝采を送った。


Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Live Nation

『Rattle & Hum』コーナーのとき、スクリーンはほとんど暗転し、再び完全にバンドへと注目が集まった。「毎晩このターンテーブルのうえで、僕らの違うアルバムから曲を演奏するんだ」とボノが言った(これは事前に発表されていなかったが、彼らの全カタログから曲を取り上げる素晴らしい機会だ。彼らが『Pop』ナイトの時間を見つけてくれることを期待しよう。もうずいぶん待たされているのだから)。

1992年以来のパフォーマンスとなる「So Cruel」でショーは『Achtung Baby』に戻り、「Acrobat」と「Ultraviolet (Light My Way)」の激しい演奏が続いた。後者の曲では、実際の紫外線ライトが会場を跳ね回った。そして、「Love Is Blindness」と、30年前に録音したのと同じくらい堂々としたジ・エッジのギターソロでメインセットを締めくくった。


Translated by Rolling Stone Japan

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE