麻薬中毒、性的暴行、SMプレイ、カニエの元カノが暴露した波乱万丈な日々

シングルママになるって心に決めていた。男たちはなんでもダメにするって学んでたから

その後フォックスはニューヨークを離れ、一時的にルイジアナに移住した。頻繁にヘロインを服用するようになり、旧友との連絡もまばらになった。「私も茫然としました」とアンダロア氏は言う。「彼女がいつか目を覚まさなくなるんじゃないかと心配でした」。ニューヨークで落ち合って億万長者のプライベートジェットでマイアミに行こう、という友人の誘いに、彼女は二つ返事で飛びついた。機内で睡眠薬を盛られ、匿名の富豪から性的暴行を受けたと『Down the Drain』には書かれている。彼女はこの一件を警察に通報しなかった。「警察に通報して、自分のために声をあげたらどうなるか分かりきっていたわ」と本人。「できることは何もなかった。唯一まともだと思われた道は、何もなかったかのようにふるまうことだったの」。

2019年、フォックスは映画『アンカット・ダイヤモンド』でブレイクした。アダム・サンドラー演じる自堕落なダイヤモンド仲買人の小悪魔的な恋人ジュリアという役柄で、これ以上ないほど最高のタイミングだった。サフディ兄弟が彼女のために書いたというこの役は、年配男性が彼女に投影した「狂気的で茶目っ気たっぷりでイカした女性」というイメージにピッタリ当てはまるようにも見える。だがフォックスによれば、演じながら少しずつ現場で形作られていった役柄だという(例えば別れのシーンでは、彼女の発案でジュリアがサンドラーのアパートを破壊することになった)。映画のヒットで、彼女は文字通り一夜にしてスターの座に上り詰めただけでなく、これまでめったになかった経験を味わった。見た目以外の部分で評価されたのだ。「あの映画で自分が認められた気がした」と本人も言う。

だが『アンカット・ダイヤモンド』の成功は諸刃の剣でもあった。映画の公開と同じタイミングで、友人のジャンナが薬物の過剰摂取で死亡した。『Down the Drain』にもあるように、フォックスはサンドラーとのラブシーン撮影前夜にジャンナとオキシコドンを吸っていた。それが一転、映画の宣伝をしながら友人の死を悼むという状況に置かれたのだ。「みんな私にいろいろ話しかけてくるけど、私の頭の中は別のことでいっぱい」と彼女は当時を振り返る。「ある意味、そのほうが良かったのかも。公の場に出て仕事しなきゃ、って風に気を紛らわせることができなかったら、ドン底まで落ちていたかもしれない」。

ジャンナが死亡する以前、フォックスはサボキソンという依存症治療薬のプログラムを受け、ジャンナにも勧めようとしていた。彼女は依存症からの回復についてもオープンに語っている。「サボキソンについてもっと話したいし、いろんな人に知ってもらいたい。依存症治療薬については偏見があるようだけど、大勢の命を救ってくれる薬なのよ」。

だがそうしたオープンさが仇になったこともあった。アジーリア・バンクスは昨年Instagramで彼女の麻薬歴を批判し、息子のことを「ヤク中の赤ん坊」呼ばわりした。「うだうだ言いたいなら結構、あなた方みたいな人がいるからみんな治療を受けられないのよ」とフォックスは言う。「私が先陣を切らなきゃいけないなら、仕方ないわね」。

『Down the Drain』にも書かれているが、カニエ・ウェストはフォックスが麻薬中毒の過去を隠していたと責めたそうだ。ウェストは元妻のキム・カーダシアンからそのことを訊かされたという(フォックスはカーダシアンと直接言葉を交わしたことはないが、ウェストと交際する前から「彼女のファンだった」そうだ。元夫婦の破綻を目の当たりにしたことについては、「あの時の状況を俯瞰で見るのは壮観だった」と語っている)。

短命に終わったフォックスとウェストの情事をタブロイド紙で終始追いかけていた人には朗報だ。『Down the Drain』にはラッパーとの関係について書かれた章もあり、ウェストは「アーティスト」として登場する。フォックスはウェストのことを本に書くのをためらった。「みんなそこにばかり注目するでしょ。でも、触れないわけにはいかない気がしたの。私にとっては大事な転換期だったから」。

『Down the Drain』にはウェストとの波乱万丈な交際が包み隠さず書かれている。大晦日にマイアミで出会い、ホテルからホテルと渡り歩いて公の場に姿を見せた。ウェストは彼女の服装にOKを出し、ボディラインにケチをつけ、豊胸手術を受けさせようとまでした。本人いわく、ウェストとの交際は完全に純愛だったという。最初のデートはUnoや辞書ゲームに興じ、身体に触れあうのはカメラが回っている時だけだった。「(性的なことは)一切なかった」と本人も言う(フォックスはユダヤ人ではないが、交際中は反反ユダヤ主義的なところは一切見当たらなかったという。ウェストの話題は主に音楽プロジェクトやカーダシアンと間の問題だったという。「他のみんなと同じように、私もびっくりした」と本人。「なんだか狂信者か何かみたいだった」)

あの当時、フォックスは息子の父親が自分たちに無関心で、ろくに支援もしないことに腹をたて、Instagramで「ろくでなし」と非難したが(現在は良好な関係を築いているという)、ウェストも元妻に同じことをするつもりだったそうだ。「だんだ関係が変わっていって、私を使って別れた奥さんとヨリを戻すみたいな感じになった。1カ月しか続かなかったのもそれが理由ね」。例のInterview Magazine誌の記事に関しては、フォックスも『Down the Drain』で主張しているように、ほとんどがウェスト側の命令で書かれたでっちあげだそうだ。「フラグ」だと最初に感じたのはその時だったそうだ。「状況がやっと飲み込めて、こんなのに関わりたくないって思ったの」。

ウェストとの交際がキャリアにもたらした恩恵や、名声がもたらしたチャンスについて、フォックスは目を輝かせながらこう語る。「たくさんお金を稼げたわ。すごかった」。だがこの時期フォックスのスタイリストを務め、破局後もウェストと仕事を続けていたアンダロア氏によれば、フォックスは「精神的にダメージを受けた」そうだ。メディアからは有名人キラーとか玉の輿狙いというレッテルを貼られ、そのことが息子に悪い影響を与えるのではとも思い悩んでいた。「母親になってなかったら、もっと長く引きずっていたかもしれない」と本人。「以前の私だったら、これもチャンスだわ、利用しましょうと思っていたかもね。母親になった今は、前より自分に厳しくなったわ」。

母親になったことが、フォックスの指針になったとアンダロアは言う。「彼女には母親であることが一番なんです。結局、彼女にとって本当に大事なことはそれだけ。他のことはどうでもいい」。現在フォックスとヴァレンティノ君は、シャザムが恋人と暮らすアップタウンの線路沿いのアパートで暮らしている。フォックスいわく、「映画の『スリーメン・アンド・ベイビー』みたいな感じ。ただ私たちの場合、女性とゲイと性別不詳者だけど」。

毎日車でヴァレンティノ君を託児所に預け、手料理で夕飯を共にし、夜は『マジック・スクール・バス』や『それいけ、わんちゃん!』を観ながら眠りに落ちる。「いつもジュリアは母親らしいなって思います」とシャザムは言う。「彼女にとってはヴァレンティノが最優先なんです」。時にはみんなでトンプキン・スクエア公園に行ったり、セレブ仲間のエミリー・ラタコウスキーと出かけることもある。だが週2日の父親との面会以外は、フォックスが女手ひとつで子育てしている。

「自分はシングルママになるだろうなっていつも思っていた。自分にもそう言い聞かせてた」と本人。「長年の経験で、男どもはなんでもダメにするって学んだからね」

Akiko Kato

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