ゴス、ハロウィン、ビリー・アイリッシューサイモン・ル・ボンという人間にゴシック性を見出そうとしましたが、何も思い浮かびませんでした。サイモン・ル・ボン(以下、LB):正直に言って、俺も否定しない。ニック(・ローズ)はゴスを自認しているし、ハロウィン大好き人間だ。ハロウィンは彼のお気に入りの祝日だ。彼は生まれ変わったら「ニック・“ジ・アンチクライスト”・ローズ」を名乗るだろうね。
ーファンは喜ぶでしょう。LB:彼は、他人からどう見られようが気にしない。それがニック・ローズだ。
ーあなたとゴスとを無理やり結びつけるとすれば、あなたはかつて“映画『時計じかけのオレンジ』のサントラが人生を変えた”と発言しています。LB:ゴスではなく、ウェンディ・カルロスに影響を受けたんだ。
ーだからあなたはシンセサイザーを好むようになったのでしょうか。LB:その通り。シンセサイザーをフィーチャーしたクラシック音楽も好きだ。俺の心に訴えるものがある。
でも、いろいろなアイディアを試してみて、バンドのメンバーの誰かが夢中になれる何かを見つけたら、プロジェクトとしてスタートさせる十分な理由になるだろう。バンドの流れについて行くうちに、自分自身も、これまでとは違った何かに取り組めるチャンスだと気づくのさ。
Photo by Jonas Akerlund ーニューアルバムのコンセプトにピンときたのは、どのタイミングでしたか?LB:俺の場合は「Bury a Friend」(ビリー・アイリッシュ)と「Paint It, Black」(ストーンズ)のカバーからかな。オリジナルとは違った方向性でカバーできるという自信があったからね。
ービリー・アイリッシュの曲の、どこに惹かれたのでしょうか?LB:ジョン(・テイラー)が持ち込んだ曲だが、聴いてみて衝撃を受けた。パーフェクトだった。「こんなにも華麗なアプローチは、とても真似できない」というのが俺の第一印象だ。でも俺たちのバージョンを形にしていくうちに、ボーカル中心の曲というよりも、明らかにインストゥルメンタル寄りに仕上がっていった。
キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードというバンドを聴いたが、彼らは東方の音階を採り入れていた。調べてみると、ドレミファソラシの2番目の「レ」と6番目の「ラ」の音を半音下げた、ヒジャーズカールという音階があった。この音階を使ってみると、独特のメロディが生まれる。ふと思い付いて「Bury a Friend」のメインメロディにヒジャーズカールを組み合わせてみた。すると曲全体のフレーバーが見事に変わった。この曲が俺たちのものになった、と思えた瞬間だった。
ーあなた自身が選択したカバー曲はありますか?LB:いや、ない。イーグルスの「Witchy Woman」をやってみたかったんだけどな。
ー却下されたのでしょうか?LB:採用されなかった。自分のソロアルバムでやるかもしれない。
ーソロアルバムの計画があるのですか?LB:そうではないが、バンドのメンバーとして活動するのがどういうことかは、君もよく知っているだろう。俺たちは常に、ソロアルバムの制作に取り組んでいるのさ。