sunking シアトル実験デュオが語るヒップホップ、ジャズ、エレクトロを跨ぐ音楽人生

 
fox capture plan、さらさへの共感、日本との関係

ー音楽以外には、何か興味をもっていることはありますか?

アントワン:僕はいつか映画を撮りたいな。時間は掛かるかもしれないけれど、いつかきっと成し遂げたいと思っている。でも幾つになってもできそうだし、45でも、55歳になっても。ミュージックビデオなどの短編は、今もこっそり作ってはいるんだ。趣味って感じで。でもキャリアとか仕事っていう感じではなくて。そのうち生きてる間に、一度はちゃんとした映画を監督したいんだ。

ボビー:僕は音楽だけ(笑)。ビデオゲームやスポーツなどにも興味はあるけど。大学時代は野球をやってたし、スポーツは得意だけど、今現在は音楽だけにのめり込んでる感じだね。夢中になると、それだけに熱中する性格なんだ。

アントワン:来日中もボビーはずっとホテルに篭ってるよ。音楽をずっと作ってる。

ー日本での体験に刺激を受けて?

アントワン:外を歩いただけでも刺激を受けるよね。全てが違っているし、街中のあちこちから聴こえてくるジングルが全部違ってる。日本って美しいジングルがいっぱい鳴ってるよね。

ボビー:だけど僕が篭って音楽を作ってるのは、日本にいるからじゃなくて、どこに行ってもそうなんだ。シアトルでもLAでもニューヨークでもロンドンでも、どこに行っても曲を作ってる(笑)。


Photo by Will Matsuda

ー今回のツアーではfox capture planとのダブルヘッドライナーの日などもありました。日本のバンドの印象というのは?

ボビー:うん、fox capture planはイカしてた。

アントワン:最高だったよ。僕の知る限り日本の音楽は、とても素晴らしいと思う。まだ3回目の日本なので、それほど数は知らないけれど、すごく多様なタイプのバンドがいることに驚かされるし、オーディエンスも新しい体験を求めている。凄くインスパイアされるよ。僕たちが一緒に演奏したバンドは、そんなに知られてないかもしれないけど、大好きなのが、たとえば京都の“ばけばけばー”というバンド。2度一緒にステージに立ったけど、世界中で一番というほど好きだね。日本の音楽シーンは他に類を見ないと思うんだ。

ボビー:昨日も“さらさ”や日本のバンドに会えて良かったし、彼女とは話もできて、彼女に曲を送ろうと思っているんだ。そのうち共演曲ができるかも。日本のことが大好きだから、そういう交流を大切にしていきたいんだ。日本とアメリカの両方に僕たちは友人がいて、日本でももっと時間を過ごして、他のバンドと会ったり、コラボしたいと思っているんだ。



ーそもそも日本語のバンドもやってましたしね。

アントワン:“デンタルの唾”ね。もうちょっとちゃんと説明すると、メンバー全員が白人だったんだけど、シンガーのジェレミーが日本語で歌ってたんだ。彼の両親はかつて日本に住んでいたり、父親が『スーパーマリオRPG』や『ファイナルファンタジー』などのゲームソフトの英訳を手掛けた人で、だからジェレミーも日本語が話せたんだ。彼も日本に数年住んでいたし、バンドを結成したのは、彼が1970年代のシモンズ(日本のフォークデュオ)や1920年頃の「ゴンドラの唄」にハマったのがきっかけだった。日本語のカバーバンドとして始めたんだ。僕はカシオのキーボードを弾いたり、ドラムマシンを弄ったり。それをボビーに聴かせたら彼も気に入って、そのうち日本に行くことになって大喜び。それまでにやってきた中で、一番面白いプロジェクトだと思ったよ。日本のライブも大ウケで、3回アンコールをやった夜もあった。でもレパートリーがなくて、「悲しくてやりきれない」を3回やったり(笑)。

ボビー:来日したのが2018年だったよね。今またジェレミーは日本に住んでいて、ベースのダンは神戸大学に通って、日本人女性と婚約したよ。何やかんやと日本と関係しているんだ。

アントワン:僕も日本語の授業を取っていた(笑)。

ボビー:僕の父親は住友で働いてたよ(笑)。日本とは何だか心の繋がりを感じるんだよね。できれば毎年来たいな。



ー2人は今でもシアトルに住んでいるのですか?

ボビー:というか、どこにも住んでいない。ずっとツアーばかりやってて家賃も払ってないし(笑)。

アントワン:僕は一応、住所はシアトルだよ。

ボビー:1〜2週間オフが取れたら、僕はLAかシアトルに行くかな。

アントワン:僕は両親のいるブリティッシュコロンビア州(西海岸のカナダ北部)に行くかな。葡萄園などもあって、いいところ。

ボビー:でも実際には4月以降、ヨーロッパと日本に行って、アメリカツアーを4〜5回やって、この後、来月には南アフリカに行くから、猛スケジュールなんだ。

ー現在はとても充実しているようですが、今後もずっとそういう生活を続けられそうですか?

ボビー:そうだね、今はこれが一番理に適っているように思えるけど、そのうちもう少し落ち着けたらと思うな。でも、そのためにも今はしっかり仕事をやっておきたいんだ。とりあえず1カ月のうち3週間ツアーで家を空けるなら、その家賃はラーメンと寿司代に回したほうが賢明じゃないかな(笑)。

アントワン:このペースでずっと続けられるとは思わないけどね、もう1年半ほど休暇を取ってないから。そろそろゆっくり自分のベッドで寝たいと思うけど、同時にこんなに凄い生活ってないとも思うんだ。この1年半の間に、本当にいろんな経験をすることができた。何にも変え難いよ。

ボビー:この8日間は、同じホテルのベッドで寝ることができたから、ここ最近での最長記録じゃないかな(笑)。

アントワン:うん、4月以来の最長だね。

ボビー:もう我が家みたいな感じだよ(笑)。

 
 
 
 

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