増加する実録犯罪ドキュメンタリーへの疑問、殺人犯に発言の機会を与えるべきか?

バーカー氏のメッセージを受け取ったデヴィンスさんはChannel 4とPlum Picturesに手紙を書き、ドキュメンタリーの放送中止を求めた。「私の意見では、ブランドン・クラークとのインタビューを放映することで、制作中の怠慢により女性たちが危険にさらされることになるでしょう」とデヴィンスさんは書き、番組はビアンカさんの遺族や友人に「計り知れない精神的ストレス」をもたらすとも指摘した。

Plum Picturesの代表者はデヴィンスさんの手紙にメールで返答した。ローリングストーン誌が入手したそのメールには、「筆舌に尽くしがたい恐怖を耐え忍んでいらっしゃることに心から同情」するものの、『Interview With a Killer』の趣旨は「ブランドン・クラークに発言の場を与えることではなく……むしろその逆で、インセル文化の危険性や女性に対する暴力増加について啓蒙するきっかけになればと思っています」と書かれていた(事件直後の報道でクラークは「インセル」、すなわち女性に対して不合理な憎悪をたぎらせて「意図せず禁欲生活を送る」男性と描写された。もっとも、本人はそうとは自覚していないようだ)。メールの最後は「重要な啓蒙メッセージを発信し、公共の利害にも大きく絡む問題を取り上げた」番組であることから、予定通りChannel 4で放映すると締めくくられていた。現時点でアメリカでの放映予定はないという。

デヴィンスさんはこの返事に失望した――Channel 4のwebサイトで『Interview With a Killer』の番組告知を目にし、さらに失望感は増した。そこには囚人服を着たクラークがカメラを直視するサムネイルが表示されていた。「タイトルも番組告知も、まるで犯人が主役のようです」とデヴィンスさん。「(Channel 4の)メールに書かれていた内容とは全然違います」。

Channel 4にコメントを求めたところ、代表者からは次のような声明文が送られてきた。「これが非常に難しい話題であることは我々も認識しています。この事件は広く報道されてきましたし、ソーシャルメディアに触れる若者の安全性が問われている中、極めて重要で、現代に通じる話題です」。またキム・デヴィンスさんに出演を打診したものの、別の制作会社との独占契約を理由に断られたとも書かれていた。

キム・デヴィンスさんと『Interview With a Killer』製作陣との確執は、実録犯罪ものを巡る広義の議論とも共通する――被害者よりも加害者のストーリーを取り上げるのが果たして適切なのか? 遺族の参加や同意なしに事件を扱うのが果たして妥当なのか? こうした議論は合法性とは無関係で――当然ジャーナリストや製作陣には、自分たちが希望するテーマを取り上げる権利がある――問題なのはむしろ、実録犯罪ものによって倫理的問題が持ち上がる可能性だ。ひいき目に見ても、このジャンルは啓蒙的と言えるのか、被害者を搾取しているのではないか。そうした疑問の声が次第に高まっている。

Akiko Kato

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