連続殺人事件をコンテンツ化する人々、絶滅したはずの陰謀論がTikTokで再燃 米

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知らない人の車に乗ってはいけません。幼いころから叩きこまれてきたシンプルな教訓だ。だが1人のユーザーが、深夜にシカゴのバーを出たところで車で送ると言われた話をTikTokに投稿すると、コメント欄への活発な書き込みとTikTok捕物帳から連鎖反応が起きた――アメリカで語り継がれてきた連続殺人の陰謀論が、再び頭をもたげたのだ

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TikTokユーザーのケン・ワクスは3月9日に動画を投稿し、本人がいうところの「恐怖体験」を避けるように、とフォロワーに呼びかけた。キャプションには「この6週間で2回も同じような目に遭った」とあり、他人から家まで送ると持ちかけられた後、車が走り去るまでの出来事が説明されていた。「夜中にバーやパーティを出た後、行方不明になって音沙汰がなくなる人が年がら年中いる」。だが話を恐怖体験で終わらせる代わりに、ワクスは邪なほうに知恵をめぐらせた――これは連続殺人事件の仕業だ、と。

自分も深夜に車からつけられた、という書き込みがコメント欄に殺到すると、ワクスは家まで送るというおせっかい行為が、シカゴリバーで立て続けに発生した溺死事件と連続殺人をつなぐカギだと投稿するようになった。シカゴ警察はいずれも事故死だったと断定しているが、犠牲者が生前最後に目撃されたのはいずれもシカゴのバーを出るところだった。不可解な死を連続殺人犯の仕業にするのはソーシャルメディアでは常套手段が、ワクスは実体験(とコメントの嵐)を利用して、殺人犯が深夜に車で送ると持ちかけては獲物をゲットし、薬を盛っているという説を展開した。「行方不明になったいきさつが僕には分かる。事件には関連性があるんだ」とTikTokで語り、若くてたくましい男性でも、酒に酔っていれば見知らぬ他人からいともたやすく力でねじ伏せられてしまうだろう、と自信たっぷりに語った。「そうさ、警察やメディアは手をこまねいて、報道もしない。でも僕らにできることがある」。

ワクスは7週間にわたってTikTokで捜査の進捗状況を報告した。溺死体の発見場所を記した自作の地図を投稿し、捜査対象を全米各都市にまで広げた。「シカゴやオースティン以上に大規模な事件だ」とワクスは投稿した。「全米で男性が同じ状況で姿を消し、数日後あるいは数週間後に発見されている」。TikTokクリエイターは時折動画を投稿するだけに留まらず、本人がいうところの有益な情報を携えて、実際に警察署にも足を運んだ。警察に取り合ってもらえなかったワクスは、増え続けるフォロワーにシフトした。「この件について、警察やニュースが公共の安全強化と注意喚起のために手を打たないなら、僕が自分でやろうじゃないか」。

Akiko Kato

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