ルイス・コールとジェネヴィーヴが今こそ語る「KNOWER」という奇跡的コンビの化学反応

 
お互いへの深い理解とリスペクト

―話は戻りますが、お二人のソロとノウワーのサウンドには、もちろん共通する部分もあれば異なる部分もありますよね。それぞれお聞きしたいです。

ジェネヴィーヴ:ソロ活動では個人的な関心にフォーカスしていて、テーマも違えば作曲の方法も違う。全体的にフェミニンな要素があるっていえばいいのかな。それに、私は「不完全さ」を許容している。時間をかけてよく練り上げられたアイディアもあれば、パッと思い浮かんだようなアイディアも大事にしている。一方で、ノウワーでは、二人でテーマのアイディアをシェアして、大きなキャンバスを一緒に描いている。メロディや歌詞を一緒に書いて、たくさんのアイディアを出し合った中からどれがいいかを選ぶんだよね。「これはいい」「もっとアイディアが必要」とか言い合いながら進めている。(最新作に収録された)「Crash The Car」を制作していた時は、曲に強さがほしかったから、すごく時間をかけたのを覚えてる。

ルイス:1フレーズのために、100個くらいのアイディアを出したんだ。ノウワーの音楽はインテンシティもエネルギーも、普通の基準を上回ってるから。



―延々とフレーズを出し続けるのはしんどそうですね。そういった意味では、ルイス・コールはかなり厳しいプロデューサーだと思いますが、実際はどうでしょうか?

ジェネヴィーヴ:かなり、かなり、かなり、厳しいプロデューサーだね。

ルイス:(笑)。

ジェネヴィーヴ:それに彼はすごくたくさんのアイディアを出してきて、そのどれもが素晴らしい。その中から1つを選ばなきゃいけない。とてもいいことだけど、一方ですごく大変でもあるんだよね(笑)。

―きっとルイスさんは、自分のソロを作る時も自分自身に対して同様に厳しくしているってことですよね。

ルイス:ああ。でも、「厳しい」という言葉で表現するのは、少し意味が違うかな。「厳しい」って言うと、偶然とか思いつきとか、そういったものに対してオープンじゃない感じがするけど、予想を上回るものが偶然できたとしたら、それを取り入れることは全然あるから。僕は、自分を驚かせるものを求めているんだ。それが生まれない限り、探し続けるしかない。自分に驚かされ続けたい、それだけだよ。その過程は大変だし、すごく難しいけどね。

―ノウワーの音楽がここまでキャッチーで響いているのは、そのくらいシビアに音楽を作っていることが関係していると思いますか?

ルイス:それがキャッチーな理由だとは思わない。抽象的な言い方だけど、僕らは「流れる水のようなメロディではなく槍のようなメロディ」を作ろうとしてるんだ。ダイレクトでコードやリズムにフィットする、そういったメロディのことを、みんなは「キャッチー」って表現しているんだろうけど。



ルイスとジェネヴィーヴは、各自のソロでもお互いの作品/ライブに参加し合っている

―ソロとノウワーの「違い」について教えてもらいましたが、逆に近い部分はどういったところですか?

ジェネヴィーヴ:ソロの音楽を作っている時にも、彼のドラミングが頭に浮かんでくる。それにソロの制作でも、自分が納得できるまで試行錯誤を繰り返すようにしている。私は、自分の音楽を「ポップミュージック」だと思ってる。たとえ、いわゆる「ポップ」からかけ離れてるとしても。だから、キャッチーで強いサウンドを作ろうとしている。

ルイス:ノウワーの曲を書いている時に一番考えているのは、ジェネヴィーヴの声だよ。それから、彼女がどんなサウンドを望んでいるかということ。ジェネヴィーヴは、すごく速くてクレイジーでインテンスなサウンドを好んでいる。もちろん、僕も好きだけど、彼女の好みにダイアルを合わせているね。

ジェネヴィーヴ:ノウワーとソロ活動に共通することは?

ルイス:速いグルーヴのコードかな。それからヘヴィなドラムも。そういった曲は最新曲にも数曲入っている。ノウワーにも使えるって思ったからね。

―お二人が一緒に作ることで生まれる特別な何かがあるとして、そのマジックについて説明することはできますか?

ルイス:そうだな……僕らには共通点が多いんだ。同じ音楽が好きで、ジョークが通じ合って。つまり、似た者どうしなんだよ。精神的な面でも同じ方向を向いているから、お互いを強化し合えているんだと思う。

ジェネヴィーヴ:それに、音楽制作において一切妥協しないこともね。

―共通している部分が、違う部分よりも大きいってことですかね。

ジェネヴィーヴ:私たちは息の合うコンビだから。アイディアも音楽も、お互いをリスペクトしてるし、意見が合わなかったとしても、話し合ってお互いを尊重し合うようにしてる。

ルイス:信頼しているからね。

ジェネヴィーヴ:ええ。もし彼が賛成しなかったとしても「私が正しい」って意志を貫くことだってもちろんある。ただ、それで怒ったりしないし、喧嘩になったりもしない。


2017年、レッチリのオープニングアクトを務めた時の映像

―お二人を個別にインタビューさせてもらったとき、影響を受けたアーティストを尋ねたらお互いの名前を挙げていました。最も影響を受けた部分はどんなところですか?

ルイス:恐れを知らないところだね。彼女の音楽は「ワイルドなものを作りたい」で一貫している。それも、ただバカみたいにワイルドっていうんじゃない。ワイルドでハイクオリティ、ワイルドで美しい。クレイジーだけど、すごく丁寧に作られた音楽だから惹かれるんだ。

ジェネヴィーヴ:1つ目は、アイディアを追求する姿勢。2つ目は、私が思いつかないような組み合わせをすること。それが彼のオリジナリティを形成していると思う。ジャンルの枠に囚われず、周りの目を気にせずに音楽を作っているところかな。

―相手に教えてもらったことから好きになった音楽で、特に印象に残っているものは?

ジェネヴィーヴ:ルイスは、私ほどマイケル・ジャクソンは好きじゃないよね?

ルイス:そうだね。

ジェネヴィーヴ:彼にはアース・ウィンド・アンド・ファイアーを教えてもらったかな。

ルイス:それからトーキング・ヘッズ。ステレオ面でかなり影響を受けた。

ジェネヴィーヴ:ええ。他にはジャズ関連かな。

ルイス:トニー・ウィリアムス?

ジェネヴィーヴ:キース・ジャレットの音楽をたくさん教えてくれたよね。

ルイス:ああ、キース・ジャレットとマイルス・デイヴィスの作品。

ジェネヴィーヴ:私たちは、マイルスとギル・エヴァンスが好きだよね。

ルイス:そうだね。エレクトロニック関連ではボーズ・オブ・カナダ。

ジェネヴィーヴ:あと、ティム・ルフェーヴルとジム・ブラックを教えてくれた。

―めちゃくちゃシェアしてるんですね。

ルイス:そうだよ!

―あとは二人とも、ビートルズのことをよく話していますよね。

ジェネヴィーヴ:ええ、ビートルズは大好き!

ルイス:彼女が僕にビートルズの魅力を熱弁する前は、あまり好きじゃなかったんだ。でも、彼らはすごく強度のある曲を作ってきた。セクションの絶妙さ、 メロディとコードの完璧な調和、力強いコード進行……要塞を思わせるような非の打ち所の無さ。それに、シンプルで馴染みやすい音楽。キャリアの後期では、実験的なこともしながら自分たちの音楽を追求していた。いつ聴いても良い曲だと思えるなんて、すごい強度だよ。

ジェネヴィーヴ:彼らの曲はすごくストレートでとても明確。そして無限大なんだ。自分たちの進むべき方向へ突き進んでいけるパワーを持ってる。歌い方もストレートだよね。

ルイス:そのとおり。

―ノウワーをビートルズのメンバーに例えると?

ルイス:二人ともジョン・レノンじゃない?

ジェネヴィーヴ:ジョンがいい。でも、ジョージでもいいかも!

ルイス:ジョンって言っただろ。

ジェネヴィーヴ:ルイスはリンゴだよ!

―(笑)ジョンとポールって答えるかなと思ったんですが。

ジェネヴィーヴ:ポールは二人とも嫌だな(笑)。

Translated by Tomomi Hasegawa, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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