アンドレ3000が語る、フルートを手に歩む探索の旅、変わらぬ遊び心

僕が頼りにしてるのは、自分のフィーリングだけ

ーコアメンバーの4人の演奏がオーガニックだったからこそ、生まれた音楽というわけですね。

アンドレ3000 そうなんだ。そこにこの音楽の美しさがあると思う。僕たちは音楽が自然と生まれてくるのを目撃して、この新しいものに自分たちが貢献してる、そういう感覚を持てたんだ。それでレコーディングが終わって、1日休みを取った後に、みんなで腰を下ろして録ったばかりの曲を聴いてみた。するとまるで自分が音楽という乗り物に乗って、コックピットの中にいるような感覚になったんだ。それは全員が味わった経験で、何かを学び、発見したような感覚だった。音の発見であり、その瞬間の発見であり、ミュージシャン同士の反応の発見であり、それを自分たちの音楽を通して感じることができたんだ。

ーそれは同時に、自分自身の発見でもありましたよね。

アンドレ3000 僕は17歳の時からずっとボーカルでラップをやってきたわけだよね。僕がラップで何かを言えば、聴いた人々も人生について考えるとは思うんだけど、それはあくまでも僕のストーリーであり、聴き手は自分のフィルターを通して受け止めることになる。そこから自分自身の考え、言葉、ストーリーが生まれるわけで、音楽はそのきっかけになるんだ。だけど、今の僕の音楽は音楽そのものをフィルターなしに受け止めてもらえるから、そこが面白いんだよね。

ーアルバムを聴いた時に感じたのは、アンドレがそこで何かを狙っているのではなく、ただその瞬間にそこにいて音楽を奏でている、そういう感覚でした。

アンドレ3000 まさにその通りなんだ。その瞬間にそこにいて呼吸してる。4人の中では僕が特にそういう感覚を持ってたね。ネイト・マーセロー、サライヤ・ボトファシーナは音もコードもわかってやってるけど、僕にはわからない。僕が音を出す時は、それが何の音なのかわからないまま出すんだ。だから自分が今から何をやるのか把握していないといけない。僕は音楽の教育も訓練も受けていないから、暗闇の中に入っていって、ただ楽しんでる感じなんだ。だから僕が頼りにしてるのは、自分のフィーリングだけということになる。


アンドレ3000

ーどの曲もタイトルがめちゃくちゃ面白いのですが、ある意味非常にヒップホップ的だと思いました。


アンドレ3000 そうそう。遊び心を入れたかったし、あまり真面目になりすぎないようにしたかったからね。この音楽には瞑想的な部分もあるから、バランスを取りたかった。人間らしい自分、バカな自分、性的な自分、面白い自分、陰謀論的な自分、バランスの取れた自分、そういうものを入れたかった。人々が思うフリー・ミュージック的なものから、重たさを取り除きたかったんだよね。

ー1曲目のタイトルは、「I swear, I Really Wanted To Make A "Rap" Album But This Is Literally The Way The Wind Blew Me This Time」(「マジな話、本当にラップのアルバムを作りたかったんだ。でも今回は、風が文字通りこう吹いたんだ」の意味)ですが、これは本心ですか? それとも言葉の遊びですか?

アンドレ3000 超マジでこれは本心だよ。実際、ラップのアルバムを作りたいと思ってたんだ。だけどハードルが上がってるからね。自分の年齢を考えると、今ラップをやるのは昔よりもチャレンジになってしまう。だけど自分が間違ってたことを証明するためにも、スゴくラップをやりたい気持ちにはなってるよ。だからこれは本心から出てきた言葉になるね。

ー3曲目のタイトル「That Night In Hawaii When I Turned Into A Panther And Started Making These Low Register Purring Tones That I Couldn't Control ... Sh¥t Was Wild」(「ハワイのあの夜、僕はヒョウに変身し、自分では制御できない低音の喉の音を出し始めた時……まさにヤバいことになっていた」の意味)も面白いですね。これは何かの神秘体験を意味するのでしょうか?

アンドレ3000 実際に自分が体験したことだよ。植物療法でアヤワスカを試した時に起こったことなんだ。曲の中でもその時に自分が出した喉の音を真似して演奏をしてるよ。

ーアルバム最後の曲のタイトル「Dreams Once Buried Beneath The Dungeon Floor Slowly Sprout Into Undying Gardens」(「地下の床の下に埋まっていた夢は、不死の庭からゆっくりと芽を出してきている」の意味)に「The Dungeon」というワードが出てきますが、これはアンドレが所属していたダンジョン・ファミリーに言及したものですか?

アンドレ3000 そうだよ。意図的に入れたんだ。僕がどこから来て今どこにいるのか、僕はどう成長したのかを示したかったんだ。ダンジョン・ファミリーは僕のルーツだからね。



ーこの曲はアルバムの最後の曲ですが、新たな始まりという感じがしますね。

アンドレ3000 面白いことを言うね!(笑)。さっきも言ったように、これは最初に作った曲なんだ。元々アルバムの曲順は違っていて、この曲は1曲目だったんだよ。でも今はアルバムの最後の曲にして良かったと思ってる。アルバムのラストを締めてるんだけど、新たな始まりを感じさせるからね。

ーしかも自分のルーツであるダンジョン・ファミリーに触れていますからね。

アンドレ3000 回り回って、一周してるんだ。

ーこのアルバムを世に出した今、さらにやりたいことも増えていると思いますが、今考えていることは何でしょう?

アンドレ3000 今はいろんな音楽を作ってるよ。『NEW BLUE SUN』は僕たちがやってる音楽の中のほんの一部でしかないんだ。今はライブをやりたいという気持ちが強いね。みんなに観て体験してもらいたいんだ。スタジオ制作も楽しいけれど、ライブで観客にも参加してもらって、みんなとエネルギーを交換してみたい。僕は48歳にして新人アーティストみたいな感じだから、新しいことをやってワクワクしたいんだよね。

<INFORMATION>


André 3000|アンドレ3000
デビュー・アルバム『NEW BLUE SUN | ニュー・ブルー・サン』
発売中
購入・再生:
https://lnk.to/Andre3000NBSIA

【収録曲】
1. I swear, I Really Wanted To Make A “Rap” Album But This Is Literally The Way The Wind Blew Me This Time (アイ・スウェア、アイ・リアリー・ウォンテッド・トゥ・メイク・ア・“ラップ”アルバム・バット・ディス・イズ・リテラリー・ザ・ウェイ・ザ・ウィンド・ブルー・ミー・ディス・タイム)
2. The Slang Word P(*)ssy Rolls Off The Tongue With Far Better Ease Than The Proper Word Vagina. Do You Agree? (ザ・スラング・ワード・プ〇シー・ロールズ・オフ・ザ・タン・ウィズ・ファー・ベター・イーズ・ザン・ザ・プロパー・ワード・ヴァ〇〇〇ナ・ドゥー・ユー・アグリー?)
3. That Night In Hawaii When I Turned Into A Panther And Started Making These Low Register Purring Tones That I Couldn’t Control … Sh¥t Was Wild
(ザット・ナイト・イン・ハワイ・ホェン・アイ・ターンド・イントゥ・ア・パンサー・アンド・スターテッド・メイキング・ジーズ・ロウ・レジスター・パーリング・トーンズ・ザット・アイ・クドゥント・コントロール・・・シ〇ト・ワズ・ワイルド)
4. BuyPoloDisorder’s Daughter Wears A 3000™ Button Down Embroidered (バイ・ポロ・ディスオーダーズ・ドーター・ウェアズ・A 3000™・ボタン・ダウン・エンブロイダード)
5. Ninety Three ‘Til Infinity And Beyoncé (ナインティ・スリー・ティル・インフィニティ・アンド・ビヨンセ)
6. Ghandi, Dalai Lama, Your Lord & Savior J.C. / Bundy, Jeffrey Dahmer, And John Wayne Gacy (ガンジー、ダライ・ラマ、ユア・ロード・アンド・セイバー・J.C./バンディ、ジェフリー・ダーマー、アンド・ジョン・ウェイン・ゲイシー)
7. Ants To You, Gods To Who ? (アンツ・トゥ・ユー、ゴッズ・トゥ・フー?)
8. Dreams Once Buried Beneath The Dungeon Floor Slowly Sprout Into Undying Gardens (ドリームズ・ワンス・バリード・ビニース・ザ・ダンジョン・フロアー・スロウリー・スプラウト・イントゥ・アンダイイング・ガーデンズ)

【アンドレ3000 プロフィール】
1975年生まれ。アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ出身のラッパー、ソングライター、音楽プロデューサー。Y2Kに一世を風靡したグラミー賞6部門受賞歴もあるヒップホップユニット、アウトキャストの一人。アウトキャストとして6枚のアルバム作品をリリース。2006年以降は同ユニットとしての活動を休止し、アンドレ・ベンジャミンとして俳優活動に専念。2023年11月初ソロ・アルバム『NEW BLUE SUN』をリリース。

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