音楽家がグローバルで活動するためには、The Orchard Japanヴァイス・プレジデントに聞く

―The Orchard Japanとして、例えばこういうアーティストを得意としているとか、こういうアーティストが向いているとか、そういうのはありますか?

増田:音楽のジャンルは全然関係ないです。クラシックの方もいればアニメ周りの楽曲もたくさんお預かりしている。バンドもいるしソロアーティストもいるし、アイドルもいる。これが主流です、と言えるジャンルは一切ないと思います。

―活動の形態としてはいかがですか? 音源中心の人とか、ライブ中心の人とか。

増田:アーティストそれぞれですね。というのも、The Orchard Japanとしては音源配信の部分しか関わらないので。ライブを主とされて一年中ライブに出ています、でも配信は新しいライブをやるたびに出したいのでそこはお任せします、という形でお預かりしているバンドもいます。バンドはずっと全国を回っているので、この地方で反応があったとか、ここでツアーの初日を迎えるんだったら告知したときにすぐ配信リンクで予約できるようにセットしませんかとか、そういうのを一緒に考えていく形ですね。アイドルももちろんいますし、その中でSNSが得意な子、TikTokが得意な子がいたり、TikTokは全然やらないけどYouTubeにお客さんがいっぱいいる子がいたりと、本当にそれぞれなので。それをパートナー、クライアントさんと話し合ってどういうところが強いですかと訊くんですね。お客さんはどういうところにいらっしゃいますか?と。

―そこがテーラーメイドというところですね。

増田:事務所さんがTVメディアまでプロモーションをされているアーティストもいれば、僕一人でやっています、猫の手も借りたいです、というアーティストもいますし、本当に様々なんですよね。アーティストは顔出ししません、稼働もしません、というアーティストもいれば、なんでも自分でやりたいので僕も打ち合わせに入れてください、というアーティストもいます。それは契約をする際に、丁寧にヒアリングをして、どういったことをThe Orchardに求めているかお訊きした上で、うちはディストリビューターなのでテレビブッキングはやっていないのでサービス外です、ということもその場できちんとお伝えした上で、我々がお手伝いできることをわかっていただいて契約します。

―アーティストがプロモーションであるとか、あるいはツアーの部分も関わってもらいたいみたいな希望があった場合は?

増田:去年の4月から「アーティストサービス」という、通常のディストリビューション契約にプラスで手数料をいただく形のサービスをご提供しています。SIRUP、日食なつこ、クレナズム、春ねむり、chelmico、aimiの6組が今アーティストサービスでやらせていただいていますが、彼らに関してはThe Orchard Japanのプロモーターが動いています。ラジオのオンエアのサポートをしたり、取材をブッキングしたり、タイアップの代理店へのプレゼンを代行することもあります。音楽業界経験者ががわりと多いチームなので、それぞれのメンバーがエキスパートでやれることをメニューにしています。ちょうど4月からアーティストサービスを始めたばかりなので、アーティストやクライアントと話し合いながら、お声がけさせていただいています。

―それはいわゆる専属契約とかとは全く違う形態ですね。

増田:シンプルに手数料をたくさんいただく代わりに、プラスオンのサービスを提供しますという形です。



―TuneCoreとかそういう他のディストリビューション・サービスもありますが、The Orchard Japanの強みはどういったところにありますか。

増田: The Orchard Japanが強いのは、グローバルのチーム編成だと思います。The Orchardは世界に45ヶ国以上、50箇所ぐらいですかね、拠点を構えていて、それぞれのオフィスにスタッフがいます。例えばYOASOBIが初めてインドネシアのジャカルタでライブをやりますとなると、私からジャカルタにいるスタッフに連絡して、YOASOBIの滞在中にプロモーションをしたいと話をするんです。そのジャカルタのスタッフがシンガポールベースのPR会社を雇って一緒に乗り込もうとシンガポール、ジャカルタと我々でコールして。YOASOBIがジャカルタにいる間に何をすべきかを話し合う、ということがわりとスムーズにできます。

―それは例えばソニーミュージックのアーティストが海外でやるときに、ソニーミュージックの現地の人と連絡をとりながらやっていくのと何が変わってくるんですか?

増田:スピード感ですね。あとはインディーズのアーティストは潤沢な予算があったり規模が大きいという場合だけではないので、そういった小回りが効くような提案ができるのが大きいのだと思います。ソニーミュージックは組織が大きので、関わってくる人もたくさんいる。でもThe Orchardの場合、たとえば台湾のライブハウスにライブに行くとなったら、まず現地のスタッフにリサーチを頼んで、そのアーティストが可能性あるか、次に戻ってくるときにどういったプロモーションをやったらいいか、感想が欲しいとお願いするとすぐに見てきてくれて。KKBOXの誰々を連れて観に行ったけどすごくいいバンドだったよ、コンサートプロモーターを紹介するからピッチしてみたら、と言われたり。そういう手探りでフットワーク軽くアーティストと近い距離で動けるのが強みかなと思いますね。

―世界中に支社があるから、海外のアーティストが日本でプロモーションするときにそちらを頼ることもありうるわけですよね。

増田:そうですね。お互い様なので張り切ってみんなで迎えます。キャロライン・ポラチェックが来日した時も、キャロラインにベタ付きするうちの洋楽担当がいるので、そのスタッフがPR会社を紹介して繋いでセッティングして取材にも立ち会って、アーティストが信頼してくれると、The Orchardと一緒にやりたいと言ってくれる。YOASOBIが海外に行ったときにサポートしてもらうので、当然向こうのアーティストが来日したときもうちでできることは一生懸命やります。

Rolling Stone Japan 編集部

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