imase×なとり対談 J-POP新時代の象徴に聞く「バズり続けなきゃいけない」時代の戦い方

「バズること」と「やりたいこと」のバランス

―「TikTokでバズる曲のジャンル、BPM、コード進行とはこういうものである」ということをみんな見つけたがっていると思うんですけど、二人の実感として、そういうものはありますか?

imase:僕は、本当にわかんないなって。キャッチーさは絶対に必要だと思いますけど、バンド寄りの曲がバズることもあれば、R&B系がバズることもあるし、ダンスでバズることもあれば、最近だと乃紫さんの曲(「全方向美少女」)とかは歌詞先行でバズってますよね。バズり方は本当に多種多様なので、何とも言えないのかなと思います。タイミングと運もかなり大きいですよね。

なとり:もう本当にそうですね。わかんないですよね。

imase:だって「NIGHT DANCER」が韓国であんなに踊ってもらえるなんて、わかるわけがないじゃないですか(笑)。何がバズるかわからないし、どれがチャンスになるかもわかり得ないから、どの曲においても「やれることは全部やってみよう」というスタンスですね。積極的に動いていたからこそJUNGKOOKさんにも届いたと思うし、JUNGKOOKさんが歌ってくださったおかげで国内外にたくさん広まったので、本当に感謝しています。やっぱりいつ何が起こるかわからないので、「全部、ちゃんと、やる」ことが大事だなと思います。

―何がバズるきっかけになるかわからないから、やれることは全部やる。そしてバズっている最中も、それをさらに広げるためにやれることは全部やる。imaseさんはそれを徹底していますよね。「NIGHT DANCER」が「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」の4位に上り詰めるヒットになるまでには、2022年5月にHoodie famの振付が国内でトレンドとなって以降、大きな波が何度かあったと思うんですね。

imase:ありましたね。2022年の年末くらいにStray Kidsさんが踊ってくださって、その後また韓国のアーティストの方が踊ってくれて。その都度リアクション動画を撮ったり、自分でも踊ってみたり、積極的にコラボもしたり。スタッフさんから「こういうことをやった方がいいんじゃない?」と言ってもらってやったりして。そういう細かいことが広がりに繋がったのかなと思います。

@imase119

―今の話はバズり始めているときに何をやるか、ということだと思うんですけど、楽曲をリリースする前のSNSの使い方についてはどういった考えを持ってますか?

なとり:キャッチーな部分を切り抜いて、その動画を何本も出す。その下準備はめちゃくちゃ大事だと思います。でもそれが二次創作に使われなかったときは「どうしようかな」ってずっと考える(笑)。そういうときはリリース後の反響を待つしかないですよね。

imase:でも、フルで聴いていい曲もあるし、バズらないけどいい曲もあるし。

なとり:バズらないけどいい曲の方が多いですよ、この世界には。

imase:僕もリリース前の曲は徹底的に投稿しまくる、という準備はします。たとえばすごく影響力のあるインフルエンサーの方がたまたま自分の投稿を見つけて、音源を使ってくれて、ということもあるので、諦めずに根気強く同じ曲を投稿しますね。数を打ちまくることもわりと大事だと思っています。僕はほぼ毎日TikTokやInstagramに投稿しているので。


なとりの公式TikTokより。「Sleepwalk」(昨年12月8日リリース)の動画を配信前後の11月25日・11月30日・12月12日にアップしている

―リリースが決まっている曲の一部をリリース前からTikTokに投稿するパターンと、デモを投稿してリリースするかどうかを測るパターンがあると思います。後者で「自分的には渾身の1曲を作ったのに反応が悪いからリリースしてない」という曲はありますか?

なとり:めちゃくちゃありますね。そっちの方が多いかもしれない。

imase:へえ! 僕は、最近はありがたいことにタイアップの書き下ろしが多いので、それ以外のデモを作るタイミングはあまりないかも。「これは伸びるかな」という曲と、自分の好きなルーツの曲と、そのバランスを大事にしたいなとは思ってます。

なとり:それはめっちゃ思いますね。


Photo by Kentaro Kambe

―なとりさんはアルバム『劇場』をそのバランスで作ったと前の取材で話してくれましたよね(「アルバムでいうと、前半には今までなとりが一番デカい層に向けて作った曲を置いていて、後半がこれから自分の作りたいものを意識して作った曲」と発言)。単曲で聴かれる時代に「アルバムとは?」という議論もありますけど、単曲のヒットがアーティストの活動を大きく左右する時代だからこそ、自分の本当にやりたいことはアルバムでやるようになっているとも言えますよね。

imase:Vaundyさんとかもそうですよね。「黒子」「常熱」とか、自分で全楽器を演奏していて、完全にやりたいことやってるなと思いました。

なとり:あのアルバムは本当に合理的というか。面白かったですね。『replica』というタイトルをつけるのも天才だなと思って。

imase:でもやっぱり自分が気に入ってる曲が伸びてほしいよね。

なとり:めっちゃわかる。

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