THE BEAT GARDENが語る、狭く深く突き刺すための「J-POP」とメロディのあり方

THE BEAT GARDENがつくる「歌」の現在地点

―そのチャンネルにいる今のTHE BEAT GARDENは、どんなことを歌っていきたいフェーズですか。

U:僕はどんどん範囲が狭まっている感じがしています。四畳半になってきたというか。結成当時は、YouTubeでめちゃめちゃデカい会場のライブ映像ばかり観て、「とりあえず乗れたらいいっしょ!」と思っていた時期もありました。でも、リリースイベントでファンの人と直接交流するようになって、英語ばっかりの歌詞を自分で訳して救われている人がいると知って。そこから、J-POPって素敵だね、日本語で届けようと思い始めた矢先に、「Start Over」と出会ったんです。そして、「present」で愛を歌うとなったとき、誰かひとりのすごく深い痛みに触れるのって、めちゃくちゃ難しいんだなと感じました。J-POPって、鬼むずいんだなって。歌詞を書いていても「この人が言えるこの言葉、普段はいっぱい使ってるのに、なんで俺は言えなかったんだろう」と悔しくなる。THE BEAT GARDENがJ-POPのグループとして知ってもらえている今、狭く深くいけなかったらかっこ悪いじゃないですか。これまではみんなに刺さることが、ヒット曲の条件だと思っていた時期もありました。別にそれも不正解じゃないと思うんですけど、今はひとりの人しか知らない痛みとかSNSを通してもらう言葉とか飲みの場で聞いた話とか、そういったものに思いっきりフォーカスしていきたい。ひとりの人に、曲で思いっきり寄り添えることが一番嬉しいです。

―REIさんは、いかがですか。

REI:僕は誰かのライブへ行ったとき、その人の素や人柄など、等身大のその人が見えた瞬間にハッとさせられることが多くて。以前の自分は、ステージに立つときにちょっとかっこつけていたり背伸びをしたりしていた時期もあったんですけど、実際に感動を共有しあえた瞬間って、自分がすごく等身大でいられたときなんですよね。いい意味で丸裸感というか。そういった経験があるので、自分たち目線での歌詞を歌っていけたらいいんじゃないかなって、ライブを重ねるたびに思います。最近はJ-POPを聴くときに、「この人だから、この言葉を言えるんだ」とか「この人だから、この言葉の重みがあるんだ」とか改めて感じることも増えてきて。より深掘りしたい視点が変わってきました。

MASATO:僕も等身大が答えかもしれないです。Uさんの書いた歌詞を歌ったり、誰かのカバーをしたり、誰かの言葉を歌うことによって、自分じゃ表現できなかった気持ちや言葉に辿りつけることってすごく多くて。もちろん、プロットの内容をメロディメイクに活かすこともできるんですけど、音楽の可能性を感じられるものってメロディ以外にもたくさんあるじゃないですか。そういうものに導かれながら、たくさんの人に聴いてもらえる音楽を歌いたいですね。Uさんの歌詞を歌うことで、もっともっと狭い部分を歌うことで、いつか「これがTHE BEAT GARDEN節だよね」と言われるようになって、過去の曲に触れてもらう機会も増やしていけたらいいなと思います。

―今のみなさんは「日本語でいいメロディや歌詞を届ける」というモードだと思うのですが、歌詞における日本語のイントネーションとメロディの関係性についてはどのように考えていますか。

U:歌詞だけを大切にして言葉の音程を崩さないのもいけないと思うんですけど、僕個人としては圧倒的に歌詞にあったメロディや音程を優先したくて。「自分の歌だ」と思って聴いていたのに、たった一音で集中が切れて物語が人ごとになっちゃう瞬間ってあると思うんですよ。普段と違うイントネーションで“あーいしてる”となってしまったらダメなんです。言葉と同じ抑揚で“愛してる”ってならないと。僕たちは基本的にメロディが先にできて歌詞を乗せるんですけど、歌詞にメロディが合っていないと思ったら、メロディを変えてもいいと思っています。本当にいいメロディだったら歌詞が乗ったときに負けないというか、揺るがない良さをずっと持ち続けてくれていると思うので。僕はメロディの力を、すごく信じてますから。

―イントネーションはもちろん、フレージングも大事ということですね。

U:それもそうですね。譜割りもすごく関係あるかも。歌詞が一番素直に届いて、届いたあともその人から気持ちが離れないように走り切りたいです。実は今回の「present」でも作曲の上村昌弥さんと電話して、僕が歌詞に合わせてメロディをいくつも変えました。

REI:いいメロディやいい歌詞って、トラックとかサウンドとのバランスも絶対にあると思いますし、歌謡曲だからといって歌謡曲歌いにしてしまうと作品がくどくなってしまうことも絶対にある。発音や発声、言葉の鳴り、歌詞の母音や子音など、いろんな関係がありますし、もちろん普段の僕らもそこを計算してるんですけど……。とはいえ、言葉も大事ですもんね(笑)。制作の流れでいくと、いつも僕はメロディを作るので、メロディが8割くらいできたら「歌詞をつけてくれ」ってUさんに投げて、戻ってきたらついた歌詞をもとにいろいろ考えなおしています。譜割りや音程、ブレスの瞬間とか。

U:REIは歌詞を書かないけど、THE BEAT GARDENの歩みと共にどんどんJ-POPが好きになって、僕に渡してくれる余白がどんどん大きくなった感じがします。最初の頃は「このフレーズが違う!」と、めちゃめちゃうるさかったので(笑)。それが嬉しくもありましたけど。あと、REIは1番と2番で変化をつけたかったり、ちょっとコードを変えたりする部分があるんですよ。僕が気づかずに歌詞を書くと「あえてここを変えていたんですけど、Uさんは気づいたうえでやってますか?」って確認してくれて、俺が気づいてなかった場合は「だったら、こっちのパターンで歌い直してくれないですか?」って調整してくれる。曲を通して飽きさせないことや、より切なく聴かせるポイントをすごく意識していますね。



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