オール・タイム・ロウが語る、結成20周年を祝うライブへの想い、ポップパンクの可能性

世代を超えて広がる、オール・タイム・ロウの音楽

ー最近のライブのセットリストを見たのですが、1曲目は「Lost in Stereo」で、ラストの曲は「Dear Maria, Count Me In」というのが多いですね。この2曲は超クラシックな曲だと思いますが、バンドにとってはやはり重要な曲なんですね。

面白いのは、「Lost in Stereo」はシングルにもならなかったし、ラジオでもかからなかった曲なんだ。リリース後もしばらくはライブで「Lost in Stereo」をプレイすることもなかった。この曲は世界中のファンから愛されてきた曲なんだ。今となってはシングルにしておけば良かったと思うね(笑)。でもそれくらい僕たちのキャリアにとって大きな意味を持つ曲だ。それは「Dear Maria, Count Me In」も同じことで。この曲はシングルでリリースしたんだけど、大ヒットしたわけじゃなかった。それが何年か経った時にバイラルヒットしたんだ。ポップパンク、ポップロックのリバイバルによって、全く新しい世代のファンの間で人気になって。今ではポップパンクを代表する曲として、バンドの人気を超えたロック・ミュージックの一つになってしまったよ。





ーちなみに、「Dear Maria, Count Me In」に出てくるマリアというのはどういう女性なんですか?

マリアは地元の友達のダンサーなんだ。マリアのストーリーを曲にして、彼女を世界一有名にしたいと思ったんだ(笑)。

ーセットリストの中には最新アルバム『Tell Me I'm Alive』からの曲も多いと思いますが、セットリストはどのように考えていますか?

今回のツアーは何と言っても20周年のお祝いだからね。3週間ぐらいセットリストを考えてたよ。スゴく長いセットリストになったけれど、どの時代のオール・タイム・ロウも入ってる。昔の曲でもお祝いしたいし、新しい曲でもお祝いしたい。それをオーディエンスと一緒になってやれるわけだから、僕たちはスゴくラッキーだと思う。僕たちが今回のツアーでやりたいのは、今までのキャリアすべてに向けたオマージュなんだ。最近、共演した他のバンドから、「君たちのバンドを15年前に見た」とか、「最初に行ったライブはワープド・ツアーなんだ。これがうちの子供なんだけど、『Monsters』が好きなんだよ」とか言われるんだ。クールだよね。本当、世代を超えてきたという感じがするよ。



ー最新アルバム『Tell Me I'm Alive』のことも聞かせてください。自分がやっていることも、周りがやっていることも何も変わらぬままだけれど、自分的にはそれではOKだと思えないし、かと言って何か新しい行動を起こすわけでもない。そういうもやもやした感情が描かれていて、非常に共感を覚えたのですが、あれはコロナ禍以降、誰もが感じた感情だと思うんです。

あのアルバムにはたくさんの悲しみが込められてるね。描かれてるのは孤独であり、それに対するあまり良くない対処の仕方だったりするんだ。自分が前進してると感じるために必要なことをしたいよね。でもそれに伴う代償もあるんだ。究極を言うと、あのアルバムは暗い時期を乗り越えることを描いてて、乗り越えた先に行くまでの旅でもあるんだ。アルバムのラスト曲「Lost Along The Way」は、僕たちが乗り越えた先の向こう側に行けたという曲なんだ。だからあのアルバムの制作は僕たちにとって浄化作用みたいなものになった。コロナ禍以降はバンド活動も、ライブもできない状況で、メンバーの誰もがずっと重荷を背負ってたんだ。オール・タイム・ロウにとっては重いアルバムになってしまったけれど、僕たちが経験してきたことを的確に反映したものになったと思ってる。



ーテーマは重いですが、名曲ばかりですよね。サウンド的にはポップパンクの枠を超えて、よりロックというか、普遍的なグッドミュージックを追求しているように思いました。それでいてオール・タイム・ロウらしさは全く失っていないんですよね。制作はオープンマインドな姿勢で行われたのですか?

とにかくいろんなことをやりたかったんだ(笑)。僕たちのバックグラウンド、やりたかったことは間違いなくパンク・ロック・バンドだった。ブリンク182、グリーン・デイ、オフスプリングに憧れてたし、ラウドでファストな音楽をやりたかった。でもバンド活動を続けていくうちに、それが自分たちのやりたいことのほんの一面でしかないことに気がついたんだよね。いろいろなジャンルの音楽を聴いてたから、他のサウンドの要素も取り入れたくなったんだ。もちろんどのアルバムも、そのコアにはラウドでファストなパンク・ロックがある。ただそこに、パンク・ロック以外からの影響も取り入れたいと思ったんだ。『Tell Me I'm Alive』に関しては、僕が好きで聴いてるビートルズからの影響が入ってる。それで今回初めてピアノを入れたんだ。20年もやってると、新しいことをやりたくなるんだよね(笑)。



ーパンク・ロック以外からの影響についても聞きたいのですが、お父さんも大の音楽好きだったし、ギターを習った先生からはクラシック・ロックの洗礼も受けたんですよね。

僕が子供の時、父は音響の仕事をしてたから、家では常に音楽が流れてたんだ。父はジェネシス、ビートルズ、ピンク・フロイド、ニック・カーショウが好きだった。僕は80年代終わりに生まれ、90年代に育ったから、父の好きな音楽も90年代の音楽も聴いてた。クラシック・ロックを聴いてたら、いきなりニルヴァーナ、オフスプリングが出てきた感じさ。だからそういうものすべてが僕たちの音楽には入ってると思う。僕がギターを始めた時は、グリーン・デイの曲が弾ければそれでいいと思ってた。でもギターの先生からは、グリーン・デイ以上のことを練習しなきゃダメだって言われて、メタリカのようなバンドの曲も練習してたんだ。



ーそこは僕も同じですね。いろいろな音楽を聴いていましたが、パンク・ロックに出会った時、ギターの練習をしなくてすむと思いましたから(笑)。

そこなんだよ!(笑) でも同時に、それが理由でヴィルトゥオーソ(※きわめて高度な演奏技術をもつ演奏家を意味する言葉)のギター・プレイヤーとしての道を諦めることにもなった。パワーコードで曲が作れるってわかったら、練習よりも曲作りをやりたくなるからね(笑)。ギターは上手くならなかったけど、曲作りは上手くなったから、それはそれで良かったんだけど。

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