10月に配信シングル『Summer of Love』をリリースしたYogee New Waves。ループするメロディの高揚感に包まれながら、切なくも眩い輝きを放つこの1曲は、過ぎ去った夏の記憶を抱えながら前進するような力強さを聴く者に与える。
「Summer of Love(愛の夏)」という言葉を聞いて、1960年代的なイメージを喚起する人も多いだろうが、この曲の持つ力は、より普遍的な「愛というなにか」を捉えているようにも感じられる。
Yogee New Wavesにとって、「愛」とは一体、どんな意味を持つ言葉なのだろう? 彼らは何故、「愛」を表現し続けるのだろう?
このインタビューでは、「音楽」「映画」「本」「言葉」「場所」という5つのキーワードをもとに、Yogee New Wavesにとっての愛の秘密を探った。
「愛にネガティブなものは存在しないと信じたい」(角舘)
-今日はみなさんに、「愛」というテーマでお話を聞かせていただこうと思っていて。まず、みなさんは「愛」という言葉を聞いた時、どんな印象を持ちますか?
角舘健悟(Vo, G):「愛」かぁ。俺、カキフライがめちゃくちゃ好きで。
-はい(笑)。
角舘:基本的に人にあげたくないんですよ。たとえ恋人でも。「そんなに人にあげたくないものでも、あげたくなる気持ちが愛なんだよ」って、子供の頃に母親に教わったんです。そう考えると、人が生まれてから最初に感じる愛って、やっぱり親から子への愛なのかなっていう気がするんですよね。自分を育ててくれる人からの手放しの愛って本当にすごいと思う。それを原体験にして、人は生きていく中で愛を手繰り寄せていくんだろうなって。
上野恒星(Ba):そうかもしれないね。よく一緒に呑む先輩に、最近お子さんが生まれて。その先輩、もともとは怖いんだけど、子どもの前だと人が変わるんですよ(笑)。今、年齢的にも自分の目線が親に近くなって、近しい人が親になる瞬間を見ると、「人って、こう変わるのか」って思いました。
-根本的に、「愛」という言葉は限りなくポジティブなもの、という印象が強いですかね?
角舘:それは間違いないですね。この言葉に関して、暗いイメージはないです。
-これは捻くれた見方かもしれないんですけど、僕自身、「愛」という言葉にはすごく複雑な感情が沸くんです。愛って、平等ではないじゃないですか。だから、人が愛を前面に出す時、その愛から零れ落ちてしまった人の存在も確実にある、ということを少なからず意識してしまうというか。
上野:自分を愛するものしか見えなくなると、クローズドな関係になってしまって、社会的な問題から切り離されてしまう……。愛には、そういうネガティブな側面もあるかもしれないですよね。
角舘:なるほどなぁ……。
-でも、それ故に、「愛」というものを表現し、世の中の多くの人たちの前に提示できるのは、芸術家のひとつの特権なのかな、とも思ったりもするんですよね。
角舘:そうですね。「愛」って数値化できないし、科学じゃ証明できないものだから。「勇気」とか「尊厳」もそうだと思うんですけど、そういった数値化できないものを感じ取った人が表現したものが芸術だと思う。
だから、愛は芸術に一番近いものなんじゃないかなって思うし、愛の本質って、たとえ下がっても上を向くことなんじゃないかなって。僕は、基本的に性善説を信じているし、人は生まれながらにして善いものだと思うから、愛にネガティブなものは存在しないと信じたいですね。
-それは、とても角舘さんらしい考え方ですし、ヨギーの音楽を聴いていても伝わってくるものですね。
角舘:もちろん、「愛」を利用する人はいると思いますけどね。愛をコントロールして、怒ったり悲しんだりすることを他人に押し付けたり強要する人はいると思う。でも、それは愛の本質ではないなって思います。