史上最強のA&R・近藤雅信、東芝EMI時代の清志郎、渋谷系を語る



田家:近藤さんが曲を選ばれる中に清志郎さんは当然入っていると思ったんですけど、これが選ばれているのは結構意外ではありました。

近藤:この曲は、糸井(重里)さんが詞を書いている、糸井さんから清志郎にこういうコマーシャルがあると。清水建設のCMだったんですけど、曲を作ってくれないって話で作ったそうなんですよ。ディレクターの人から15秒のCM映像を見せてもらって。すごくいいなと思ったんです。すぐ清志郎さんに電話して、あれ、すごくいいですね、フルバージョンないんですか、って訊いたら、あるんだよって言って。もうできてましたね。完パケにはなっていなかったんですけど、アコースティックギター1本で。それを聴かせてもらったらすごくよかったので、これすぐに出しましょうっていって出して。当時はレコード会社も含めて、世の中はCIブーム、コーポレート・アイデンティティということが言われている時代で。これはいいなと思って、東芝の社長のところに行って、「パパの歌」で新聞の東芝EMIの全段広告やりましょうっていって。それで社長もOKしてくれて。新聞全段1枚に広告を打たせてもらいました。それが印象に残っているんです。

田家:清志郎さんの中でも、これはいつかフルバージョンを出したいって気持ちがあったんでしょうかね。

近藤:うーん…。わからないです(笑)。できちゃったのかもしれないし、最初から糸井さんの歌詞は1曲分あったのかもしれないし、どういう意図があったのかはわからないですけど、この歌、本当にじんわりして清志郎らしいと思いますけどね。子供が生まれたときの頃の話で。新聞広告は東芝の社員のお父さんと子供たちと、清志郎と清志郎の息子さん竜平くんが写っているんですよね。

田家:近藤さんの中での清志郎さんのイメージって、こういうところもある?

近藤:そうですね。それはとても自分にとってメモリーなのは、糸井さんが詞じゃないですか? 新聞広告のコピーは僕が考えたんですよ。糸井さんの書いた歌詞のコピーを僕がやったというのは僕的には自己満足しているんですよ。

田家:コピーライターは僕だと(笑)。

近藤:それでビジュアルが東芝のお父さんと子供たち、清志郎と息子さん。コピーはよく覚えていて。「ママ、パパの歌うたってよ!」ってコピーなんです。結構な自信作なんですよ。ギャラは何も出ていないけど(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE