米女子学生不明事件、24年前の謎を解き明かすのはポッドキャストの司会者

ランバートの決意

山のような作業だと思うだろうが、実際その通りだった。ランバートは法律やジャーナリズムについて正式な訓練を受けたことはなかったものの、事件に夢中になるあまり、2018年5月に勤めていたロンポックの楽器店を辞め、ポッドキャストに全精力を注いだ。録音からミキシングまで、番組のあらゆる作業を一人でこなした。

「僕をこれほど虜にしたのは犯罪ポッドキャスト自体ではありません」と彼は言う。「地元の事件だったからというのと、今ではもう誰も口にしなくなっているのが引っかかったんです。理解出来なかった。彼女がはまだ見つかっていないのに、なぜ誰も話題にしなくなったんだろう?」

他のアーティストのためにエンジニアを務めることもあったランバートには録音の知識があり、2016年から2019年にかけては、主に地元のリスナーに同じく地域の人々や友人をインタビューして紹介する『Are We Okay?』という別のポッドキャストも配信していた。フリースタイルで時に冗長な番組は、クリスティン・スマートの半生と死の可能性に鋭くメスを入れる『In Your Own Backyard』とは対照的だ。犯罪番組の方はこれまでに240万回ダウンロードされている。

「友人や家族、その他話を聞ける人みんなに、『クリスティン・スマートのことを覚えていますか?』と尋ねるようになりました」とランバート。「それぞれ違った答えが返ってきましたが、誰も詳しいことは知りませんでした」

2019年、ランバートの追跡がついに実を結んだ。2月20日、スマートの誕生日にシェル・ビーチの記念碑を訪れたときだった。碑には、海への思いを綴ったスマート作の詩が刻まれている。「海水に浮かんでいると/興奮が全身をかけめぐる/まるで天国にいるような心地」 カリフォルニア州立工科大学のキャンパスから約11マイル離れた場所だ。

「その日誰かが彼女を偲んでやって来たらインタビューできるかもしれないと思い、マイクを持って行ってみることにしました」と彼は言う。冷たい雨の中待っていたが、しばらく誰も現れなかった。だが数時間後、2人の年配の女性が記念碑を訪れた。「(2人に)お話を伺えますか、と尋ねたら、(そのうち1人は)クリスティンの母親(デニース)だったんです」とランバート。母親は、250マイル以上も離れたストックトンの自宅から車でやって来ていた。「たまたまその場所に居合わせたんです」


クリスティン・スマート失踪事件に関係があると思われる家の前で車を調べるロサンゼルス保安局の職員(Photo by Marcio Jose Sanchez/AP/Shutterstock)

「友人のキャンディス(そのときいたもう1人の女性)が紹介してくれました」と、デニースはローリングストーン誌にメールで語った。「彼女が『彼はクリスティンのことに詳しいのよ』と言ったので、『それは良かった』と思いました。後日ディナーに行きましたが、すぐに彼の礼儀正しい、控え目な態度に心打たれました。彼は物静かで、口数もとても少なかったのですが、誰もが答えを求めている、若い女性が寮の裏庭で姿を消したのに正義がなされず、彼女のことを知っている人もほとんどいないなんてあってはならない、という強い思いを感じました」

Translated by Akiko Kato

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