細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く

田家:あとがきに「評伝を書かせてくださいとお願いしたのは、2012年9月のことだった」と。8年かかっていますが、書き始めた当時のことはどんな風に思い出しますか?

門間:僕は一ファンに過ぎなくて。実は映画などの音楽以外のことに関して執筆する機会が多かったので、純粋な一ファンが憧れの人に会いに行くということでガチガチに緊張した夏の暑い一日でした。ただ、そんな時なので、僕は大事なことをお願いするにも関わらず、短パンを履いて行って。細野さんと初めて対した時に、細野さんの視線がずっと僕の短パンに注がれていたのを恥ずかしく覚えています(笑)。

田家:でも憧れの人ではあったんですね。あとがきに「好奇心が責任感と使命感に変わっていった」と書かれていましたが、それは取材しながら変わっていったという。

門間:評伝を書きたいです、とお願いした時は、興味のある人にインタビューするという気持ちだけだったんですよね。無邪気なものだったなと思うんですけど、そこで快諾いただいていざ取り掛かるとなった時に、50年の長さもありますし、その中で細野さんは領域を様々に横断して活動されていますから。これは軽率だったなと思ったんですよ(笑)。あまりに僕は重く考えずにお願いしてしまったと思って、そこから少しずつ調べや取材を始めていった中で、これは責任を持たないといけない。細野晴臣という人の歴史を辿ることが日本のロック史やポップ史を辿ることとイコールだなと思ったので、それについて使命感を抱かざるをえなかったと思います。

田家:そういう風に思えるようになったのは、始めてからどれくらい経ってからですか?

門間:重荷のようなものを感じたのはすぐだったんですけど、細野さんの世代って、それ以前の世代とは違ってデビュー直後からインタビューを掲載した雑誌もたくさんありますし、そこから追いかけていくだけでも膨大なんですよね。これだけのものを自分が見ていかないといけないのか、という時に、これはやばいと思いました(笑)。

田家:そういう話も追々お聞きしていこうと思います。私が本を読み切ったときの第一印象は、よく書ききったなあ、と(笑)。今日は門間さんに6曲選んでいただきました。1曲目はこちら。はっぴいえんどで「夏なんです」。

Rolling Stone Japan 編集部

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