ジャイルス・ピーターソンが語る、ブリット・ファンクとUK音楽史のミッシングリンク

アメリカのDJからも愛されたブリット・ファンク

―ブリット・ファンクの中でもライト・オブ・ザ・ワールド(以下LOTW)は、シーンにとっても、あなたにとっても重要なバンドだと思います。このバンドについて教えてもらえますか?

ジャイルス:このムーブメントを語る上で、LOTWは避けては通れないグループだね。初期からその力を発揮していて、ハマースミス・オデオンの3000人のキャパシティをソールドアウトさせていた。運が良ければチケットを取れるというぐらいのグループだったんだ。それから、彼らはアメリカでレコーディングしたバンドのうちのひとつだね。「London Town」や「I’m So Happy」が収録されている2ndアルバム『Round Trip』(1980年)は、サイド・エフェクトのオーギー・ジョンソンが制作したものだ。でも、個人的に好きなのは1stアルバムの『Light of the World』(1979年)で、他のアルバムよりも粗い感じが素晴らしい。彼らはイギリス版のアース・ウインド&ファイアーみたいなグループと言えるね。実際、そうなろうとしていたし。

それから、これはあまり知られていないことなんだけど、彼らのアルバムがアメリカでも売れたのはDJのおかげなんだ。ラリー・レヴァン(※1)はジュニア(※2)の「Mama Used to Say」や、イマジネーション(※3)をプレイしていた。彼らはある意味ブリット・ファンクだよね。

※1:70〜80年代にNYのクラブ「パラダイス・ガラージ」を拠点に活動していた伝説的なDJ。彼がプレイしていた曲は「ガラージ・クラシックス」と呼ばれる。
※2:Junior Giscombe アメリカで成功した最初のイギリス人R&Bシンガーのひとり。独立前の80年代にはブリット・ファンク・バンドのリンクスとともに活動していた。
※3:セントラル・ラインのエロル・ケネディが在籍したグループ。「Body Talk」(1981年)、「Just an Illusion」(1982年)が全英トップ5入りの大ヒットに。



ラリー・レヴァンがリミックスした、イマジネーション「Changes」(1982年)

ジャイルス:イマジネーションは、ラリー・レヴァンが出演したNYのイベントで演奏した唯一のイギリスのグループでもある。ハイ・テンションのデビッド・ジョセフによる「You Can’t Hide(Your Love From Me)」や、タッチダウンの「Ease Your Mind」もアメリカで大ヒットした曲で、ラリー・レヴァンやフランソワ・Kがこれらのブリット・ファンク・チューンをプレイしていたんだ。イギリスのダンスフロアのカルチャーを追いかけるシーンが、アメリカのアンダーグラウンドに存在していたってことだね。パワーラインの「Double Journey」も、ムーディーマンがリミックスしたサン・パレスの「Rude Movements」(※)もそういった曲だと言える。そうやって、アメリカのDJによって有名になったブリット・ファンクのレコードというのが、80年代のものだけで10枚ぐらいある。これはとても興味深いことだと思うね。

※NYのクラブ・シーンにおけるレジェンド、デヴィッド・マンキューソのパーティー「the Loft」でのクラシックスだった。編集盤『the Loft』収録。




Translated by Aoi Nameraishi

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