ジャック・アントノフが語るブリーチャーズと音楽人生、テイラーも惚れ込むプロデュース論

ジャック・アントノフ(Photo by Erik Tanner for Rolling Stone)

 

ブルース・スプリングスティーンとの交流

ーアルバムの冒頭を飾る「91」は、どのように作られたのでしょうか?

アントノフ:僕にとって曲作りは魅力的だ。人は無力な存在だからこそ面白い。時々頭の中で「嫌な感じだ。こんな感覚は好きじゃない。これを曲にしてみよう」と考えるんだ。だから「91」は、ある意味で僕の典型的な楽曲だといえる。母親、別れた彼女、僕の将来などを並べて切り貼りして作った。当初は「Mother Ex-Lover」というタイトルだったんだが、紙に書いてみると、「これは問題の多いタイトルだ」と気づいたのさ(笑)。だから「91」にした。アルバムの中でも好きな曲のひとつだ。それから大好きなゼイディー・スミス(イギリスの作家)が、全体的な構成を整える助けになってくれた。

ーつまり、ゼイディー・スミスが直接あなたの曲作りを手伝ったのでしょうか、それとも彼女の作品を読んで参考にしたということでしょうか?

アントノフ:僕の作った歌詞を彼女へ送って、彼女が構成を見てくれたんだ。音楽関係以外の人と仕事をするのは初めてのことだったから、素晴らしい経験だったよ。この曲には、さらに面白いストーリーがある。僕がカリフォルニアのスタジオでザ・チックスのプロデュースをしていた時、隣の部屋でニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズもレコーディングしていたんだ。僕は「91」を(バッド・シーズの)ウォーレン・エリスに聴かせると、その場で彼が曲に合わせてバイオリンを弾き始めたのさ。そして曲の最後のピースは、セイント・ヴィンセントことアニー・クラークだ。彼女は曲にストリングをアレンジしてくれた。僕が特にリスペクトする人たちに支えられてできあがった楽曲だと思っている。

ーゼイディー・スミスとは、どういった経緯で友人になったのでしょうか?

アントノフ:覚えていないな。彼女とは、この辺りの街角で偶然会ったのが最後だと思う。彼女が僕のレコーディングしていたスタジオへ遊びに来てくれた。彼女は僕の曲を聴きながらメロディーを書き留めていたが、それが完璧だった。僕がリスペクトし、心から信頼しているひと握りの人たちからもらえる意見は率直で、シニカルでもない。アーティストとして最悪なのは、鏡に向かって叫んでいる自分自身へ向けた批判を、こちらへ向けてくる人々の存在だ。そんな人との会話は支離滅裂で成り立たない。アーティストとして、とても危険な状況だ。音楽作品が、同じようにめちゃくちゃにされているのをよく見かける。自分自身の作品に対する思いを、こちらの作品への辛辣な批判としてぶつけてくる人もいるんだ。

ーその他に、あなたに対して前向きなフィードバックを与えてくれる人たちはいますか?

アントノフ:最高の音楽作品というのは、信念を持った少数の人たちによって作られるもの。僕の場合は、僕とマネージャーとA&R担当だった。A&R担当だった彼はもう僕のレーベルには所属していないが、僕にとって身近な人間だ。それから僕の家族と、ラナ(・デル・レイ)のようなアーティストも僕のグループの一員だ。僕はエラ(・イェリッチ・オコナー、ロードの本名)とも多く共作しているし、もちろんテイラー(・スウィフト)ともコラボしている。

ブルース(・スプリングスティーン)は、僕のグループの重要な一員だ。つい先日も2人でドライブしながら、僕のアルバムを一緒に聴いたよ。世間の誰にも受けるアルバムを作りたければ、僕は世界中の全員とコラボするだろう。でも僕は、自分の好きな人たちのためだけに作品を作りたい。そういう人たちのためにプレイしているんだ。



ー周囲の人たちからは、どのようなフィードバックを得られているのでしょうか?

アントノフ:エンドレスさ。僕は「91」をアルバムのオープニングにすべきかどうか、全く確信が持てなかった。でもブルースは「いや、そうすべきだ」という感じだった。以前はテイラーが「I Wanna Get Better」をシングルとして強く推してくれた。彼女には(2014年に)ブリーチャーズの1stアルバムの全曲を聴いてもらったんだ。あのとき、僕としては「Rollercoaster」を1stシングルにしようかと思っていた。今となっては、「I Wanna Get Better」を選んでよかったよ。「Rollercoaster」をシングルにするのは、あまりにも安易過ぎるアイディアだった。

「I Wanna Get Better」は、人生に起きたことを3分間に凝縮したんだ。僕はテイラーを本当にリスペクトしているから、彼女のアドバイスを聞き入れた。結果として、世界中の人々が共感してくれた。それから母親からのアドバイスも役に立つね。

ー「Chinatown」にはブルース・スプリングスティーンも参加しています。彼や彼の妻のパティ・スキャルファとはかなり親しいようですが、夫妻との関係はいかがでしょうか? パティの作品をサポートするという話も耳にしました。

アントノフ:パティともコラボした。彼らはアーティストとして本当に大切な人たちだ。同時に、人間としても素晴らしい。彼らは相手を尊重してくれる。アーティストとしても人としても自己を頂点まで高めるには、最も誠実な人間になることだ。多くのものを生み出してきた彼らと一緒にいると、とても楽しい。

ある時、彼らの家に遊びに行った。それぞれが自分の曲をプレイする中で、僕は「Chinatown」の初期バージョンを披露した。すると「スタジオに入ろう」ということになり、全員が「Chinatown」に合わせて歌ったのさ。もしも僕が「ブルースとの共作を作りたい」と最初から考えて作っていたら、きっと上手くいかなかっただろう。意外だったのは、その後の展開がとんとん拍子に進んだことだった。彼が入って来て、いい意味でぶち壊してくれた。でも、まるでバンドの一員である友人が歌っているような感じがした。僕の友だちが僕の歌を歌っている、という点が特別な部分だ。彼とは一緒に出かけたりジョークを言い合う仲だが、ジョークを言いながらもブルースは、人生や音楽について素晴らしい話をいろいろしてくれた。そして今の彼は、昔よりもすごいんだ。最近の何枚かのアルバムなんて、特に見事な作品だと思う。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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