ビートルズ「Let It Be」の心地よいグルーヴ、鳥居真道が徹底考察

「やはりどちらも東芝のレコードです」



パーディ以外のハーフタイムシャッフルの有名な例としては、リッキー・リー・ジョーンズの「Chuck E’s In Love」(1979)やレッド・ツェッペリンの「Fool In The Rain」(1979)、トトの「Rossana」(1982)がよく挙げられます。ドラマーはそれぞれ、スティーブ・ガッド、ジョン・ボーナム、ジェフ・ポーカロ。これらは1980年前後の音源ですが、こうしたグルーヴの原型は60年代中盤からすでに存在していました。



リー・ドーシーの「Get Out of My Life, Woman」(1965)はその始祖のひとつといって良いでしょう。プロデュースはアラン・トゥーサンで、演奏はのちのミーターズの面々が担当しています。言うまでもなくニューオーリンズ産のグルーヴです。ただしこの曲はそこまでハネているわけではありません。イーブンとシャッフルの中間ぐらいのハネ具合です。

この曲の特筆すべき点はロックンロールの黎明期のグルーヴをハーフタイム化したことにあります。ハーフタイムとは歌のテンポは固定したうえで、BPMを半分の数字として解釈するというものです。例えばBPM120の曲を60と解釈して演奏するとハーフタイムになります。そうすることで、4分音符は8分音符となり、8分音符は16分音符となります。リズムの最小単位=サブディビジョンがより細かくなると同時に、演奏には隙間が生まれます。エルヴィス・プレスリーの「Mystery Train」とザ・バンドのカバー版を比べてみるとわかりやすいかもしれません。



ロックンロール黎明期のグルーヴは過渡期とでもいうような状況にありました。ちょうどロックンロールのリズムがスイングからイーブンへの移行する時期で、ハネるリズムとハネないリズムの中間のようなリズムで演奏された音源が多いです。ニューオーリンズが生んだ不世出のドラマー、アール・パーマーが参加したファッツ・ドミノの「I’m Walkin’」やサーストン・ハリスの「Little Bitty Pretty One」はやはりマイルドにハネています。この2曲はキックのダブルが耳を引きます。こうしたタイプのビートをハーフタイムに解釈して組み直したものが「Get Out of My Life, Woman」であるというのが私の自説です。90年代初頭のヒップホップで再発見され、重宝されることになる「ドドッ」というダブルのキックは、元を辿ればロックンロールにあるような気がしています。

「Get Out of My Life, Woman」のドラムが同時代のロック系ミュージシャンにもたらしたインパクトは大きく、バッファロー・スプリングフィールドの「For What It Worth」やトラフィックの「Deat Mr Fantsy」、はその影響下にあるものと言って良いでしょう。

Rolling Stone Japan 編集部

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