ドージャ・キャット密着取材 傍若無人なポップスターの知られざる素顔

 
ドージャが躍進した理由

ドージャのマネージメントチームは、彼女が成功した理由を2つ挙げる。1つめはラッパーおよびヴォーカリストとしての圧倒的才能と変幻自在のスキルだ。「『Bottom Bitch』のようなパンクトラックを歌いこなせるラッパーはそうはいない。ポール・アンカをサンプリングするようなセンスの持ち主もね」。そう話すのはマネージャーのLydia Asratだ。別れを歌ったアンセム「Ain’t Shit」を例にとってみても、ドージャはハスキーな唸り声からアニメのキャラクターのようなファルセットに瞬時に切り替えてみせる。彼女の歌を聴いていると、スタンドアップコメディをやっていた70年代のロビン・ウィリアムズを思い出す。彼女は曲作りの際に、もう一人の自分を作品にゲスト参加させるつもりでヴァースを書いているという。「そうすることでアトラクションのようなスリルが生まれると思うの」




皮肉なことに、彼女がラッパーなのかポップアクトなのかという議論を繰り広げているポップファンたちの間で、ドージャの多能ぶりは争点となっている。彼女はそのことについて、「Twitterをやってる子供たちが好きそうなトピックだけど、本当はそんなこと誰も気にしてはいない」と話している。それでも、彼女がそういった声に苛立っているのは確かだ。「私のことをラッパーじゃないなんていうやつはどうかしてる」と彼女は話す。「何も分かっちゃいないのよ」

彼女が破格の成功を収めたもう1つの要因は、ハイパーで洗練されたイメージが求められる今という時代に、奇妙で予測不可能な存在であることを恐れない姿勢だ。Instagram Liveで「エロいから」という理由で買ったベージュのネコ耳をつけてトゥワークを披露し、TikTokではダミ声で頭空っぽの男性をネタにしながら、ロン・ウィーズリーのウィッグをつけてセクシーなダンスを見せつける。熟練のShitposter(クソカキコ愛好家)である彼女は、「おまんこからおしっこ」「私のお尻は反則」など、くだらない内容を定期的にツイートしている。

一方で、時に露骨なほど過激な内容を投稿する彼女は、これまでにソーシャルメディア上でたびたびトラブルを起こしている。アール・スウェットシャツとタイラー・ザ・クリエイターの描写として同性愛者を蔑視する表現を用いたり、ドージャがベッドに寝転がってNワードを口にするTinychatの動画がリークされた際には白人至上主義者たちとの交流が噂され、ラッパーのN.O.R.Eは「脚を見せながら人種差別の会話に加わる女」と批判した(実際のところ、チャットルームにいた他のメンバーが白人至上主義者であるという証拠はない)。より最近では、パンデミックの最中にケンダル・ジェナーの誕生日パーティに出席したことを非難するファンに片っ端から食ってかかり、彼女の行動を批判したある人物に対しては「黙れ醜いババア」とツイートした(現在は削除されている)

こういった行動によって、ドージャ・キャットは「極めてオンラインな存在」とみなされるようになったが、彼女はこれを真っ向から否定する。「私がインターネットの申し子だったことは確か」と彼女は話す。「でも最近は距離を置いてる。独りで退屈してたら、Twitterで2時間くらいぶっ通しでツイートしたりするけど」


2021年11月23日、ロサンゼルスにて撮影
Photograph by Kanya Iwana for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Produced by Brittany Brooks. Hair by JStayReady at Chris Aaron Management. Nails by Saccia Livingston. Makeup by Ernesto Casilla at Opus Beauty using Pat McGrath Labs. Set design by Robert Ziemer. Styling by Brett Alan Nelson for the Only Agency. Dress by Alexandre Vauthier Couture. Earrings and rings by Swarovski. Opening image: Dress by Alejandra Alonso Rojas. Earrings by Archive Margiela.

しかし、彼女の最近の作品はそういったネット上でのイメージとは異なり、より洗練されたものが多い。「当初、彼女はSoundCloudラッパーたちと比較されがちだった。ラップをするという理由で、ニッキー(・ミナージュ)やカーディ(・B)が引き合いに出されていた」。そう話すのは、彼女の弁護士兼マネージャーのJosh Kaplanだ。「僕の考えは違うけどね。彼女はレディー・ガガのようなタイプに近いと思う」

ドージャのチームは、彼女がネット上でリアルな自分を晒すのを恐れないことを大きなアドバンテージだと見なしている。アーティストの大半がただ途方に暮れていたパンデミックの最中に、彼女は頻繁にInstagram Liveで生配信し、曲を書き、Alexaに「フォレスト・ウィテカーがうんこするときの音を再生して」と命令し、フォートナイトにハマり、ランニングするたびにそれをファンに報告していた。「彼女はインターネットの達人だ」。彼女のマネージャーのGordan Dillardはそう話す。「それはパンデミックの最中に、彼女が頭角を現した3つか4つの理由のうちの1つだ。あの日々においてアーティストの命運を左右したのは、インターネットのスキルだった」

チームはドージャが躍進した理由について、彼女が本当の自分を隠そうとしないからだと強調する。しかし、ファンに対して黙れとツイートする重度中二病患者の彼女が、ポップスター製造装置の中でいつまでじっとしていられるのかは疑問だ。また、彼女が何かを犠牲にしてスターダムを維持しようとするかどうかも読めない。

Translated by Masaaki Yoshida

 
 
 
 

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