スラッシュ「最低な状況も愛していた」ガンズ・アンド・ローゼズで得た人生の教訓

ギターへの愛情、人生の落とし穴

―先ほど、お母様がくれた革パンをヘロインと交換したときのことについて話してくれました。ほかにも、後悔していることはありますか?

スラッシュ:パンツとか、質に入れた2本のギターとか、ちょっとしたことかな。でも、気にせず前に進んできた。深刻な身体的ダメージを被ることも、酔っ払って取り返しのつかないヘマをすることもなかったのは不幸中の幸いだ。後悔というものは、信じていないよ。人生にトラブルはつきものだから。

―もう何年もずっとシラフですが、断酒に取り組む人々にアドバイスはありますか?

スラッシュ:俺の経験上、あの地点……AA(訳注:アルコホーリクス・アノニマス=無名のアルコール依存症者、断酒に取り組む国際的な自助グループ)的な表現を借りるなら、状況に「降伏する」地点までたどり着くのは大変だった。自分がこうした問題を抱えていることを自覚し、それらを整理するか、誰かに助けを求めるといった状況だ。そこまでたどり着くには、気が遠くなるくらいの時間がかかる。何もかもが楽しくてゲームみたいだったものが、ある日突然そうではなくなり、それが何であるかを明確に理解できなくなるから。何よりも重要なのは、こうしたことを受け入れて、変化を起こさなければいけない、という決断に至ることだ。自分に対して誠実であれば、必ず何かが起きる。でも、それまで通りの生活を続けることはできない。その先にあるのは、死か刑務所だ。ほかに選択肢なんてないんだ。

ここにいるのが奇跡と思えるくらいひどい経験をしてきたおかげで、自分が生きていて、好きなことができる状況に感謝できるようになった。二度と抜け出すことができないほどの致命的なダメージを被る前に、どうにかして乗り越えることができて本当によかったよ。でも、後悔はしていない。何というか、最低な状況も俺は愛していたんだ。それに、当時は楽しかった。でもどこかで限界を迎えてしまった。

―人生で一番高い買い物は何ですか?

スラッシュ:ギターを400本持っている奴にする質問かよ? それにしても、すごい数だよな。買うときもあれば、そうでないときもあるけど、とにかく次から次へとギターを手に入れてしまうから、大半はギターに費やしてしまう。ギター以外には、高価なものはあまり持っていないんだ。車は2台あるけど。だから、度を越した浪費家というわけではないが、ギターに対しては若干依存症的と言えるかもしれない。なかなかのコレクションにはなったけど、いまでもギターを買うんだ。いつか全部使うよ。たしかに、400本はすごい数だな。デヴィッド・ギルモアとエリック・クラプトンが自分たちのギターを売りに出したときは「へーえ。面白いな。どんな気分なんだろう? 解放感とか?」と思ったね。

―あなたのギターソロは、まるで歌のようにメロディアスです。優れたリードギタリストになるための秘訣は?

スラッシュ:ソロを弾くとき、大抵の奴は自分を甘やかしてしまう。だから、曲とはまったく脈絡のないソロになるんだ。奴らは、ひたすらジャムって、手持ちのフレーズをすべて披露する。それに、歌えるくらいギターソロがメロディアスだと言えるのは、(俺の演奏が)楽曲のメロディーの道筋という構造の範疇にあるからなんだ。これはいいことだと思う。かねてから俺はギターソロが大好きだが、あくまで素材というコンテクストの範疇でギターソロを愛している。ステージ上で誰かがひたすら楽器を弾き倒す、というのは好きじゃない。曲にインパクトを与えるという意味でギターソロが好きなんだ。

―かなり印象的なルックスですが、人前で気づかれずに行動するコツとは?

スラッシュ:ほとんどの場合、俺は自由にぶらつくことができる。ブリトニー・スピアーズじゃないから。なかには、気づく人もいるけどね。特に、ツアーで訪れている街をうろついているときなんかは。でも、普段の俺はかなり地味だ。あえて人の気を引くのも大嫌いだしな。だから、人知れず出入りを繰り返していれば、大勢に追いかけられることもない。もうひとつ言えるのは、自分が世に送り出したものが受け入れられた結果、人に気づかれるようになってしまったと文句が言える立場ではないということだ。不自由かもしれないけど、こればかりは仕方がない。

―成功にも落とし穴があるということでしょうか?

スラッシュ:本当の落とし穴は、成功を手に入れてからどのように振る舞うか、成功をどう扱っていいかわからないことだ。この点に関して、俺は多くのことを経験してきたと思う。長年の経験から得た教訓は、あまり人付き合いをしないことだ。それに俺は、あまり外出もしない。ライブで演奏しているときに気づかれることは構わない。大歓迎だ。でも、地元ロサンゼルスにいるときは、ひとりでいることが多い。移動中も、あえて誰かに気づいてもらうようなことはしない。こうしたことが得意じゃないって、長年の経験から学んだよ。積極的に発言する人もいれば、注目の的になるのが大好きな人もいる。俺は、そういうタイプではないんだ。

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From Rolling Stone US.




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『4』
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Translated by Shoko Natori

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