ミッキー吉野本人と語る、アルバム『Keep On Kickin' It』



田家:アルバム8曲目「歓びの歌 feat. Mummy-D」。ベートーヴェンの第九の「歓びの歌」であります。フィーチャリングはRHYMESTERのMummy-Dさん。朗読サッシャさんという人たちがカバーしております。ラップを入れてくれというのはミッキーさんが言われたんでしょ?

ミッキー:インストで全部はなんかつまんないなって言っちゃいけないんだけど、やっぱり言葉が入って、アピールがあった方がいいんじゃないかなと。

田家:ヒップホップというストリートミュージックに対してはどう思われていたんですか?

ミッキー:乗るという意味ではカップスの頃から同じだから、ダンスもそうだし、ヒップホップも結局人を乗っけたいし、自分も乗りたいしという。

田家:横浜はブルース、ソウルミュージックみたいな洋楽から、レゲエの人たちも多いでしょ?

ミッキー:多いですね。ガンダーラって西洋と東洋が混ざったところじゃないですか。横浜は港町でいろいろな文化が交わって、そこからいろいろなものが淘汰されていくと思うんですよね。そういう意味でいろいろな音楽が培われていっちゃうんじゃないかなと思いますね。

田家:『西遊記』にするか、『DEAD END』にするかと悩まれたときの『西遊記』はそういうものが作用していたと思われます?

ミッキー:それもあるし、ビートルズは「I’ll Follow The Sun」でしょ。そしたら僕なんかは太陽の方に行くんだよね。日出ずる国から来ているわけだから。そういう意味でアジアも中国から行くのが僕にとってワールドワイドの始まりだと思ったんです。当時は若いといろいろ考えるじゃないですか。ちょうど20代前半だから、難しいこととかいろいろなことを考えちゃっていた。日出ずる国から行くにはどうしたらいいかとか、そんなことばかり考えていましたね。

田家:もしご自分が90年代、2000年代に10代を過ごしていたとしたら、ヒップホップ、ストリートミュージックの方には行かれたでしょうか。

ミッキー:どうかな。それは難しい。僕はやっぱり音楽というものが基本にあるから、ノリだけではなくて別に種類も関係なくいけると思うし、言葉でもヒップホップとかラップとか韻を踏んだりいろいろあるけど、音楽も基本的にはそうじゃないですか。反応しあっていく音楽もそうでシークエンスしていくとか、一楽章、二楽章加わっていくとか。そういう意味では人間のヒューマンネットワークみたいなもので、それが音楽だと思うんですよね。

田家:Mummy-Dさんのラップの中に親から子へとか、子から孫へとか、クラシックとヒップホップみたいなことも言葉にしていますもんね。

ミッキー:「銀河鉄道999」でバッハを使ったり、アマデウス・モーツァルトとかいろいろあるけど、僕が1番影響を受けたのは結局はベートーヴェンだったというのが分かったんです。それは何かと言うと、迫力とポップなメロディですね。きっと知らず知らずに追い求めたのかなと、自分の中ではっきり分かったんですね。

田家:「歓びの歌」の元になっている曲をお聴きいただこうと思うのですが、これはベートーヴェン生誕250年のときのものですか?

ミッキー:そうですね。ベートーヴェンの生誕250年をみんなで祝おうと、僕が好きなピアニストの世界中の音楽家に呼びかけたんですね。この曲をアレンジして出して、ランランがプレイリストに入れてくれたんです。

歓びの歌 / ミッキー吉野

田家:ランランさんという方とお付き合いがあるんですか?

ミッキー:お付き合いというより、うちの家内と2人でよくランランのコンサートを観に行って。僕が今感じる1番のピアニストかな。ベートーヴェンと同じような迫力があるんです。

田家:求めている音楽の歓びは変わってきているんですか?

ミッキー:基本は昨日より今日の方がいい日であるようにとか、明日の方が今日よりいい日であるようにと思う気持ちは生きている喜びにもなるし、音楽をこれだけやってこれると、まさしく求めるものは「歓びの歌」だなと思ったんです。

田家:それがMummy-Dさんの言葉になり、サッシャさんの朗読になりという1曲になったと思っていいんでしょうね。

ミッキー:そうですね。最後に聴いたものだけだと、あの部分だけで単純にいいアレンジしてるじゃないですか。でも、1つの作品と世代と時代を超えた音楽の魂が繋いでいくものを感じられるような楽曲にしたいなと思って、最終的にはああいう形になったわけですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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