ミッキー吉野本人と語る、アルバム『Keep On Kickin' It』



田家:最後10曲目です。「NEVER GONE feat. 岡村靖幸」、新曲です。作詞がエルヴィス・ウッドストック、リリー・フランキーさん。作曲がミッキー吉野さんです。これはわりと早めに、亀田さんは「DEAD END」と同じときに送られてきたと言っていましたね。

ミッキー:当時新曲を何曲かインストでも書いたんですけど、この曲を書き始めたときにゴダイゴのギターの浅野孝已が亡くなって。

田家:2020年5月12日。

ミッキー:いつの間にか彼のことを思いつつ、曲を仕上げていきました。よく考えてみると、浅野と1番長い間演奏したし、一緒に長く旅もしたし、そういう仲間だったのでどうしても想いがいってしまった。この曲をやり始めたときにカップスのマモル・マヌーとか、ルイズルイス加部が亡くなっていって、そこからショーケンとかジョニー・野村さんとかいろいろな人を想い始めて。この曲でみんなに伝えたかったのは、生きている限り僕の心の中にみんな生きている。そういう曲じゃないかなと思います。

田家:岡村靖幸さんもミッキーさんがおっしゃった?

ミッキー:そうです。たまたまNHKの『SONGS』を観ていたんです。彼が出ていて、いやーこんな歌が上手い人がいるんだと。彼の存在を知らなかったんですけど、とにかく彼の歌を聴いていると人間の悲しみを知っている声に聴こえたんだよね。絶対この曲は彼に歌ってもらいたいと思って、亀田さんに話して実現してよかったです。

田家:詞はリリー・フランキーさんがお書きになっているわけですけど、全くお任せですか。

ミッキー:それは岡村さんサイドから作詞に関して、リリーさんがいいのではないかと言ってくれたんですね。僕も書いてたけど、詞が来てね。やっぱりよかったですね。

田家:作曲をしている曲の頻度みたいなものは以前とかなり変わったりしているんですか?

ミッキー:それはそうですね。昔みたいに仕事があるから書いていた時代じゃないから。

田家:締切があってじゃないですもんね。

ミッキー:今もなんかあれば書きますけど、自分から書こうと思う曲は少なくなるし、僕の場合必ず10年に1回ぐらい何十曲も書いて、それをその後に小出しにしてくわけじゃないけど(笑)。そういうパターンが多かったんですけど、この曲は今回のアルバムで1番好きな曲で、完成度が高い曲だなと思っています。

田家:新曲で終わっていることでキャリアをたどったということの現在という意味ができますもんね。

ミッキー:別にこれは20歳の頃の高望みしているような曲ではないじゃないですか。そのまま感じたまま書いている。ここに到達できている自分がうれしいですね。

NEVER GONE feat. 岡村靖幸 / ミッキー吉野

田家:アルバムでは全曲ピアノをお弾きになっているですもんね。このピアノはご自分でどう思われているんですか?

ミッキー:本当はもっと弾いちゃっていたんだけど、結局最後みなさんのオケを録ってくれた後にもう1回弾き直してよりシンプルになってますね。

田家:シンプルですけど、所謂どっぷり悲しいというピアノじゃないですもんね。

ミッキー:そういう意味では悲しいというより、さっき言ったように僕が生きている限り、みんなは永遠僕の心の中に生きている。そこですよね。

田家:ピアノは毎日お弾きになるんですか?

ミッキー:いやー昔ほどではないですね。

田家:気がついたらピアノの前に座ってるみたいな。

ミッキー:調子悪くなると、やっぱりピアノに行きますね。昔からピアノの前が自分の場所だと思っていて。楽しいときとか、うれしいときにろくな曲を書けないし、どこか自分の中で疑問とかおかしいとか、不安定なときに曲が書ける気がするなと思います。オルガンは官能的なものしか表現できないけれど、ピアノは本当に喜怒哀楽全部表現できるから。表現の手段だとしたらピアノが原点ですよね。

田家:さっきお名前が出ましたけど、マモル・マヌーさんとか、ルイズルイス加部さんとか、プロデューサー・ジョニー野村さんとか、浅野さんとかいろいろな方が亡くなっている中で残された人間の役割を考えたりされますか?

ミッキー:役割は楽しく生きていくことかな。毎日楽しく生きていくのが先に亡くなった人たちに対してかもしれないし。

田家:亡くなった人たちのことだとか、自分たちが生きてきた頃のことを伝えていきたい気持ちはまだおありになる?

ミッキー:タケカワともよく話すんですけど、新曲を発表するとかではなくて、過去にやったものをもう1回ゴダイゴが宣伝したいねという気持ちの方が強いかな。カップスもそうですね。今回のアルバムがそれを1番表しているから、役目とすればそんな感じですかね。Charからときどき電話かかってきて、「いろいろなことを知っているのは俺とあんただけだからさ」とか(笑)。そういう感じってありますよね。

田家:ありますよね。いっぱい語ってください。ありがとうございました。

ミッキー:ありがとうございました。


アルバム『Keep On Kickin’ It』ジャケット写真

Rolling Stone Japan 編集部

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