冒頭でも話したのですが、このラスト・ツアーのライヴアルバムは出ないんじゃないかと思っていたんです。普通、ライヴツアーの収録ってスケジュールが半分以上過ぎてから行われるもので、今回のラスト・ツアーは3分の1で図らずも中止になってしまった。誰もその時点ではこのままなくなってしまうとは思っていませんでしたからね。でも収録されていたというのが、謎だった。NHKホールではそういう気配がちょっとあったなと思ったんですけど、収録しているという話は全然聞いてなかったので、いつの音源なんだろうと思ったのですが、瀬尾さんが録っていたんですね。みゆきさんも知らなかったということが、瀬尾一三さんという存在がどういう役割を果たしているか、全てを物語っております。
私事になるのですが、このツアーを見届けさせてもらえないだろうかということで、ヤマハの方にお伺いを立てて了解をもらって同行していたんですね。ツアーが終わるまでに主要スタッフの話を聞いて、みゆきさんにとってコンサートツアーがどういうものなのか最後にまとめるつもりだったのですが、ほとんど聞けないまま終わってしまったんです。自分の中ではあのツアーは一度幕を閉じてしまっていたのですが、こういうアルバムが出てあらためてツアーはこうだったと話ができる。それが今月の特集になっているわけですね。コンサートを観た人しか知らない。チケットを取れなかった人、持っていても見ることができなかった人はどんなツアーだったか、知る術がなかったのですが、このライヴアルバムが出ることで、それが幻ではなくなった。そんな1ヶ月でもあるということです。こういうツアーだったということを話せるのがうれしいと思いながら、来週も迎えたいと思います。Rolling Stone Japan 編集部