エイドリアン・シャーウッドに学ぶレゲエ伝説、ホレス・アンディを輝かせたプロデュース術

レジェンドを輝かせるプロデュース術

―あなたはホレス・アンディだけでなく、プリンス・ファーライやリー・ペリーのようなレジェンドの作品も手掛けてきましたよね。

エイドリアン:プリンス・ファーライの最初のレコードは俺がリリースしたから、晩年になってレジェンドになったという感じだけどね(笑)。1983年に殺害されてしまったから。彼は一緒にキャリアをスタートしたという意味でも特別な存在だし、その声は本当に素晴らしくて、今でも心の中に生き続けている。彼の素晴らしい音楽は人々の中にも永遠に生き続けると思う。リー・ペリーは、俺の人生に最も影響を与えた人物のひとり。彼とはプライベートでも家族ぐるみの付き合いをしてきた。お互いの子ども同士も仲が良いし、彼の奥さんとも友だちなんだ。リー・ペリーやホレス・アンディのようなレジェンドと仕事をさせてもらったのは本当に名誉なことだ。もし13歳、14歳のレゲエファンだった頃の俺自身に、将来君は彼らと仕事をすることになるなんて言っても、絶対に信じて貰えないだろうね。夢が現実になったんだ。


On-U Soundの人気シリーズ最新作『Pay It All Back Vol. 8』(5月20日リリース)に収録される、リー・ペリーの未発表曲「The Many Names Of God」

―そんなレジェンドたちと仕事をすること、そこでプロデューサーがやるべきことは、いったいどんなことでしょうか?

エイドリアン:まずはじめに、俺が真剣に最高の作品を作るつもりだということを信じてもらって、信用を勝ち取ることだと思う。リーにしろホレスにしろ、リスペクトという言葉は使いたくないけど……ある意味、俺が彼らを決して急かしたりせず、じっくりと作品に向き合う姿勢を評価してくれたように思うよ。たかが数ポンドを節約するために、彼らに対するリスペクトを忘れなかったことに対してね。リーとは、とにかくたくさん話をして、笑い合って、いい時間を共有したことが大きかったね。彼は本当に楽しいユーモアの持ち主で、たくさん一緒に時間を過ごしたんだ。彼自身も、スキップ・マクドナルドやスタイル・スコットといったOn-U Soundファミリーとリラックスして付き合えていたんじゃないかな。リーも残念ながら亡くなってしまったけど、そういったミュージシャンたちのことが好きだったし、彼を取り巻く人々みんなのことを好きだったと思う。

あとはもう一つ、プロデューサーとしてやるべきなのは、とにかく雑音みたいなものを取り払うことだった。レゲエのレコードというのは、短い期間で慌てて作るようなものじゃない。ホレスにしてもそうだと思う。彼はこのアルバムのためにいくつかインタビューを受けているけど、ありがたいことにいつも「時間をじっくりかけて作ったから、とても良いものになった」って答えてくれている。嬉しいことだね。この歳になって、とにかく作品を作ってリリースすることだけを考えるのは意味がないから。自分の納得の行く基準を満たしたものだけを作りたいんだ。このアルバムは、クラシックであると同時に、とても素敵な隠し味もあって……アイヴァン・チェロマン・ハッセーのストリングスとか、そういったディテールが、アルバム全体の大きな炎の中の火の粉みたいに輝いているんだよ(笑)。

―今回はホレス・アンディに光を当てたわけですが、レゲエの歴史には他にも重要なレジェンドがたくさんいますよね。あなたがもっと注目されるべきだと思う存在は?

エイドリアン:レゲエの世界には、本当にすごいレジェンドがたくさんいて……俺もこれまでに仕事をしてきたビム・シャーマンとか。あとはボブ・アンディ、もちろんジョー・ヒッグスにボブ・マーリーに……あまり耳にしたことのないレゲエ・アーティストを挙げろと言われたら、永遠に挙げ続けるけど(笑)。ウィンストン・マカナフもそうだね。彼らは俺の血肉になっていると言っても過言じゃない。

―個人的に、一緒に作品づくりをしてみたいと思うレゲエ・アーティストはいますか?

エイドリアン:みんな歳を取ってしまって、今も変わらない歌声を持っている人はあまり残っていないからね。今でも大好きなのはバーニング・スピアーかな。あとはミスター・ウォブルズ(ジャー・ウォブルと思われる)とはレコードを作ってみたいね。

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Translated by Tomomi Hasegawa

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