吉田拓郎の音楽人生の締めくくり方、60代以降の楽曲とともに歩みを探る

前例のない音楽人生というのは、音楽活動だけではなくて、1人の人間としての波風、波乱に揉まれながら時を重ねてきてるわけですね。2003年、50代の終わりに肺がんが見つかりました。予想だにしなかった病気が襲ってきた。半年間の闘病を経てツアーに復帰します。そのツアーが2003年のツアー。TAKURO & his BIG GROUP with SEO、瀬尾一三さんと一緒に行ったツアーですね。2006年には、75年のつま恋、85年のつま恋に続いて、3回目のつま恋のイベント「吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006」が行われました。このときのファンが3万5000人かな。平均年齢は49歳だったんですよ。今は若者みたいなもんでしょう(笑)。当時49歳というのは大人。前例のない大人のフェスって言われたんですね。そういう意味では、年齢という部分でも、ずっと最前線にいたのが吉田拓郎というアーティストだったと言い切ってしまっていいと思います。還暦を迎えて最初のアルバムからお聴きいただきます。





2009年のアルバム『午前中に・・・』の中の「ガンバラナイけどいいでしょう」、「真夜中のタクシー」をお聴きいただきました。「ガンバラナイけどいいでしょう」は、当時の心境でしょうね。がんを克服して還暦を迎えてからの心境。世の中には頑張れない人がいるんだと、頑張らなくてもいいじゃないかというメッセージですね。「真夜中のタクシー」は、音楽の遊び。こんなに自由に曲を作って、こんなに自由に歌っている。この曲は傑作だと思ってるんですが、あまり評価されなかったみたいですね。

話がちょっと前後するんですけど、2006年のつま恋のときに一番思い出すことがありまして。最後に何の曲を歌うか、周りのスタッフも含めて、やっぱり「人間なんて」でしょうという声があったんです。でも拓郎さんはそれだけはしないと、ずっと言い続けたんですね。なぜかというと、お客さんが「人間なんて」を聴きたいと思ったら俺の負けだ、若い頃の再現じゃないんだこれは、若い頃の追体験ではないんだ、若い頃の俺をどこまで超えられるか。俺は今、「人間なんて」と戦ってるんだという話に感動した覚えがあります。大人のラブソングとは何か、その答えのような曲を聞いていただこうと思います。2012年8月発売、66歳のときのアルバム『午後の天気』から「慕情 」「清流 (父へ)」お聴きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

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