吉田拓郎の音楽人生の締めくくり方、60代以降の楽曲とともに歩みを探る

慕情 / 吉田拓郎



2012年8月に発売になったアルバム『午後の天気』から「慕情 」「清流 (父へ)」。2曲とも、あなたに向けて歌ってる曲。見えない敵と戦ってるという感じはありませんね。「慕情」は今を一緒に生きている人で、「清流 (父へ)」は元々94年の映像のために作られたんですね。『名前のない川~安曇野の四季~』という綺麗な安曇野の風景が収められた映像のために書かれた曲で、その時は「清流」というタイトルだけで、 (父へ) というサブタイトルはついてなかったんですね。『午後の天気』に入ったときに、この (父へ) というサブタイトルがついて、そういう歌だったんだって改めて思ったという曲ですね。

72年、大ヒットしたシングル『旅の宿』のB面に「おやじの唄」という歌があるんです。これは当時20代前半の歌ですから、「死んで初めて僕の胸を熱くさせてくれましたよ」という、ちょっと反抗的な気分が残りながら親父が亡くなってしまった、複雑な気分を歌ってる歌だった。言ってみれば生意気な若者にとっての父親の歌だったんですね。「清流 (父へ)」は、最初で最後でしょうね。父上に許しを請う歌ですね。これは (父へ) というサブタイトルがついたことで聞こえ方がかなり変わりました。そういう意味では、いつの時代でも、そのときに最初で最後の曲を書き続けてきたのが拓郎さんだったんではないかと思ったりもします。68歳のときのアルバム『AGAIN』からお聞きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

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