オジー・オズボーン「地獄からの生還」 過去・現在・未来を大いに語る

 
妻シャロンとの出会い、ソロ・キャリアの成功

「ウィンストン・チャーチルがここに滞在してたって知ってる?」
スイートの壁を飾る金の葉をいじりながら、オジーは訊く。1898年に創業したクラリッジス・ホテルは今日でもトップハットを被った重いコートの従業員が車の扉を開けてくれるような場所だ。「シャロンが気に入っているんだよ」彼は指摘する。

最近の手術を経て、オジーのスタミナは最低レベルであり、奥方に「重荷になっていたら申し訳ない」と言ったほどだった。彼女は馬鹿なことを言うなと答えた。
「俺の家族はファッキン最高だよ。子供も嫁も応援してくれるし忍耐強いんだ」とオジーは言うが、それは彼の友人も同様だ。

「頻繁に連絡を取っているよ」と昨年語っていたのは、ロサンゼルスにあるオジー宅から何千マイルも離れたイギリスに住むトニー・アイオミだ。「直接話すことは滅多にないんだ。オジーも俺も、電話では使い物にならないからね。奴は午前2時に電話してきて、俺が『オジー、今夜中の2時なんだけど』と言うと『あ、ゴメン。判った。じゃあな』って感じだった。イギリスとの時差のことが頭から消え去っているんだ。そんな時間に電話が鳴ると『誰かが亡くなったか大変な事故に遭った』と考えてしまうだろ? だから今ではメールで連絡を取るようにしている」

健康を回復させるのと同時に、オジーは自信を取り戻そうとしていた。彼はシャロンにこう言うことがあった。「俺の人生ちゃんと出来たことなんて、ステージで歌うぐらいだ」

「そんなことないって言ってあげるのよ」彼女は言う。「彼はさまざまな苦闘をして、それがすべて人目に晒されてきた。でもそれだけじゃなくて、彼は自分に厳しすぎるのよ」



オジーがシャロンと出会ったのは70年代半ば、彼女の父親ドン・アーデンがブラック・サバスのマネージャーになったときだった。「シャロンに微笑んだら、奇妙な表情をしていた」オジーは2009年の回想録『アイ・アム・オジー』で振り返っている、「おそらく俺の頭がイカレていると思ったんだろう。パジャマの上を着て裸足だったし......」

「オジーはきれいな顔をしていて、人間として他の誰とも違っていると思っていた。でも少し不安だったのよ」彼女は当時を振り返って言う。「弁護士やレコード会社の人とデートしたことはあったけど、彼はまるで違っていた。そんな人たちはどうしようもなく退屈だったのよ」

1979年、使い物にならないほどに酒浸りになってブラック・サバスを解雇になったオジーの元をシャロンが訪れたが、彼は退屈とは程遠い存在だった。
「とにかくムチャクチャになりたかったんだ」オジーは言う。「もう終わりだからってね」
だが、彼の中に光り輝くものを見た彼女はソロ・キャリアを始動させることを勧め、マネージャーを務めることになる。当時オジーはまだ最初の妻セルマと婚姻関係にあり、3人の子供がいたが、シャロンとオジーは恋に落ちたのだった。


ランディ・ローズと共に(Photo by CHRIS WALTER/WIREIMAGE)

オジーはバック・バンドを雇うが、その主要メンバーにランディ・ローズがいた。元クワイエット・ライオットのギタリストである彼はブラック・サバスよりもベートーヴェンから影響を受けており、グラムなルックスも含め、ヘヴィ・メタルに一風異なったアプローチを取り入れていた。「Crazy Train」「Mr. Crowley」は急激な展開の疑似ゴシック・ナンバーで、一緒に歌える強力なメロディと息を呑むギター・ソロを持ち備えていた。
「オジーの声は神からの贈り物だよ」と語るのはメタリカのベーシストであり、『Patient Number 9』でプレイ、共作も行っているロバート・トゥルヒーヨだ。「とにかく美しいんだ。魂、脂っこさ、根性......苦しそうに歌う箇所もまた、彼をスペシャルな存在にしているんだよ」
ソロ・アーティストとしてデビューを果たすにあたって、シャロンはオジーにより成功しているアーティストのオープニング・アクトを務めさせるのでなく、小規模の会場でもヘッドライナーとして出演させることで、彼をより短い期間でトップに返り咲かせることに成功したのだった。

セルマとの離婚が成立すると、オジーとシャロンは2人のビジネス関係とロマンスをどのように両立させるかを考えることになった。
「オジーは言っていたわ。『テレビのインタビューとかいろんなことをやらせるのは俺を愛してるから? それともマネージャーだから?』ってね」シャロンは思い出す。「私が『自分のプロモーションは自分でやらなくちゃ』と言うと『それは妻としての意見? それともマネージャーとして?』とかね。『両方よ』と答えていたわ」

Translated by Tomoyuki Yamazaki

 
 
 
 

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