オジー・オズボーン「地獄からの生還」 過去・現在・未来を大いに語る

 
オジーはこれからも生き続ける

我々の会話の中で、オジーは亡くなってしまった友人や仲間たちに言及するが、その少なくない割合がアルコールによるものだ。レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムは一度シャンパン12本とスコッチ大ビン2本の速飲みレースでオジーに挑戦してきたという。「『くたばりやがれ』って言ってやったよ」と彼は笑う(ボーナムは4本のボトルを飲み干して嘔吐した)。
レミーは1カ月以上毎日バーボンのボトル1本を空けて、オジーを驚嘆させた。モーターヘッドのフロントマンの言い分は「いろんなバーボンを1本ずつ味見する」というものだった。

多くの友人たちが去っていったのに自分だけが生き残った理由は、オジーにとって説明出来るものではない。
「オジーは過去50年を代表するアーティスト達と交流し、仕事をしてきたけど、ほとんどが亡くなってしまったんだ」ビリー・モリスンは語る。「彼はそこに座って『でも俺は生きてるんだよなあ』と思い耽るんだ」
一度オジーは医師からの指示で、これまでやってきたドラッグとアルコールの種類と量をリストアップしたことがあるが、それを見て「何故あなたは生きているんですか?」と訊かれたという。オジーはその問いに答えることが出来なかったし、今でも答えることが出来ない。

シャロンによると、オジーは9年間アルコールに触れていないそうだ。オジーはその期間を数えていないし、AA(訳注:アルコール依存症者の自助グループ)流の記録を取るやり方を面倒臭がっている。
「もし脚を1本切断することになっても、残りの一生ずっと部屋の中でそのことについて話していたくはないんだ」彼は言う。「それに順応して、前に進んでいきたいんだよ」

「考えることもないんだ」とオジーは語る。「もう飲まないし、酒が頭に浮かぶこともない。AAから学んだことは『1杯は多すぎる。10杯は足りない』ということだ」(オジーは1988年に「Demon Alcohol」の歌詞でこのフレーズを使っているため、聞き覚えがある人もいるだろう)

「彼が酒を飲み始めたのは自信が持てなくて、飲めばそれから逃れられるからだった」シャロンが言う。「飲めば自信を持てたのよ。でも、それは自分に返ってくる。病気が進行するにつれ、誰もが酷い状況に陥る。ロクでもないことをしでかして、自分の人生を台無しにするのよ」


Photo by Ross Halfin

オジーが言うには、近年家に閉じこもりがちな理由はあまりに有名になって、駐車場いっぱいの群衆が集まってしまうからではなく、単にもう楽しくないからだ。大抵彼は自宅のテレビでヒストリー・チャンネルを見るか、敷地内を散歩するかしている。
「ショービジネスの業界にはあまり友達がいないんだ」オジーは言う。「自分のことで忙しいんだよ。みんなが集まる場所に行くのも好きじゃない。酒も飲まないし、タバコも吸わない。もうドラッグもやらないし、クソ退屈な人間だよ」

60歳ぐらいの頃、オジーは自動車免許を取ることを決意、フェラーリのコンバーチブル車を買った。ビリー・モリスンの運転でドライブに出かけた彼は高速101号線を飛ばしていたが、ふとコンバーチブルの屋根を閉じようとする。まるでパラシュートのように風を受けてフェラーリは6車線を横滑りして、ビリーが絶叫する中、なんとか付近のガソリンスタンドに辿り着いてシャロンに電話。車を壊してしまったことを告げた。
「オジーと友達でいるのはどんな感じかって、そんな感じだよ」ビリーは笑いながら話す。
「その場には人もいたけど、まさかオジーが76(セブンティシックス)のガソリンスタンドで困った顔をして頭をかいているなんて思わなかったみたいだ。放っておいてくれたよ」

インタビューは3時間目に突入し、オジーはソファで枕を弄びながら、自分がずいぶん話したことに気付く。「これはもう記事ってレベルじゃないだろ」彼は言う。「百科事典を書いてるんじゃないか?」

その健康状態に関する報道を受けて、多くの人がオジーについて知りたがっていると説明すると、彼は「いろんなクソな目に遭ったにしては良くやっている方だよ」と言う。「1年かそこいら前だったら『ダメだこりゃ』って思っただろう。最初の手術で酷い目に遭って、動くことも出来なかったからね」

「裁判を起こす予定よ」シャロンは後に語った。「他の人たちに同じ目に遭って欲しくないからね。まったく悪夢だった。でも私たちはここにいるし、人生はずっと良くなったわ」

オジーはソファで身を乗り出して髪を垂らし、まるでヘッドバンギングを始めるような姿勢を取るが、その代わり後ろ髪をかき上げ、首の付け根にある1インチ半の傷跡を見せる。「しばらくは最悪の状態だったよ」彼は真剣な表情で語る。ただ、彼の人生はコントロール可能のようだ。矯正手術は今のところ成功したように見えるし、パーキンソン病も落ち着いている。1日3回呑んでいる薬のおかげで、前方に腕を出して静止させることも出来る。あとは本格的なライブを出来るように体調を整えるだけだ。

ライブのステージに復帰してから、まだオジーが成し遂げるべきことはあるだろうか?
「爵位、だな」真面目くさった顔で言った後、オジーは爆笑する。「そんなものを授かることはないだろうな、クソくらえだよ」

オジーは立ち上がり、暗闇に消えていく。実際にはベッドルームでもうひと休みするのだが、別れを告げる前、筆者は彼に尋ねてみる。健康問題のことで自己憐憫に陥ることはあるか、それともすべてを受け入れて進んでいくか?
「みんなと変わらないよ」オジーは言う。「ただ死ぬのを拒否するだけだ」

From Rolling Stone US.



オジー・オズボーン
『Patient Number 9』
発売中
特設サイト(otonano):https://www.110107.com/ozzy_pn9/


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・大型ソフトパック仕様
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・高品質Blu-spec CD2仕様
・解説・歌詞・対訳付


●通常盤
・ジュエル・ケース仕様
・高品質Blu-spec CD2仕様 
・解説・歌詞・対訳付

Translated by Tomoyuki Yamazaki

 
 
 
 

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