このバンドは「かっこよければいい」
―GOTOさんの話にもあったように、礼賛ではサーヤさんが歌メロと歌詞を担当しているわけですが、これまで曲作りの経験はあったんですか?
サーヤ:「nana」っていうアプリを使って、フリーのトラックでラップをしたり、インスタライブでちょっとやったりはしてたんですけど、本格的にやるのは初めてです。
―バンドで歌った経験は?
サーヤ:ないです。いきなりバンドやるってなって、こんなすごい面子の中でやれるって、だいぶ前世で徳を積んだなって感じです(笑)。
川谷:最初みんなでスタジオに入って、お酒飲みながらセッションみたいなことをしてたら、サーヤちゃんから「愚弄」のメロディと歌詞が出てきて、それを聴いたときに、みんな「いいね」ってなって、そこからですね。
サーヤ:知識ゼロの状態で、いきなりプロの人たちがいるスタジオに入れられて、頭おかしくなりそうで(笑)。それで「お願いだから、お酒だけ飲ませてください」って、近くのコンビニに行かせてもらって、氷結かなんかの超強いやつを買って。
川谷:僕らは普段お酒飲んで演奏することないんですよ。
課長:久々だったなあ。
サーヤ:「酒飲んでなかったらもう一曲行けたんだけど」って言ってましたよね(笑)。
―川谷さんは自分が所属する歌があるバンドで詞曲を担当しないのは初めてですよね。
川谷:かなり新鮮だし、解放感があります。責任感が3~5割くらい減るので(笑)。
―曲作りはセッションをしたり、デモをデータでやり取りしたりだと思うんですけど、方向性はどのように決めているのでしょうか?リファレンスを共有したりもしてますか?
川谷:サーヤちゃんが「こういうテーマで書きたい」とか「こういう曲にしたい」みたいな感じでリファレンスを送ってくれることもあって、そこから作ることも多いです。大体やってるうちに最初のリファレンスからはずれていくんですけど、でもそれが面白くて。
―サーヤさんがヒップホップのファンだということはこれまでもいろんなところでお話しされてると思うのですが、あらためて、サーヤさんの音楽的なルーツであり、礼賛でどんな音楽をやりたいと思ったかについて聞かせてもらえますか?
サーヤ:ヒップホップに限らず、いろんなジャンルが好きなので、全部いいとこ取りできたらいいなと思うんですけど……女性でラップするってなると、あんまり種類がないじゃないですか? それが結構悲しいなと思ってて、どうしても「強い女性」みたいなイメージがあると思うんですけど、私はそこは目指してなくて。なので、いわゆる「フィメールラッパー」みたいな感じではないというか、男女問わずラッパーはいろんな人を聴きますし、K-POPもJ-POPもアニソンも演歌も何でも聴くので、そういう中から自分が気持ちいいと思う雰囲気が抽出できればいいかなっていうのがあります。
―例えば、今だとAwichだったり、川谷さんともジェニーハイで共演をしているちゃんみなだったりが日本における新たなフィメールラッパー像を作っていると思うんですけど、そこを目指すのではなく、自分なりのアーティスト像を目指したいと。
サーヤ:Awichさんとかめちゃくちゃ好きでずっと聴いてるんですけど、「ああなりたい」っていう感じではなくて、「好きな歌手の一人」っていう感じなんですよね。たぶん今そこら辺を歩いてる人に「ラップしてます」って言ったら、「え、バトル?」みたいな感じだと思うんですけど、そっちに凝り固まらずに、自由にいろいろできたらなって。
―海外のラッパーでは誰がお好きですか? それこそ海外ではたくさんのフィメールラッパーが活躍していて、「強い女性像」を打ち出しているわけですが。
サーヤ:Logicが好きでずっと聴いてました。ただ、あんまりバックボーンは見てないというか、基本的に曲がかっこいいかどうかしか見てないんですよね。私は活動家みたいなことはしたくないし、やってる音楽が刺さればそれが正解だと思っていて。「平等に見てくれ」みたいな歌を歌ってもなって思うので、とにかくやりたいことをやるっていう感じでいたいですね。
川谷:僕サーヤちゃんのこういうところが好きなんですよね。メンバーみんなそうっていうか、思想とかメッセージよりも先に、ホントに音楽がかっこよければそれでいいと思っていて。まず音楽がかっこよくて、それにメッセージが付随するんだったらいいと思うんですけど、今ってガワの方が表に出ちゃったりするじゃないですか?
サーヤ:アナザーストーリーとか(笑)。
川谷:僕それに対してはあんまり何も言えないですけど(笑)、でも音楽もガワの方が表に出過ぎてる気がする。このバンドはかっこよければいい、楽しければいいっていう、そういうバンドでありたいなって。
サーヤ:それが一番いいですね。