マネスキンが語る挑戦と現在地、『RUSH!』で更新した4人のロックンロール

 
曲作りの背景、アメリカとウクライナへの想い

―月並みですが、これだけの成功を収めたあとで、ファンの期待に応えなければというプレッシャーは感じましたか?また、以前より遥かに多くの人が耳にするだろうことを踏まえて、言葉の選び方とか、リリシストとしてのアプローチに変化はありましたか?

ダミアーノ:うん。今回はヤバそうな表現をたくさんカットしなくちゃならなかった……っていうのは冗談で、あんまりそういうことは考えなかったよ。曲を作っている時には、完成後にその曲がどういう人に届くのかとか、どう受け止められるのかとか、そういうことは気にしない。最高の曲を作ることだけを頭に置いているからね。ほかのことはどうだっていいよ。

トーマス:(メタリカの曲を真似て歌う)“Nothing else matters……”か。

ダミアーノ:(笑)マジな話、重要なのは曲であって、ほかのことはなるようにしかならない。曲そのものがボスなんだよ。以前より大勢の人が聴いてくれるってことは、単にうれしいっていうだけだよね。というか、聴いてくれるよう願っているけど(笑)。


Photo by Ilaria Ieie

―ツアーの影響はどうでしょう? どんどんヴェニューが大きくなって、オーディエンスの数も増えたわけですし、ライブで映える曲を意識して作ったんじゃないかと感じたんですが。

イーサン:それは間違いないね。

ダミアーノ:そういう考えは確かに頭にあった。ただそれは、今までも常に考えてきたことなんだよね。僕らは最初から、ライブこそ自分たちが本領を発揮できる場所だと捉えていたし、ここにきて数千人どころかそれ以上の数のオーディエンスの前でプレイするようになって、よりいっそう強く意識するようになったというだけで。

イーサン:うん。新しい曲を作る時はいつも、「このパートは大規模なショウにぴったりだな」とか考えるからね。ツアー中に僕らがたくさんの曲を書くってこととも関係しているかもしれない。異なる町を訪れて、異なる人たちの前でプレイすることで、すごくインスパイアされるから。

ダミアーノ:ライブでは実際、常に曲の解釈を変えているよ。尺を延ばしたり、異なるアレンジを加えたりして。ライブでどんな曲が映えるのかちゃんと心得ているから、スタジオで曲を書いている段階からすでに、「ライブでやる時にはこのパートを2倍の長さにして、ここはもうちょっとダイナミックにしよう」とかアイデアを練っているんだよ。そういう風に考えながら曲を作るのが僕らにはすごく自然なことで、曲自身が僕らに「こうしたほうがいいよ」って教えてくれるような気がするんだ。

イーサン:だからこそ常に、ベース、ドラム、ギター、ボーカルだけで曲を構成することを重視しているんだよ。そうすればライブでもまったく同じ要素を使って、4人だけで、同じ熱量で色んな試みができる。



―アルバムの歌詞は、ツアー中に起きたことや、あなたたちが手にした名声をテーマにしていることが多くて、過去2年間の体験からインスピレーションを得たようですね。曲を書くことで、自分たちの身に起きたことを整理したようなところもあるんでしょうか?

ダミアーノ:僕の場合は曲を作ることが、自分が何を感じているのか、何を考えているのか、理解する手助けになるんだ。何しろ僕らの人生は猛スピードで進んでいたから、立ち止まって「今の僕は何を感じているんだろう」とか、「どういう生き方をしているんだろう」とか、考える暇がなかったんだよね。曲作りをしていると、自然にそれが見えてくる。

―「GOSSIP」や「SUPERMODEL」では、一見グラマラスだけど本質が伴わないアメリカのセレブリティ・カルチャーを痛烈に評しているようです。ビートルズの時代から、海外のバンドにとってアメリカでブレイクすることは大きな夢だったわけですが、あなたたちにとってアメリカとはどんな場所でしょう?

ダミアーノ:まず、「GOSSIP」に含まれている批判的な部分って、何もアメリカだけじゃなくて、世界中にあてはまるんだよね。今や世界を覆い尽くしているSNSカルチャーについて語っている。もちろん僕らにとってアメリカは辿り着きたいゴールであり、制覇したいマーケットでもあり、アメリカでポジションを確立したい。ただその一方で、僕ら自身のカルチャーだったり、アティチュードや生き方みたいなものを失いたくないという気持ちがあってね。だから、いつか全米制覇を達成するにしても、自分たちのやり方を貫きたいんだ。

―他方で『GASOLINE』は、ウクライナ戦争へのリアクションとして生まれた曲です。バンドが一定の影響力を持つに至った今、こういう大きな事件が起きた時には明確にメッセージを発信する責任を感じますか?

ダミアーノ:っていうか、僕らだけじゃなくて誰もが責任を負っていると思うよ。誰だって何かしら、小さな貢献ができるんじゃないかな。もちろんバンドとして影響力を得たからには、それが、自分たちがやるべき正しいことだと感じた時には、何でも積極的に実践したい。責任を負っているからやるというより、自分たちがそう望んでやっているというのが正しいね。


Translated by Yuriko Banno

 
 
 
 

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