クーラ・シェイカーが語る新作の展望、日本と家族にまつわる話、スピリチュアルであること

 
自分の子供にまつわる話、スピリチュアルであること

―ちなみに、若手のミュージシャンで仲がいい人たちは誰かいますか?

クリスピアン:息子たち(笑)。アロンザはベルギーの若いバンドをプロデュースしているよ。

アロンザ:うん、ザ・スタンフォーズという、ブリティッシュ・ロックに強い影響を受けたバンドなんだ。彼らはまだ20代だけど、ビートルズやガレージ・ロック、ザ・ジャムにも影響されている。



―ジェイは数多くのセッションをこなしてきたので、若いミュージシャンの友達も多いのでは?

ジェイ:うーん……仲がいい若手は、自分の子供かな(笑)。

―今では3人とも父親なわけですが、子供ができてから自分の中でどんな変化がありましたか?

クリスピアン:子供たちを見ていると、まるで鏡を見ているようだね。良いところも悪いところも、不思議に自分と似てきてしまって。

アロンザ:本当に鏡を見ているみたいだ。子供たちが何かやらかして叱るときは、「俺と同じようなことをするんじゃない!」と言うことが多いよ(笑)。

クリスピアン:ジェイの息子と会うのは今回が久々だったんだけど、いつの間にか父親そっくりになっててさ。髪型から何からまるっきりジェイそのものなんで驚いたよ。

―しかもお子さんたちは、それぞれ音楽をやっているそうですね。特にそういう道をすすめた訳でもなく、自然とそうなったんでしょうか?

クリスピアン:避けられなかったと思う。皆、音楽に囲まれて育ってきたからね。僕も父の後を追うつもりはなかったけれど、映画の世界を横目で見ながら育ったから、気がつくと自分でも映画を作るようになっていた。環境が及ぼす影響は大きいよ。

アロンザ:うちの子たちは今どきのエレクトロニックな曲も聴くけど、自分が聴くようなタイプのロックも聴いている。こっちから無理強いして古い音楽を聴かせていたら、反抗して聴かなかったかもしれないな。クリスピアンの子たちは音楽の趣味がいいよね。

クリスピアン:うちの子たちはホームスクールで殻に閉じ込められているから、ラジオもYouTubeも聴けないんだよ。それに友達もいない(笑)。

―お子さんたちから何かアドバイスされたりもしますか?

クリスピアン:それはないな。ただ、お互いに聴かせ合ったりはしている。家族が最初のオーディエンスになってくれる、という点では参考になるね。僕らが2ndアルバム『Peasants, Pigs & Astronauts』(1999年)をレコーディングしたときは、プロデューサーのボブ・エズリンと殻の中に閉じこもって、その世界にだけ集中して作り上げた。良いアルバムができたけれど、完成する前にオーディエンスがどう感じるか想像して、また違う選択肢を考えてみてもよかったと今は思う。他の人の視点、というのは大事だよ。

―ちなみに、最近は主にどんな曲を好んで聴いてるんでしょう?

ジェイ:ツアー中はプレイするのに忙しくて、無音を好んで聴いているかな(笑)。相変わらず、昔から同じものを聴いている気がする。ビートルズ、ストーンズ、その他もろもろ。

アロンザ:ツアーの移動中は、ドラマーのポール(・ウィンターハート)が選んだ曲をよく聴いていて、アフロビートをたっぷり聴いたよ。クレイジーで刺激的な音楽だね。


ポール・ウィンターハート(Photo by Kazumichi Kokei)

クリスピアン:うちの子供たちが作ったプレイリストを見てみると、大部分はオールドスクールなんだ。80s、70s、60sがメインで、彼らはリアルタイムの音楽に興味を持っていない。音楽が持つ危険さやエッジがどこかで失われてしまったと感じるから、ヒップホップにせよロックにせよカントリーにせよ、彼らは自然と古いものを選んで聴くみたいだ。

飛行機の中で見かけた若い女の子は、スマートフォンで聴いている音楽の80%ぐらいが古い音楽だった。テレビやなんかで気に入った曲をShazamで調べて、似たような曲でプレイリストを作る……という行動がループしてるんだろう。そうやって若い子たちがフリートウッド・マックやブラック・サバスなんかを見つけてどんどん聴いてくれるのは結構なことだし、ぶっちゃけ僕らのようなバンドにとって良いことだけれど(笑)。これって音楽産業が新人開発、人材育成を怠ってきたひとつの結果なわけで、代償は大きいよね。

そんなことがいつまでも続くわけはなくて、そろそろ音楽はもう一度大きな爆発を起こすんじゃないかな。旧来の音楽産業はすっかり死んでしまったけど、また新しい爆発が起こるタイミングなんじゃないかと最近は感じてるよ。インターネットやコミュニティを通じて、結構すぐに……多分今年、何かが起きそうな気がする。

―状況は90年代の音楽シーンとは全然違うけれど、クーラ・シェイカーがデビューしたときも、既存のシーンをひっくり返してやる、という気概を感じました。

クリスピアン:他のバンドと僕らが大きく違っていたのは、多くのバンドがバーチャルな感覚でロックをやっていたことだ。僕らがデビューしたとき、スピリチュアルなバンドであるという姿勢を打ち出したら、最初はジョークだと思われて面白がられた。そして僕らが真剣にそういうバンドであるとわかったら、人々は途端にめちゃくちゃ怒り始めた(笑)。バーチャルなロックの世界、決まりごと……そういうものとは異質だったから。

スピリチュアルであることは僕らにとってとても重要で、音楽を聴くことでハッピーになれるし、それによって何かが自分にもたらされ、魂を自由にすることができる。自由な魂……それこそが、今人々が求めていることだと思うし、さっき言ったように音楽がもう一度爆発するのではと予感していることにも繋がってくる。


クリスピアン・ミルズ(Photo by Kazumichi Kokei)

―何度も来ている日本ですが、この国での想い出や、接した人々とのエピソードがあったら聞かせてください。

クリスピアン:大昔のことだけど、ツアーで東京に来たとき、かなり疲れ果てていてね。ちょっと公園に行って、タバコでも喫ってのんびり休みたいと思ったので、レコード会社の人にそう言ったんだ。彼らはピカピカと輝く寺院に連れて行ってくれたんだけど、芝生に入って休もうとしたらそこは立ち入り禁止で、寝転ぶこともできなくて(笑)。あれはおかしかったな。

日本はホームのように思っている。ファンの人たちとも長年にわたって密な関係を持ち続けてこれたと感じているよ。ヨーロッパや他の国とも違う、特別な関係を築くことができたと実感しているし、ここでプレイできるのは僕らにとって本当に意味があることなんだ。





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Translated by Sachiko Yasue

 
 
 
 

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