Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司が語る、踊らせる「歌詞」の作り方

あえてちょっとふざけた歌詞も書きます (三原)

ー今回の対談では歌詞をテーマにお話を伺いたいんですけど、両者ともに「踊る」とか「ダンス」は大きな共通項ですよね。まずは踊ることへの考え方を聞かせてください。

熊木 僕は音楽で自然に体が動いて踊るのが昔から本当に好きで。日本でも例えばYOUR SONG IS GOODのように非常にいいダンス要素を持っているバンドと、それに共鳴しているお客さんがいたり、海外でも音楽フェスに行ってみんなで踊って楽しいって瞬間があったりして。それこそ、ダンスミュージックを知らない人にも、もっとカジュアルな形で踊るって行為の楽しさ、気持ちよさ、泣ける要素とかも全部詰め込んで伝えて人生ワクワクしたいよねというところが僕の「踊る」という言葉に込められている感じですね。肉体的に踊る瞬間の気持ち・感情をそのままお客さんが出力するのが僕の理想にある。それをUKのダンスミュージックだったりR&B、ヒップポップをごちゃ混ぜにして出せないかという部分が僕の原点にあると思います。

三原 うちはメンバーが元々ダンスミュージックや昔のブラックミュージックがすごく好きで。ジャンル問わず踊れて気持ちいい音楽が好きなんです。なにより踊るって天気が悪くても楽しいじゃないですか?(笑)

一同 (笑)

三原 そういう無敵で完璧なポジティブな気がしていて。本能的にみんなが求めちゃうというか。音を鳴らしてみんなを楽しませるって表現をやっている以上は、自分たちも感じたことのないダンスミュージックを作って、フロアでみんなで踊りたい。言葉が違うだけで、熊木さんと同じ解釈ですね。

熊木 踊るということに対して、能動的な気持ちよさだったり、自分をアップリフトしてくれる感覚がちゃんとあって。サウンドを聴いても、歌詞の置き方や譜割を見ても、ここは絶対気持ちいいからやっているな、というのがすごくわかりますし、そこでシナジーというか、僕らと似ている感覚を感じることが多いです。

ーダンスミュージックにおける歌詞や言葉に関してはどう考えていますか。

熊木 康司さんの言葉の選び方って、すごくおもしろいなと思って。すごく享楽的な選び方なんですけど、ちゃんと頭に入ってくるタイプの言葉を使っている。

三原 俺もLucky Kilimanjaroの楽曲を聴いた時、1つの言葉の中にもいろいろな色を持っていると感じました。今回のアルバムも、根本的なLucky Kilimanjaroとしての柱はずっとあるけど、表現やサウンドに対しての変化があるからこそ歌詞の聞こえ方の変化もしていっているんだろうなと感じて。メロディーとか楽器、サウンド感も全部込みで1つの音楽って印象が強いから、すごく美しいし、歌詞と切り離せない感じがするんです。そういう意味で、歌詞にすごくこだわっているのを感じました。

熊木 そういう要素はすごく大事にしているので嬉しいです。自分の声と歌詞、サウンド、コンセプトがすっと入ってくる上で踊れるようにしたくて。

三原 フレデリックも、サウンドと歌詞が一緒に出てくることが多いです。

熊木 曲を聴いていて、その感じがすごくしました。

三原 そのリズムに当てはまるワードが自分の中で絶対的にあって。それを組み立てていく感じ。僕自身、歌詞の中で大事にしていることの1つはリズムの気持ちよさで。それがなかったら歌詞が入ってこないから、あえて単調というか、ちょっとふざけた歌詞も書きます。それが逆に伝わりやすかったり、みんなの耳に残りやすかったりすることがある。そういうこだわりは考えたりしています。音色とか全部やっているんでしょ?

熊木 基本的なことはほぼ全てやっています。ほぼプロデューサーみたいな。

三原 サウンドもめっちゃいいですよね。Boiler Roomとか毎日チェックしている感じがサウンドからして。最近のダンスミュージックをすごい勉強というか、ほんまに好きなんやなってことが音からわかる。

熊木 最近は特にUKのダンスミュージックが好きで聴いていて。そこからすごく影響を受けています。フレデリックは、編曲段階からある程度もう組みあがっているんですか?

三原 曲それぞれって感じですね。デモのまま完成するような楽曲もあれば、完全に別曲みたいになる曲もあったりするので。そこはメンバーと話しながら作り上げていきます。

熊木 歌詞がテーマで音ネタの話をするのもあれですけど、フレデリックはシンセメンバーがいないのにすべての音がシンセ的なんですよね。シンセから逆算してギターにしたような考え方がされていたり、アルペジエーターの使い方だったり、ドラムマシーンのサウンドの選び方、クラップの重ね方とかも、ダンスミュージックの人が作るロックだなと思って。

三原 多分、そこらへんの話、めっちゃ長なります(笑)。

熊木 そう、僕もしたかったです(笑)。


熊木幸丸(Photo by Mitsuru Nishimura)
Lucky Kilimanjaroのボーカル。「世界中の毎日をおどらせる」 をテーマに、ギターの松崎浩二、ベースの山浦聖司、シンセサイザーの大瀧真央、ドラムの柴田昌輝、パーカッションのラミとともにバンド活動中。2018年、EP『HUG』でメジャーデビュー。作詞作曲を手がける熊木の多作ぶりの他、作品ごとにクリエイティビティとキャパシティを広げていく豊かな音楽性が特徴。4thアルバム『Kimochy Season』を4月5日にリリースした。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE