Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司が語る、踊らせる「歌詞」の作り方

スピード感があるけど破綻してない嫉妬しましたね (熊木)

熊木 僕は最終的に本当に気持ちいい言葉を選んでいて。それは死んでいない言葉というか、動いている言葉、意味が踊っている言葉を選んでいます。康司さんも、ある種の快楽性をすごく大事にしているのかなと思って。メロディとは別に、言葉自体が気持ちいいものを選びたい欲求はありますか?

三原 めちゃくちゃその欲求は強いです(笑)。感覚的に絶対にこれ!って選び方が自然と自分の中にあって。めっちゃ受け取ってもらえていると思って嬉しかったし、生き生きしている言葉はすごく考えています。今回はミニアルバムを制作してからリリースまで月日がそんなに経っていなくて。全国ツアーもこれからファイナルで、ツアーを回りながら考えていたのもあったから、今、本当に新鮮な言葉な感覚がしていて。

熊木  言葉が持っているスピード感ってそういうところから来ていると思うんです。ツアー中に移動しながら作ったり考えたスピード感みたいなものが入っています。そのスピード感と、フレデリックの音楽性がマッチしているのがすごい。

三原 それこそ今のバンドの姿勢とちゃんとリンクしているからこそ、言葉が生き生きしてくるとも思うし、自分たちでもその実感があるので嬉しいですね。僕からの質問なんやけど、曲数はめちゃくちゃ書いている?

熊木 僕の場合、まずワンループのセッションをするというか、取っかかりを探そうみたいなことが多いです。いくつかサウンドデザインがあって、自分の中で合ったものがくっつけばいいなと思いながらセッションしていくんです。1ループを1曲とするなら、1日5、6曲絶対に作る。これだ!って思うセッションと、これだ!と思う言葉の融合点をひたすら探している感じですね。

三原 1曲に仕上げる時の方がやっぱり時間がかかる?

熊木 僕はゼロイチを作るときが1番時間がかかりますね。1曲にするのは1日あれば作れるタイプなんですけど、ゼロイチは1週間全く進まないこともあるくらいです。

三原 じゃあ、今作ができるまですごい曲数を作って頑張ったんだね。

ー作品を作るにあたって、言葉のインプットでピンときたものや影響を受けたものがあったら教えてもらえますか?

熊木 僕は本を読むのが好きなんですけど、フェルナンド・ペソアという詩人の詩集『ポルトガルの海』を読んだら、太陽の美しさだったりをシンプルな言葉で取り出していて。そのテクニカルじゃなさが逆に超かっこいいなと感じたんです。前作『TOUGH PLAY』は、割と自分のテクニカルな部分が出たアルバムで。でも踊るという感情的な部分で、整理する前に踊るって反応が大事だよなと思うこともあって、もっと速度の速い言葉を使いたかったんです。自分の頭から出た言葉で歌って、シンプルだけどいいなと思ってできたのが「ファジーサマー」だったりするので、そこは今回の作品の歌詞の書き方のベースにちょっとあるかもしれないです。



ー今回のアルバムの歌詞を見ると、シンプルさやスピード感は腑に落ちますね。

木 それこそフレデリックの歌詞はすごくスピード感があって、特に今作はスピード感が出ている。僕もどうやって自分の音楽のスタイルとスピード感を合わせていくか考えた結果が、今回の作品にすごく出ています。スピード感のある言葉が感覚として吐き出されるところに、フレデリックの魅力がめちゃくちゃあって。「のってけ」連打、僕もやりたかったもん(笑)。

三原 「のってけ」連打(笑)。

熊木 スピード感があるんだけど破綻していないというか。「のってけ」のリズムにしっかり乗ってスピード感を持って歌っている。嫉妬しましたね。

三原 僕は、今回の作品を作るにあたって、ツアーでいろんなところを回って観光もしたんですけど、今まで行ったことない美術館に行ってみたり、何も考えずにフラフラ遊びに行ってみたり、そこで感じたことをそのまま歌詞にしていったのがほとんどだったので、そこの街並みだったり、その土地土地で考えさせられたことがすごく出ていると思います。歌詞を書けたのは、ライブハウツアーがあったからかなって。


Photo by Mitsuru Nishimura

ーその土地土地で思い浮かんだワードを、スマホなどにメモしたりするんですか?

三原 それもあまりしなかった気がします。「midnight creative drive」って曲の中に、“フロントガラス越しにディープに咲いたシティライト”って歌詞があって。僕はいつも、移動車の助手席に座るんですけど、フロントガラス越しに次のライブハウスのある街が見えてくるとき、高速からどんどん光が出てくるぼやけた感じがめっちゃ綺麗よなと思って。そういう言葉が出てきたりしていて。その日その日で感じたことを思い返しながらメロディになってみたいな感じです。だから、さっきの話の中にも出てきた鮮度が高いような歌詞になったんじゃないかと思います。

熊木 百聞は一見に如かずですよね。僕ももっと外に出て歌詞を書かないとダメだと思いました。そこに新しい答えだったり、自分の面白いがあると思って。もっと遊ぼうと思いました(笑)。

三原 遊び方を探索していこう(笑)。いわゆるロックバンドと言っても、いろいろな表現の方法がある。知的探求心というか、やれることってまだまだたくさんあると思うんです。

熊木 日本語でのリズムの表現がようやくスタート地点に立っていると思っていて。それぐらい日本語の語彙数とか面白さってめちゃくちゃある。まだまだ日本の音楽は掘り足りないぞと思っています。

三原 「うまい」って単語でも、上手って意味もあるし、美味しいって意味もあったりするから、表現方法の可能性は多いよね。

熊木 サウンドの表現も含めて、音楽における詩ってこんなもんじゃないはずなんですよね。もっとそういう表現を聞きたいし、自分もどんどん作っていきたいなと思いますね。



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