Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司が語る、踊らせる「歌詞」の作り方

お酒の曲を書く時はお酒を飲む (熊木)

ー歌詞の話を深掘りしていくと、最終的な歌詞の完成に至るまでのプロセスがどうなってるのかお伺いしたいです。

熊木 僕はサウンドコンセプトに対してこの言葉がいいというざっくりしたものはありますが、トーンに合うためにどういう言い回しにしようかという核になる部分がすごく大事で。例えば「一筋差す」という曲だったら、「一筋差す」と連呼する場所。ここは外せない。「Heat」という曲だったら「寒いなぁ」と連呼するところとか。絶対外せない言葉をどんどん固めていって、コラージュみたいに入れたり外したりひたすらやっています。





ーLucky Kilimanjaroは同じ言葉の反復を多用されますが、その理由というのは?


熊木 気持ちいいからですね(笑)。今回フレデリックでも「どう考えたってもう」とか「もう考えなくていい」という反復がやばくて。

三原 海外のダンスミュージックでも、いわゆるサビと言われるパートで同じ言葉をリフレインさせることが多くて。そういう聴かせ方の追求をお互いし続けているなとすごく感じますね。

熊木 連続性があるからこそ、みんながより言葉に対して入っていける。1回目聴いた時より2回目の方がその言葉が入っていき、最後には言葉の中にいちゃうみたいな状態。それを制作段階から想像していて。だからこそライブでみんなが盛り上がれて気持ちよくなると思っているんですよね。多分そこの快楽への追求が似ているんじゃないかな。

三原 僕もなんとなくメロを歌ったとき、自分の中で口気持ちよかったり、聴感上いいなって部分をピックアップしていく作業をしていて。今回のミニアルバムで言うと、全国ツアーの旅をテーマにして楽曲を作っていったんです。なのでツアーの移動中にしか歌詞を書かないと決めていて。「MYSTERY JOURNEY」は、飛行機の移動時に全部書こうと決めて、北海道とか九州に行く時の移動時に書きました。「midnight creative drive」は、ライブが終わってから次のライブハウスに移動する車の中で書こうと決めて書いて。環境を変えながら、自分も楽しくなるように書いていました。





ー書く環境が変わると、出てくる歌詞も変わるものですか?

三原  いや、もう全然変わりますね。

熊木 純粋に朝書くのと、夜書くのでも全然歌詞が違います。あと、僕はお酒の曲を書く時はお酒を飲むんですけど、その方が無茶な歌詞が書けるというか。シラフだったらダサいと思ってやらないような歌詞を書けたりする。それを使うか使わないかは、またシラフの自分が判断するんですけど(笑)。自分の心の状態がそのまま歌詞として出るので、すごくいいですね。僕も移動時間に書いてみようかな。

三原 違う言葉、違う言い回しとか絶対出てくるのでいいと思いますよ。

ー熊木さんが、今作で気持ちよくハマったなという言葉があれば教えてください。

熊木 今回は、自分の声のアーティキュレーションの方法も含め、どうやって音楽として言葉を成立させるかを非常に大事にしていて。「咲まう」という曲に関しては、歌詞とサウンド表現のバランスだったり、言葉でも時間の経過を味わってもらうってところで今までの自分と違う書き方をしました。結婚したのもありますけど、今まで書かなかった歌詞や書ききれなかった歌詞だなと思っていて。書いて満足がいったのは、この歌詞ですね。

ー「咲まう」って、なかなか聞いたことのない言葉ですよね。

熊木 仮歌では、絵文字を意味する「エモート」という単語だったんですけど、エモートはすこし固いなと思っていて。歌詞が持っている言葉のトーンと、サウンドのトーンを綺麗に合わせられたらと、ひらがなで検索したら「咲まう」という言葉が出てきたんです。ちょっと運命的な出会いをしていますね。「咲まう」という単語自体から発せられる優しい匂いだったり、温かい空気や丸さ、そういうものがサウンドと一緒に完成した感じがして嬉しかったです。

三原 自分の中でスッキリ歌詞が書けたのは、あーいいよなと思いますよね。そこにたどり着けない時もあるので。それだけ力を込めて作った楽曲なんだなっていうのはすごく思いましたし、俺もこのアルバムの中でこの曲が1番好きです。今の話聞けて嬉しかった。

ー「千鳥足でゆけ」は、さっきおっしゃっていたみたいに、お酒を飲んで書いた曲?

熊木 この曲はトラックを作る時からお酒を飲んでいましたし、ミックスチェックもお酒を飲みながら徹底して作りました(笑)。

三原 絶対一緒に飲みに行きたいじゃん(笑)。俺もお酒好きやから。

熊木 リアルから出てくる詩があると思うんです。もしかしたら音楽製品としてのクオリティが変わってしまうかもしれないけど、むしろそこにクオリティだったり面白さがあると思っているので、大事にしている部分ではありますね。



ー康司さんも、お酒を飲んで歌詞を書くことってあったりするんですか。

三原 たまにやるんですけど、僕はあまりうまくいかない(笑)。なんか、楽しくなっちゃって。だから羨ましいですね。


三原康司(Photo by Mitsuru Nishimura)
フレデリックのベース/コーラス。バンドでは作詞を担当。双子の兄、健司(ボーカル/ギター)、ギターの赤頭隆児、ドラムの高橋武とともにバンド活動中。2014年9月、ミニアルバム『oddloop』でメジャーデビュー。独特なユーモア性と幅広い音楽的背景を持ち、中毒性の高いリズムと歌詞で注目を集める。どのシーンにも属さない「オンリーワン」なバンド。2月22日に最新ミニアルバム『優游涵泳回遊録』をリリースした。

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