Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司が語る、踊らせる「歌詞」の作り方

言葉が間違っていても、伝わって面白ければいいとも思う (熊木)

ーフレデリックのアルバムタイトル『優游涵泳回遊録』もあまり聞き馴染みのない言葉ですが、どう浮かんできたんですか。

三原 フレデリックに合うだろうなってワードを普段からメモするようにしていて。これは、昔からワードとしても五感としても意味合いとしても合いそうだなと思っていた言葉で、今回作るテーマにすごく合っていたから使ってみようと思ったんです。

熊木 僕も普段から言葉をメモしているんですけど、それはタイラー・ザ・クリエイターの影響で。彼も自分の単語リストみたいなものがあって、そこからいいと思ったワードを曲タイトルにしているみたいなんです。自分のやりたい表現に合わせて言葉を使っていくのはある種、言葉のサンプリングみたいな感覚というか。フレデレックにも、そういう良さを感じていて。言葉をそういう風に当てはめていくというか、まず言葉があって、それを膨らませていくような遊びの部分があって、すごく面白いですよね。

ー以前別アーティストの取材で、言葉の引き出しが多いほど解像度が高くなるから語彙力を常に磨いていると聞いたことがあるんですけど、そのあたりはどう考えますか?

熊木 僕は結構いろいろな言葉を使うんですけど、すごくシンプルでもいいと思っています。それこそ「辻」という曲は難しい言葉を一切使っていなくて。一方で、本読むのが好きなので、解像度の高い言葉、もっと意味をたくさん含んでいる言葉に惹かれる部分もあります。美しくて、そこに文脈があるような言葉がすごく好きで、そういうのを使いたくなる欲求はめちゃくちゃありますね。

ー今作では季節の移ろいもテーマになっています。季節こそ言葉の表現仕方はたくさんありますが、どのようにワードを選ばれていったんでしょう。

熊木 言葉1つで想像力を広げてくれるようなワードを選んでいます。今回季語の本を読んだんですけど化けものみたいにいい単語があって。開いちゃったなと思いました(笑)。

三原 あははは。

熊木 日本語って1つの単語に意味がちゃんと入ることができると思っています。俳句はそういうところに美しさがある。そういう技術は持っていきたいし、もっと広げていきたいなと思っています。

ーフレデリックも、初のシーズンソングとして「FEB」を書かれていますが、言葉のチョイスとか考え方においてどのように考えていますか。

三原 どの曲に対しても、その景色が見えるコード感とメロディがあって。そのコードが鳴っていたら、この言葉のニュアンスが合うみたいなことを考えて書いています。音楽って、説明があまりなくても伝わる瞬間が生み出せる気がしていて。そういう意味で、語彙力に縛られずに、もうちょっと自由な考え方は持っておきたいよなって思います。アーティストによって、いろいろなやり方があると思うし魔法みたいなことがある。言葉足らずだったり言葉自体が間違っていても、伝わって面白ければいいよなとも思います。



熊木  みんなどうやって言葉とサウンドだけで魔法をかけようかすごく考えていて。言葉の選び方とサウンドの組み合わせ方も本当に違います。そこがクリエイターとしてお互い面白いと思える部分だと思いますし、聴いてくれる人がいろいろな想像力を働かせることができる要素になっているのかなと思います。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE