2.5次元俳優・荒木宏文が語る、ストイックに生きる日々と仕事愛

Rolling Stone Japan vol.22掲載/Coffee & Cigarettes 44| 荒木宏文(Photo = Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。2.5次元舞台や2.5次元ミュージカルの世界で活躍する俳優、荒木宏文。オーディションをきっかけに役者の道を自ら切り拓いてきた彼のタフさとモチベーションはどこから来るのだろうか?

表の顔は無敗の弁護士、裏の顔は伝説の殺し屋の血を引く「人斬り」。そんな二つの顔を持つ男が悪党に裁きを下す、アクションエンターテインメント映画『ヒットマン・ロイヤー』が公開される。幕末の伝説の殺し屋「人斬り以蔵」こと岡田以蔵の血を引く主人公・神道楷を演じるのは、ミュージカル『テニスの王子様』で注目を集め、ミュージカル『刀剣乱舞』など数多くの舞台で活躍する荒木宏文。中でも「ミュージカル「『刀剣乱舞』にっかり青江 単騎出陣」は、47都道府県全てを一人で回る単独公演として人気を博した。

「今回の映画『ヒットマン・ロイヤー』は、とにかくぶっ飛んだ設定なんですよ(笑)。監督の大野大輔さんからも、『荒唐無稽な映画にしたい』と言われました。要するに、ぶっ飛んだことをふざけて演じるのではなく、とにかく真剣に演じ切る面白さを追求したいと。そうすることで荒唐無稽になるのだと聞いて腑に落ちましたね。弁護士としての顔も、殺し屋としての顔も、どちらも真剣に演じればいい。そこを理解してからは迷うことなく演技に集中できました」

映画はまるで「続編」か「シリーズ化」を匂わせるようなエンディングを迎えるが、すでにその予定はあるのだろうか。


©「ヒットマン・ロイヤー」製作委員会

「どうなるんでしょうね(笑)。ある意味『序章』的な作品だったからこそ、あれだけ荒唐無稽なストーリーになったのかもしれないですし。これからの展開は、僕自身も楽しみです」

彼のデビューは所属するワタナベエンターテインメントの俳優集団のオーディションがきっかけだったという。

「高校の時に進路を決めなければならなくて。頭は良くなかったので、医者や弁護士は無理だろうけど(笑)、親には『ちゃんとお金を稼げる子供に育て上げた』と誇りに思ってもらいたい気持ちがあったんです。で、医者は無理だけどそれに近い職種になんとか就くことはできないか?とない知恵をひねり、カウンセラーの道を選んで心理学を学ぶことにしたんですよね」

大学の推薦枠をもらい、論文を書く準備までしていた荒木。しかし「本当にそれでいいのか?」という葛藤もあった。そんなある日、妹が自宅でテレビドラマを見ていたときに、画面に映る主演俳優を眺めながら「よし、有名人になろう!」と閃いたという。



「『有名人なら学歴関係ないかも』と安易に考えたんですよね。役者を選んだのは消極的な理由です。関西人なのに人を笑わせる才能はないし、作詞作曲ができなきゃミュージシャンも、踊れなきゃダンサーも無理だよなと。でも役者だったら、別にイケメンじゃなくても役はあるし、歳を取っても“おじいちゃん役”があるじゃないですか(笑)。『これ、可能性としてはいちばんありかも』と。もちろん親には反対されましたが、それもバネになったというか。親を説得させられるくらいの熱量がなければ、そもそも役者なんて無理だろうと思ったんです」

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