ピンク・フロイド(Pink Floyd)『狂気』50周年記念リリースとして、2023年最新リマスターを含む豪華ボックス・セットに引き続き、貴重な復刻アイテムなどを含む「15大特典」を7インチ紙ジャケに封入した日本独自企画『狂気ー50周年記念SACDマルチ・ハイブリッド・エディション』が発売された。この不滅の名盤について振り返るべく、デヴィッド・ギルモア、ニック・メイスン、ロジャー・ウォーターズが『狂気』制作秘話を語った、米ローリングストーン誌による2011年の貴重インタビューをお届けする。『狂気』(原題:The Dark Side Of The Moon)とは?ピンク・フロイド8作目のスタジオ・アルバム。現代社会の緊張と抑圧、人間の心のなかに潜む狂気をテーマにした一大コンセプト・アルバム。象徴的なジャケットのアートワークはヒプノシスによって光のプリズムをモチーフにデザインされた。1973年にリリースされ、バンド初の全米1位を獲得(全英2位、日本2位)。全米チャート741週(15年間)連続ランクインのギネス記録、全世界トータルセールス5000万枚以上、史上最も売れたアルバム3位などの記録を打ちたて、音楽史上最も重要な作品のひとつとして今もなお世界中で新しいオーディエンスを魅了し続けている。日本独自企画『狂気ー50周年記念SACDマルチ・ハイブリッド・エディション(7インチ紙ジャケット仕様)』15大特典【1】 1972 Pink Floyd In Japan フォト・ブック(全48P、1972年の空港、ライヴ、日本滞在時模様) 【2】 1972来日公演ツアー・パンフレット(全16P、縦長) 【3】 1972来日公演チケット(1972年3月6日東京都体育館<赤>) 【4】 1972来日公演チケット(1972年3月7日東京都体育館<青>) 【5】 1972来日公演ツアー告知ポスター(東京:東京都体育館) 【6】 1972来日公演会場で配布された幻の歌詞リーフレット『月の裏側-もろもろの 狂人達の為への作品-』」 【7】 1972来日公演ツアー告知フライヤー(大阪:フェスティバルホール) 【8】 宣伝用チラシ (『狂気』宣伝用レコード会社手書きチラシ) 【9】 来日記念ステッカー(当時の来日キャンペーン特典丸型ステッカー) 【10】来日記念盤シングル・ジャケット(「ピンク・フロイド/ビッグ4」) 【11】来日記念盤シングル・ジャケット(「青空のファンタジア」)【12】【13】オリジナルLPに封入されていたポスター2種【14】【15】オリジナルLPに封入されていたステッカー2種 『狂気-50周年記念盤ボックス・セット』(輸入盤のみ・完全生産限定盤)• 『狂気』 2023最新リマスター CD&LP •『ライヴ・アット・ウェンブリー1974』 CD&LP •『狂気』ATMOS MIX BLU-RAY(AUDIO) •『狂気』5.1 MIX+HIGH-RES REMASTERED STEREO MIX BLU-RAY(AUDIO) •『狂気』 5.1MIX + REMASTERED STEREO MIX DVD(AUDIO)•1972年〜1975年の全英・全米ツアーからレア・未発表写真を収録した豪華160ページ・ハードカバー・フォト・ブック •オリジナル版の76ページ楽譜集 •オリジナル7”アナログ・シングル復刻×2枚(「マネー/望みの色を」「アス・アンド・ゼム/タイム」) •ポスター4枚、ポストカード2枚 •1973年にロンドン・プラネタリウムで行われた『狂気』試聴会のEMI制作パンフレットおよび招待状のレプリカ
もしピンク・フロイドがただの思い出、心の交流のないビジネス関係でなかったならば、それはバンドにとっての新曲になっていたかも知れない。ロンドン郊外の豪華なハウスボートに設置されたスタジオのコントロール・ルームで、デヴィッド・ギルモアは機材ラックに座っている。彼はマーティンの12弦ギターで下降するコード進行を爪弾きながら、歌詞のないメロディを歌っている。
「流れに任せながら、曲を書いていくんだよ」彼はギターを弾き続ける。窓の外では早くも秋の空気を漂わせる灰色の空の下、テムズ川が波紋を広げていく。
「何年か前の話だけど」上品なブリティッシュ・アクセントで語るギルモアだが、実際のところかなりの年月が経過している。「同じことをアビー・ロード・スタジオの第3コントロール・ルームでやっていて、このフレーズが生まれたんだ」彼は1975年の「あなたがここにいてほしい」のハンマリング・オンのイントロを奏でる。「あの曲はこのギターで書いたんだ。だから何か良いアイディアが浮かんだらすぐ気付くよ」
バンドが最も大きな成功を収めていた時期のベーシスト/作詞者/ソングライターだったロジャー・ウォーターズとギルモアが膝を突き合わせて共作をした曲として、「あなたがここにいてほしい」は珍しい部類に入る。「ロジャーが『そのフレーズ、良いね。それに合いそうなアイディアがあるよ』と言い出したんだ」ギルモアは語る。「そうして一緒にコーラスとヴァースを書いた。それから彼が歌詞を書いたんだ」
さらに名曲「コンフォタブリー・ナム」など数曲で共作者としてクレジットされているギルモアとウォーターズだが、彼らがジョン・レノンとポール・マッカートニーのような継続的なソングライター・チームとして機能することはなかった。
本記事が掲載された、ローリングストーン誌2011年10月13日号の表紙1987年、バンド内の不仲で脱退して間もなく、ウォーターズはローリングストーン誌との取材で語っている。「バンド内で誰が何をやって、それが正しいか間違っているか、共通の認識を持つことが出来なかったんだ」
それから長い年月が経過したが、問題の数々は解決に至ることがなく、驚くことに彼らの関係は未だ緊張を孕むものであり続ける。
とはいえ、彼らの現在の間柄は決して険悪なものではなく、ギルモアとウォーターズ、ドラマーのニック・メイスンはバンドとして最後となる可能性のあるプロジェクトに合意している。ピンク・フロイドの全作品をリイシューするというプロジェクトだ(※2011年より発売)。すべてのスタジオ・アルバムがリマスタリングされ、『ザ・ウォール』(1979年)、『炎(あなたがここにいてほしい)』(1975年)、そして4千万枚以上のセールスを誇る『狂気』(1973年)という、最も人気のある3作はデラックス仕様のボックス・セットとしてリリース。未発表のアウトテイクやライブ音源、映像特典が追加収録される。「『質が低いものは出す価値がない』とか、もったいぶるのは止めたんだよ」ギルモアは語る。「存在するものは何らかの形で世に出していくつもりだ」
そのタイミングで、ギルモア、メイスン、ウォーターズの3人が個別にローリングストーン誌のインタビューに応じてくれた。
「“LIVE 8”に最も近いものだよ」メイスンは笑いながら、2005年に行われたベネフィット・コンサートに言及する。このライブは2008年に亡くなったキーボード奏者リチャード・ライトを含むフル・ラインナップによる最後のライブ・パフォーマンスだった。ウォーターズとギルモアは昨年(※2010年)パレスチナの子供たちへのチャリティ・イベントでのアコースティック・セットで共演。それに続いてギルモアがウォーターズの『ザ・ウォール』ツアーのロンドン公演にゲスト出演、メイスンもタンバリンで参加するという出来事もあった。どちらのイベントにおいても、彼らがハグを交わす光景が見られた。
ギルモアはギター6本が並ぶラックに12弦ギターを置き、65歳の身体を起こして、スタジオのコントロール・パネル側にある人間工学に基づくチェアに落ち着く。彼はいつも身を包んでいる黒のスポーツ・ジャケット、高価そうな黒のTシャツ、ブラック・ジーンズにスエードの靴をコーディネイトさせている。ピンク・フロイドと『狂気』について、どれだけ積極的かはともかく、彼は語る準備が出来ている。
「大昔のことに自分自身を投じるのは難しいんだよ」彼は言う。「過去を思い出すのが心地よくないと感じる自分の一部があるんだ」