中島みゆき『世界が違って見える日』、プロデューサー瀬尾一三と紐解く

童話 / 中島みゆき

田家:始まり方がオルゴールのようでしたが、骨本なロックでありました。

瀬尾:このリズムが初めから入ってきちゃうと、タイトルとの乖離があるなと思って。内容はそれでいいんですけど、童話という世界観でちょっと油断させておいて(笑)、なるほどねと思っている途中からガガガガと入ってくるタームをちょっと考えたりして。

田家:内容は突き放してますもんね。

瀬尾:童話という子どもたちに読み聞かせていくものと、現実との乖離が激しいじゃないですか? だって、めでたしめでたしちゃんちゃんで終わる話が、現実では全くそうではないじゃないですか。じゃあ童話は何なの?っていう。子供からしてみればハッピーエンドで終わらないよって。それがつきつけられるわけじゃないですか。

田家:なんで人が戦争するのか?聞かれた時に親はどうことやればいいんだって。

瀬尾:まあ、童話でも悪者とヒーローが戦ってるんですけどね。その戦いは何も言わないのかなっていうのはありますよね(笑)。

田家:童話の中では、ちゃんと正義が勝つわけですけど。

瀬尾:そこでヒーローとヴィランの戦いっていうのは認められるんだって。世の中的にはどっちも正義だから戦ってるんでしょうけど、単一ではないってことですよね。一つではない。正義がたくさんあって、自分たちの正義を貫くために相手を滅ばさなきゃダメってなってしまうので。逆に言えばそっちの方が童話っぽいんですけどね。いわゆるおとぎ話っぽいんですけどね。

田家:現実の方がね。

瀬尾:ハッピーエンドがどこになるかという終着駅が見えてないので、それは別に中東でも東南アジアでも、南アフリカでも起きていることだし。

田家:2002年に『おとぎばなし-Fairy Ring-』というアルバムがありましたけど、2023年の「童話」は突き放していると言いますか、「世界は世界」と歌いました。

瀬尾:割り切らないとダメよ、そうしないと生きていけないので、皆さん「頑張りましょう」という歌です。

Rolling Stone Japan 編集部

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