中島みゆき『世界が違って見える日』、プロデューサー瀬尾一三と紐解く

噤 / 中島みゆき

田家:アルバムの7曲目 「噤」です。つぐみっていう字が、鳥のつぐみじゃないんですよね。

瀬尾:口をつぐむっていうやつですよね。

田家:で、大空を鳥が飛んでるような始まりになってます。「童話」のあとに「噤 」、「十年」「乱世」「体温」とメリハリっていうんですかね。曲によって世界が変わりますもんね。

瀬尾:中島さんがこの曲を「童話」と続けたのは、これもちょっとファンタジーの世界で、僕はそれを後押しするためにイングランドというかアイリッシュのイギリスの昔の中世風の音楽っぽくしようと、ダークファンタジー的な感じにしようと思って。

田家:みゆきさんの曲の中で「鳥」っていうのはどういうモチーフなんですか?

瀬尾:やっぱり鳥って自由じゃないですか? 空を飛べるし、国も関係ない。その象徴じゃないですか。どこでも自分の力だけで飛んでいけるっていう。あと俯瞰でものを見てる、そういう象徴で使ってると思うんですけれどもね。

田家:「この空を飛べたら」って曲がありましたけど、具体的な鳥の種類はあまり多くないんだなと思ったんですね。アホウドリ、カモメ、すずめ、白鳥、鷹、ガン。もっといっぱい出てきそうな感じがするんですけどね。

瀬尾:中島さんの中でそのぐらいが鳥なんですよね(笑)。

田家:やっぱり渡り鳥?

瀬尾:そうですね。基本的に、ある意味空には国境がないというか。今はありますけど、それが自由に行き来できるという自由さがあるんじゃないですか。

田家:今上げたのはタイトルになっているものだけで、歌詞の中で出てくるのはもっとたくさんあるんでしょうが、その辺ファンの方の方が詳しいでしょうから、ここでボロを出さないようにしないと(笑)。達観みたいなものが「噤」なんだろうと思ったんですね。

瀬尾:ある意味、外から見れるのは彼女の得意なところなんですけど、それ以上に高みみたいなところがあって。自分が見ている世界より、もう一つ上の世界からの話みたいな感じでどんどん高いところ行ってるなと思って。

田家:「噤に世界はどう見えてるのか」って歌でもあります。これを聞きながら「ヘッドライト・テールライト」の「旅はまだ終わらない」っていう歌が浮かんできたんですが。

瀬尾:「ヘッドライト・テールライト」は人生に対して、これは悲しみに対して終わりがあるかっていうことを言っている。

田家:それが「噤」なんですね。

瀬尾:口をつぐむというか。

田家:そういうことを歌詞を見て文字を確かめて聴くというのは、アルバムの正しい聴き方のあるかもしれません。

瀬尾:特に中島さんは必ず歌詞を見てください。

Rolling Stone Japan 編集部

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