SUGAが語る、Agust Dを通して見た「心の旅」、坂本龍一との対面

坂本龍一からの影響

ー「Snooze」はThe Roseのウサンと先日他界した坂本龍一とのコラボレーション作品です。アーティストとして坂本龍一からはどんな影響を受けてきたのでしょう? 実際に共演してみていかがでしたか?

ちょっと込み入った話になるかもしれませんが、サンプリングした音源を逆回転して、切ってつなげるという手法があるんです。作曲家の間ではよく使われる手法なんですが、中には「これが作曲か?」と言う人もいます。オリジナル音源からサンンプルを取ってきて、改めて収録し直すので、実際これも作曲です。例えばIUと組んだ「Eight」でも、最初にテーマを決める段階で、音源の一部を逆回転して切り貼りしました。ヒップホップでは当たり前のやり方です――多くのヒップホップアーティストが昔も今もこの手法を使っています。これをやるのに必要なのがインスト曲です。ボーカルなしの曲なら、いろんな形式の音楽に落とし込めますから。

サンプリングをする中でこうした制作を練習する必要に迫られ、最終的に行きついたのが坂本龍一さんの曲でした。プロデュースをやり始める前、子どものころから「戦場のメリークリスマス」とか映画『ラスト・エンペラー』のサントラなど、彼の作品を尊敬していました。中学生かそのぐらいのころ、そういったインスト曲を使って自分のビートを作りました。なので当然、坂本龍一さんはいつか会ってみたい憧れの存在の1人でした。お会いしたいとお伝えすると、2つ返事でOKしてくれました。

お亡くなりになって本当に残念です。でもお会いした時は最高でした。ミュージシャン同士の対面ではなく、子どもの僕が大人の彼に会いに行くという感じでした。心からお悔やみを申し上げます。目標に掲げてきた1人でしたから。彼は僕のアルバムにも喜んで参加してくれて、コラボレーションもスムーズに進みました。2人とも楽しんで曲作りをしました。

それと、あの曲は必ずしも僕自身のことを歌っているわけではありません。歌詞を聞けば多分お分かりになるでしょう。僕の後に続くアーティストのことはもちろん、坂本龍一さんの作品に心の平穏を見出してきた世界中の人々のための曲です。



ーアルバムのテーマは「解放」だそうですが、あなたにとっての解放とは何ですか?

以前から今回のテーマの意味は自分でもよく分かっていたので、収録の過程で自分の考えも上手く整理されてくだろうと思いました。(2022年に)『私の解放日記』という非常に良くできた韓国ドラマがあったんですよ。アルバム制作は3年前からすでに始めていましたが――ふと、ドラマとテーマが同じだと気づきました。「解放」をテーマに、みんながもっとたくさんのストーリーや議論を突き詰めてくれたらいいなと感じました。

正直な話、「解放」という概念に固執していたからこの曲(「Haegeum」)を書いたわけではありません。Haegeumとは「奚琴」といって、楽器の名前です。でもだいぶ前にリズム系のビデオゲームに熱中していたんですが、ゲームの中に「奚琴ソング」という曲が出てくるんです(註:特定のステージに到達した時にだけ流れる曲)。それがこの曲のねらいでした。3年ほど前、「Daechwita」と並行して「Haegeum」のフックの部分を書いたんですが、当時は韓国の伝統楽器でたくさん曲を作っていました。なのでみなさんご存じないかもしれませんが、本当は「Daechwita」のビートとして書いた曲なんです。

「解放」を僕なりにどう定義するかと自問したら、(自分の楽曲の中で)解放という概念がどんどん広がっていきました。視聴者の皆さんはすごく面白がってくれるでしょうね――他にもいろんなプロモーションを用意しましたから。自信はありますよ。ビデオでは、とにかくやりたい放題やっています(笑)

ーAgust Dの「D」は生まれ故郷の大邱(テグ)の頭文字ですね。ソウル生活も長くなり、世界中を旅していますが、今はあなたにとって大邱はどんな存在ですか?

Agustの後にスペース、Dが続くのはなぜなのか、をいつもみなさんに訊かれるんです。「『ONE PIECE』絡みですか?」とも言われます(漫画『ONE PIECE』の主人公はモンキー・D・ルフィ)。大邱はすごく大事な存在です――当然、生まれ故郷ですからね。あそこにいる時はすごく落ち着きます。それに、ミュージシャンというのは出身地にものすごい誇りを持っているんです。僕もよく帰省します。マクチャン(小腸の炙り焼き)を食べに帰ります。それに両親も大邱が大好きなんです。夢のような場所ですね。

ー今回のアルバムではどんなライブパフォーマンスを予定していますか?

いろいろありますが、会場に来てからのお楽しみです。収録はしません。ミン・ユンギのショウは、ぜひとも会場で観てください。

補助通訳:TaeHo Lee

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From Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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