台湾のバンド・ゲシュタルト乙女が語る、なぜ日本語で歌を書くのか

自分を閉じ込めているような状態だった

―Mikanさんの次の目標って何ですか?

Mikan:音楽をずっと作り続けることが目標ですね。自分が本当に形にしたいことを1個1個続けていくことが、自分の中の鬼ヶ島なんじゃないかな(笑)。何があってもずっと音楽を続けたいなという気持ちです。

―ツアーのタイトルが「未来の窓」で、新曲のタイトルも「窓」。未知の自分に会いにいく、といったことを今Mikanさんの中でテーマにしている理由を聞かせてもらえますか。

Mikan:心理学の「ジョハリの窓」というのがあって、自分のことを窓として見たときに4つの分類があって「未知の窓」がその1つで(※自分も他人も知らないような、まだ誰からも知られていない自己を「未知の窓」という)。今いろんな変化を受けている途中の状態で、どんな未知なる自分を見つけられるんだろうなって。それがツアーでやっていきたいことだし、ライブに来たお客さんにも自分も知らない自分を見つけてほしいということを伝えたいです。「窓」の歌詞は自分に向けて書いていて、“君”と出てくるんだけど、それも自分と自分の会話みたいな感じで。バンドメンバーが脱退して、全部自分が向き合わないといけない状況だけど、自分で自分を引っ張って前を向いて歩きたいなという心境です。


『窓』ジャケット/イラスト:我喜屋位瑳務

―Kaiakiさん(今年1月に脱退した元メンバー)の脱退は、きっとすんなり受け入れられるものでもなかったですよね。

Mikan:でも身体の状態があんまりよくないということで、ここ2、3年間ずっと話はしていたので。ただ、日本ツアーに一緒に行けてないのがちょっと惜しいなあという気持ちはあるんですよね。だけど2人のこれからのこともあるし、みんなの中で出した着地がそれだったので、それを引きずって悲しむとかではなく、前を向いて歩こうって。

―未知な自分を探っていこうという気持ちが今Mikanさんの中でテーマになっているのは、ゲシュの状況やコロナ禍の変化があったから、ということ以外にも何か理由があったりしますか。

Mikan:高雄から台北に引っ越してきて1年経って。引っ越しする前は、自発的に人と接することが苦手だったというか、自分を閉じ込めているような状態だったんです。台北に引っ越してきて、みんながどういう姿勢で音楽に向き合って頑張っているのかを見て、自分も自発的にいろんなアーティストと接することでまだまだ自分が知らない自分を見つけられるんじゃないかなと思って。台北に引っ越してきて、もっともっと未知の自分を見つけたいなという気持ちが出てきたところはありますね。

―台北に引っ越す理由やきっかけは何かあったんですか?

Mikan:しいて言うと……ないかな(笑)。あ、でも一時期、すごいネガティブで塞ぎ込んでいたときがあって、それを改善するために環境を変えようかなとは思って。それがきっかけでもあるかな。



―どんな理由でネガティブになっていたのか、聞いてもいいですか?

Mikan:一番大きい原因は、おそらく、まだ自分がこれからどうしたいのかが心の中ではっきりしていなかったことなんじゃないかなと思いましたね。その時期があっての今の自分がいるから、悪いことじゃなかったなとは思います。

―それは、さっき言ってくれたみたいな「一生音楽を作り続けたい」という気持ちが、まだ明確ではなかった時期だったのかな。

Mikan:うん。本当に迷っていたし、「自分にとってバンドって何だろうな」「音楽って何だろうな」って。音楽とかバンド活動は人生のどんなパーツなのかな、みたいな。本当にずっと考えていた時期で。でも実際は本当に簡単な理由で。ただ好きなだけで、やってて楽しいなと思うことをたくさん作っていこう、ということだけでしたね。

―それは何があって気づくことができたのでしょうね。

Mikan:台北に引っ越してきて、ソロ名義でいろんなアーティストとコラボレーションして。そこで、みんなの音楽に対する向き合い方がそれぞれ違っているのを見て、なんか悟ったというか。みんな向き合い方も表現の仕方も違うし、ただ音楽が好きでやっていて、自分も実はそうなんじゃないかなって改めて実感したんですよね。

―バンド「ゲシュタルト乙女」と、ソロ名義「Mikan Hayashi」と、Mikanさんの中ではどのように区別しているんですか。

Mikan:バンドサンドを求めている自分と、違うサウンドを求めている自分がいて。ふたご座なので(笑)、いろんなことをやっていきたいなと思って。バンドの方は、わかりやすくいうと「悪魔」な自分。ソロの方が「天使」みたいな感じで、自分が部屋にいるような状態が伝わる音楽をしたいなと思っていて。バンドでは広い世界観を持つ音楽を表現したいと思っているので、みんなも違う人格だと思ってわけて聴いてほしいなって思います。





―今は「未来が楽しみだ」と思える地点にいらっしゃるのだろうなと、今日のお話からも、新曲「窓」からも感じます。

Mikan:そうですね。新曲をリリースすることも、6月の日本・台湾ツアーももちろん楽しみにしていますし、これからいろんな国に行ってみたいなとも思いますね。

<INFORMATION>

『ゲシュタルト乙女 7周年台日記念ツアーライブ 「未来の窓」』
2023年6月18日(日) 大阪 心斎橋Compass w/downt
2023年6月19日(月) 東京 LIVEHOUSE FEVER
2023年6月23日(金) 福岡 Queblick w/クレナズム
2023年7月8日(土) 台北 The Wall Live House w/クレナズム
2023年7月9日(日) 高雄 LIVE WAREHOUSE w/クレナズム
https://www.sound-c.co.jp/sp/gestaltgirl2023/



『窓』
2023年5月31日(水)配信リリース
https://friendship.lnk.to/Window

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