石垣島在住87歳のジャズシンガー齋藤悌子が語る、戦後から現在に至る歌手人生

齋藤悌子(Photo Herbie Yamaguchi)

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。

2023年6月の特集は「沖縄を知ろう」。沖縄戦で亡くなった方たちの霊を追悼する沖縄の慰霊の日である6月23日。その6月に改めて音楽を通して沖縄を知ろう、沖縄について勉強しようという1カ月間。PART2は石垣島在住、87歳のジャズシンガー齋藤悌子を迎え、沖縄の音楽に迫る。



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター田家秀樹です。今流れているのは、BEGINの「島人ぬ宝」、2002年5月に出たシングルで、アルバムはその年に出た『ビギンの島唄~オモトタケオ2~』に入っておりました。今月の前テーマはこの曲です。「J-POP LEGEND CAFÉ」、POPの歴史を彩った様々な伝説を改めて語っていこうという60分です。

今月2023年6月のテーマは沖縄を知ろう。6月23日は沖縄の慰霊の日です。約20万人、沖縄県民のおよそ4分の1が亡くなったという沖縄戦、戦争が終結した日ですね。亡くなった方たちの霊を追悼する日でもあります。2001年から始まってるBEGINの「うたの日」は今年も慰霊の日の週末24日に行われます。様々な形で沖縄が取り上げられる6月ですが、この番組では改めて音楽を通して沖縄を知ろうという企画を組んでみました。

今週はジャズなんですね。沖縄とジャズ・沖縄の音楽はチャンプルーと呼ばれてます。いろんなものがミックスされてるごった煮。その中には当然のことながらアメリカがあるわけですね。三線が主体だった沖縄の音楽に、アメリカからエレキギター、ドラム、ベース、電気楽器が入ってきて新しい島唄、琉球ポップスが生まれた。ジャズはその前からある。歴史そのもののような生き証人、生きる伝説。先週のBEGINの比嘉栄昇さんと同じく石垣島在住、ジャズシンガー。なんと87歳。1935年生まれ、美空ひばりさんの二つ上、エルヴィス・プレスリーと同い年。今年の2月19日、これまでのキャリアで初めて東京でのコンサートを行ったという齋藤悌子さんです。リモートでお話を伺います。こんばんは。

齋藤:こんばんは。よろしくお願いします。お手柔らかにどうぞよろしくお願いします(笑)。

田家:何しろ石垣島にお住まいですからね。今リモートで繋いでるわけですが、こういう形の取材とか結構ありますか。

齋藤:いえ、初めてです。取材の方がうちにお見えになって話してくれたことは度々ありますけども、こうしてカメラを通しては初めてなので、ちょっと緊張してます。

田家:光栄です。6月はいろんな形で沖縄がマスコミ・メディアで取り上げられたりしますけど、悌子さんの中で6月はどういう月ですか。

齋藤:今月の6月23日には慰霊の日がありまして、その日は私も出ていっては歌うことになってます。

田家:どちらで歌われるんですか。

齋藤:石垣島に大きな公民館があるんですけど、そこで集まってちょっと歌ってくれっていうもんでね、歌うことになりました。去年は平和の塔っていうとこでちょっと歌いましたけど、そんな大がかりなものではなかったですね。今回はかなり大きくやるようですけども。

田家:そういう慰霊の日に歌うっていうのは何か違うものっておありになりますか?

齋藤:やっぱり慰霊の日にはどういう曲を選んだらいいものかってちょっと考えましたね。そして2、3曲、私のレパートリーから選びましてね。そしていつも大体歌いたいなというのは、皆様ご存知だと思いますけれども「ダニー・ボーイ」って曲があるんですね。それは私も大好きな曲なんですけど、とても思い出深い曲なんです。遠くにいる息子のことを思う母親の気持ちを歌ったような内容。一度米軍キャンプで仕事して歌ってるとき、リクエストがありましてそれを歌ってたんです。そうしましたら、目の前で若い軍人さんが素敵な女性と踊ってたんですね。ふっと歌いながら見ましたら、その男性が目に涙いっぱいためていて、あれはどうしたんだろうと思って歌い終わってからクラブの方にお聞きしたんです。そしたら、実は彼もすぐベトナムへ行くんだよって。それを聞かされたときは、本当にもう胸が熱くなりましたね。そういう思い出があります、この曲に特にそういうことがあったものですから。慰霊の日に必ずこれを歌おうと思ってます。決してもう戦争はいけませんっていう意味で歌いたいですね。

田家:去年アルバム『A Life with Jazz』をお出しになって、そのアルバムの1曲目が「ダニー・ボーイ」でしたもんね。今日は、このアルバムもご紹介しながら、齋藤さんの今おっしゃったような話を伺ったいけたらと思ってます。

Rolling Stone Japan 編集部

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