RADWIMPS・野田洋次郎とZORNが語る、コラボ実現の経緯、音楽を通して伝えたかったこと

野田洋次郎が思うZORNの魅力

─そのうれしさというのは、繋がるとは思っていなかったフィールドにいるアーティストに自分のラップが届いていたというニュアンスですか?

ZORN:野田さんはわりと近しいカルチャーにいる人であるということはなんとなくはわかっていたんです。だから、それよりも自分の話になりますけど、去年末にさいたまスーパーアリーナでワンマンライブをやって、ここからはヒップホップの外に出ていこうと思っていた矢先だったんですね。それで、今までしてこなかった挑戦もしてみたりして。たとえば「スッキリ」っていう朝のテレビ番組でラップさせてもらったりとか。「他にいろいろ何ができるかな?」と思っていたところに今回の話が来たので、驚きとうれしさ、あと直感的に「あ、これだ」って思ったというか。

─能動的にこれまで触ってこなかった扉を開いていこうというタイミングにはまったと。

ZORN:そうですね。これ以上ない話がいきなり来たという感じです。

野田:僕は僕で一緒に曲を作りたいとは思っていたけど、ZORNが自分の身一つでさいたまスーパーアリーナまでいって、たぶんいろんな声が周りから押し寄せている時期ということも理解していたから。自分もインディーズからのキャリアを重ねてきて、そういう時期を経験したし、何を取捨選択するか難しいタイミングだろうなって。だから、「本当にもしよければ」という気持ちではあったし。スマホを捨てたのも俺はすごく腑に落ちるところがあるし。

─洋次郎くんとしてはそれくらいいろんなノイズも入ってくる時期でもあることは想像に難くなかった。

野田:そうそう。普通の感覚を持っている人間の感性ではちょっと処理しきれない何かが起こるし、スマホのこともなるほどと思って。だから、余計に応えてくれたときはすげぇうれしかったです。

─あらためて、洋次郎くんが思うZORNさんとしてのラッパーとしての求心力──それは本当にいろんな角度から語れると思うんですけど。リアリティではなくリアルなドキュメンタリーとしてのリリシズムであり、ありえないほど固く踏む韻のスキルであり。どんなところに一番刺さってますか?

野田:たしかにZORNの魅力の切り口はものすごくたくさんあるけど、自分の中にあるカッコいい、カッコ悪いを判断するボタンのスイッチにおいてすごく共感できるというか。最初は「マジでエミネムみたいだな」って思って。俺が中学生のときにエミネムにハマって、歌詞を訳したりしていたときに感じた、スターになる葛藤や母親との確執がありながら自分にも家族がいて娘もいるみたいな状況も含めて、どうしようもない自分も曝け出す強さが異質だと思ったし、そういう異質な生々しさと強さがZORNにはあるなと思っていて。それプラス、ラップの高い技術や音楽に対する愛情を感じるところも魅力的なんだけど、それは音楽で飯を食う以上はあたりまえの話でもあって。それプラスアルファのものをすごく感じたんですよね。

ZORN:いやぁ、ありがとうございます。本当に今初めて今回どうして自分に声がかかったのかという理由を聞いてるので。照れくさい思いもありつつうれしいです。

─今、洋次郎くんからエミネムというワードが出ましたけど。

ZORN:僕も母親に訴えられそうになったことがあるので。「家庭の事情」という曲を出したときに「あんたのせいでもうママさんバレーにも行けないわ」って。

─バンドの曲に客演することはこれまでやはり想像してなかったですか?

ZORN:してなかったですね。

─でも、最初は中学生のときにミクスチャーバンドでラップしようとしていたとか。

ZORN:おっしゃる通りです。最初はそういう夢があって。バンドでラップするボーカルになりたいと思ってました。

野田:そういう世代だよね。

ZORN:そうですね。本当に流行っていたし。

─たとえばレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかだったり、海外のヘヴィロックやミクスチャーバンドを聴いたりしてたんですか?

ZORN:いや、日本のバンドでしたね。Dragon Ashとか、あとはRIZEがすごく好きでした。最初はバンドを聴いてラップに入って。

野田:ZORN世代はそういう人が多いよね。そこからヒップホップシーンの隆盛ととともにラップバトルとかも増えてラッパーになっていく人たち。ZORNと同世代や少し下の世代のラッパーから「実はRADWIMPSをめっちゃコピーしてました」って言われることもけっこうあって。沖縄のラッパーの唾奇も「初めてお金払って観に行ったライブがRADWIMPS」って言ってくれたりした。

─うれしい声ですね。

野田:うん。そういう言葉は長く音楽をやってきた一つのご褒美だなと思うし、自分が表現して残してきた音楽が小さなDNAとして違う人の音楽に入ってると思うと、壮大な実験をしているようで面白いとも思うというか、不思議な生殖体験をしているような感じもある。


Photo by Mitsuru Nishimura

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