miletが明かす『5am』で曝け出した「私の内側」、アジアでの熱狂的人気に思うこと

milet

 
miletが約1年半ぶり、自身3作目となるアルバム『5am』を完成させた。ドラマ「転職の魔王様」の主題歌「Living My Life」、テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編のエンディング主題歌「コイコガレ」、ドラマ「やんごとなき一族」の主題歌「Walkin' In My Lane」、映画「七人の秘書 THE MOVIE」の主題歌「Final Call」など全15曲を収録。最新作の制作背景や、アジアでの凄まじい人気ぶりについて本人に語ってもらった。


―お久しぶりです。

milet:クーラ・シェイカーのワンマンぶりですね!

今年2月の来日公演でバッタリお会いして(笑)。あのときのライブはいかがでしたか?

milet:堂々としていてかっこよかったし、やっぱりスターだなって。(サマソニでの共演で)一回近づいたけど、やっぱり遠くで見るべき人だなって思いました。

―その後、3月にはビョークの来日公演にも行ったそうですね。

milet:妖精みたいだなって。なんだか神聖で、大人なのに少女のようにも見えるし……(ライブ中に)長い夢を見ていたような気もします。あとは環境のことだったり、自分の提示したい問題を具体的に伝えようとしていて、終わったあとも考えさせられました。

―ちなみに、最近はどんな音楽をよく聴いてるんですか?

milet:最近、クイーンの「’39」を久しぶりによく聴いてますね。私のすごく仲のいい友達が「この曲が一番好き」と言ってるのを聞いて、「心の繋がりを感じた!」と思って。この曲を聴くと、その大好きな友達への想いもあって、遠いところにいても元気がもらえますね。すごくファンタジーな曲だけど、孤独さもあるし、自分が違う世界に飛ばされているような浮遊感みたいなのもあったりして。



―miletさんは昔から好きなアーティストや作品への想いをずっと大切にしている印象ですが、もともと好きだった曲を振り返る機会も多いんですか?

milet:多いですね。それこそ最近(日本に)来ていたからかもしれないけど、ウィーザーもまた聴くようになって。なんか感じ方が変わったなって思います。フィルターが変わってきたなって。

―それは自分がアーティストになったから?

milet:うん、アーティストとしていろいろ見てきたことで心構えも変わってきましたし、捉え方もそう。細やかにいろんなものをキャッチするようになったなって思います。

―成長ですかね。

milet:成長してるんじゃないでしょうか!(笑)

―(笑)好きな作品を振り返ったりするのと同じように、自分自身のこれまでを振り返ったりもするものですか?

milet:常に振り返っています。曲を作るときも、今まで思い出してこなかったようなこと……たとえば幼稚園の帰り道に、母が漕ぐ自転車の後ろに乗っている時の感じとか、ふと思い出す瞬間があったりして。

―そういう過去の記憶って、今回のアルバムにも反映されてたりします?

milet:ありますね。それこそ、最後の「December」では母のことを歌っていて。私も年齢を重ねたことで、幼い頃に母が言ってた言葉の意味、あのとき私を抱きしめてくれた意味、突き放した意味、何も言葉を発さなかった意味が、今になってようやくわかるようになってきて。連絡は毎日とっているんですけど、今は離れて暮らしている。けど、ときどき会って、またお母さんの愛を感じて……そんなふうに考えるようになってから、母が私に向けていたであろう視線を、私も母に向けるようになり、「守りたい」「支えたい」と思うようになってきたんです。母に対して母のような気持ちになることが増えてきて。

―「December」の慈しむような曲調にはそういう背景があったんですね。そういうパーソナルな部分を素直に表現しているのが、最新アルバムの大きな特徴なのかなと。

milet:そうですね、そういうところを出せるようになってきたのも成長かなって。



―タイトルとアートワークが公開されたとき、miletさんのイメージそのまますぎて最高だなって思いましたよ。

milet:そうなんですよ!(笑)。1stの『eyes』は「私を知ってほしい」というアルバムで、2ndの『visions』はみんなに寄り添うような作品になって。みんなとの繋がりをこれまで大事にしてきたけど、今回は私の内側を知ってもらいたいなと思ったんです。私が一人で過ごす孤独な時間の中身を「扉を開けておくから覗いてみて?」っていう気持ちで作ったアルバムですね。だから、コンセプトも今までとは違うし、ジャケ写もそうですけど、私のまんまです(笑)。

―本当にああいう部屋に住んでそうですもんね、大好きな本に囲まれて。

milet:(笑)でかい本棚がボン、ボンってあって、その前で過ごす時間が一番好きなので。



―『5am』というタイトルも、ハッピーとサッドの境界線というかどちらでもない感じが、miletさんの音楽を言い表しているというか。

milet:夜明け前でもあり、朝焼けが登ってくる頃でもある。一番暗くて一番明るい時間、すごくグラデーションのある時間。自分の心も曖昧で……この曖昧さはたぶん、はっきり分けないほうがよくて。何色とか、どんな気持ちとか、曖昧なまま保管したいなって思っているので。アルバムの曲たちも一見明るそうに聞こえるけど少し物悲しかったり、一つの感情に振り切らないことを大事にしたものが多くなったと思います。

あと『5am』って名付けたのは、ここしばらくの期間、朝5時というものに左右されてきたというか執着してきたのもあって。最近の私のテーマでもあったんですよね。

―実際にこの時間に起きていて、考えることが多かった?

milet:うん。寝られずに起きていたことも多いし、「寝る時間がもったいないな」とずっと作業している時間でもあったりして。本当に午前5時が好きなんですよね。撮影が押し押しで終わって、家に着いたら午前5時になっていたときの感じとか。寝不足で気持ち悪いんだけど、爽快感というかやりきった気持ちもあったりして。

あと、ふとしたときに「私の音楽って何なんだろう?」って思うことがあるんですよ。それこそ……「Noël In July」という曲にも重なるところがある話ですけど、「心の本音を紡いで作った音楽が、みんなにはどう聞こえてるんだろう?」「私が作ったものって、どんな気持ちで手に取られているんだろう?」みたいな。もちろん、聴いてもらえる嬉しさもありますし、正解はないので捉えられ方は様々だと思うけど、歌のなかで厳重に隠していた本音まで見破られちゃってたりするのかな、とか。



―「Noël In July」は曲調からしてクリスマスソングですけど、「July」(7月)とあるように舞台は夏ですよね。

milet:私がクリスマスソングを聴き始めるのは夏で、クリスマスを一番楽しんでいるのはJulyなんです。で、この曲は映画っぽいっていうか物語があって。絵描きの女の子についての曲で、彼女はどんな絵にも雪を降らせてしまう。自分だけの世界を描いていたのに、その絵が次々と買われるようになり、手元に一枚も残らないぐらい捌けてしまって。嬉しいはずなんだけど、「私の世界なんてあなたに理解できるの?」っていう思いもあって。でも、わかってくれる人がいたらいいなっていう、ほのかな希望もある。気に入られることへの喜びと、誰にも理解してもらえない悲しさと、誰にも理解されたくないという気持ちが、私と似ているところがあって。この女の子は私っぽいなーって歌いながら思ってました。

―この曲の主人公にも、miletさんのパーソナルな孤独感が反映されていると。

milet:そうですね、ちょっと形を変えた「inspired by milet」みたいなキャラクターです(笑)。

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