miletが明かす『5am』で曝け出した「私の内側」、アジアでの熱狂的人気に思うこと

 
拡張するダークサイド

―『5am』はギターが印象的なアルバムでもありますね。1曲目「Clan (5am mix)」のイントロから、原曲にはないギターソロが飛び出してきて。

milet:去年行なったツアー「UNZEPP」の1曲目も「Clan」で、最初に登場してくるときにギターの野村陽一郎がソロを弾いてくれたんですよ。それをそのまんま再現したものです。あのときの「始まるぞ!」という高揚感が最高だったので、「UNZEPP」の熱気をここに閉じ込めたいなと思って。

—「b r o k e n」も出だしのギターリフからして痛快です。

milet:これはMEGさんと2人で作ったんですけど、MEGさんはメタルが大好きで、私もメタルも大好きだし、「ちょっとヘヴィメタやってみるか!」と思って作った曲です。MEGさんと曲を作るのが楽しすぎて、すでに何曲も一緒に作ったんですけど、とりあえず「b r o k e n」を聴いてもらおうかなと。すごくハードでエッジーな曲だから、私の見たことのない一面が表れやすいかなと思って。エレキギターの低めの弦と、私の声が重なった感じをぜひ聴いてもらいたいです。

—「ついにこういう曲が来たか!」と思いましたよ。

milet:でも、これはまだ導入ですよ? メタルをやるとなったら私はがっつり行きたいけど、いきなりやったら混乱するかと思って。手始めの「b r o k e n」でもあります。もうちょっと行かせてください、今後。

―(笑)裏を返せば、キャッチーで絶妙なバランス感ですよね。

milet:そうなんですよ。少しポップスっぽさもありつつ。ヘヴィになりすぎないように、っていうのは意識しました。プリティー・レックレスとか、あれぐらいのバランスがいいなと思って。

―たしかに!

milet:アルバム制作に入る前に母とドライブをしたんです、プリティー・レックレスを聴きながら。それで、母から「こういうの絶対に合うよね」って言われたので作ろうかなと(笑)。




―素敵なお母さん(笑)。ちなみに、歌詞に出てくる“Here you are all equally worthless”(ここではお前らみんな等しく無価値だ)というフレーズは、映画『フルメタル・ジャケット』からの引用ですか?

milet:よくわかりましたね! ハートマン軍曹のセリフですけど、すごく冷酷だけどすごく真実でもあって。なんか忘れられなくて。あの人によって狂わされた人生があったわけじゃないですか。

―その辺の劇中描写はインパクトがありますよね。

milet:あのセリフも多面的だなと思うんですよ。この曲があのセリフによって壊れるのか、それとも自分のなかで何かしらの意思が固まるのか。考えさせられるものがあって、ちょっと入れてみました。



―miletさんのダークサイドな曲をいつも楽しみにしているわけですけど、「HELL CLUB」という曲名はいつにも増して直球ですね。どんなクラブなんですか?

milet:ははは(笑)。文字どおり地獄にあるクラブなんですけど、私がインスパイアされたのはギリシャ神話と古事記ですね。それぞれギリシャと日本の古い書物ですけど、どちらも同じように死後の世界が描かれていて。その死後の世界から愛する人を引き戻そうとして、振り返ってはならないと言われ、でも振り返ってしまったりする。その愛ゆえのエゴとまだ見ぬ地獄のドロドロ感が、日本と海外で接点がなかったはずの時代に共通認識として描かれているんですよ、しかも同じような死後のビジョンで。それがすごく面白くて。

だから、「HELL CLUB」も抜け出したいようで抜け出せなくて。でも愛する人に会いたくて。抜け出したいけど、ここの居心地はあまり悪くもないっていう。古事記でも描かれているように、冥土の食べ物を食べると元の世界に戻れなくなってしまう、その場所の楽しみを味わってしまったらもう帰れないっていう意味での「HELL CLUB」です。

―深い(笑)。

milet:この曲は総監督をドックが務めつつ、DJであるHiRAPARKと初めて制作したので、彼のクラブサウンドを前面に出したいなと思って。「今日はHELL CLUBっていう曲を作るからね」って伝えたら「お願いしますっ!」みたいな感じでノリノリだったので、「頼り甲斐あるなー」と(笑)。音作りも低音の響かせ方とか、サンプルの使い方もすごく好みでしたね。

―“馬鹿は死ねども踊り続けてる”というフレーズが異彩を放ってますね。

milet:「バ」の発音が大好きですね。みなさんに注目していただきたい。“馬鹿”の「バ」。

―(笑)曲終盤の“Testo ramme testo ramme / Testo ramesteco me”といったフレーズはイタリア語ですか?

milet:イタリア語の音楽用語もありつつ、私が勝手に作った造語です。私のなかではしっかり意味がある言葉なんですけど、そこは好きに解釈してもらいたいですね。みんなの解釈によって、この曲の世界観というか正解が変わってくる気がするので。この曲のあと、みんなが地獄から抜け出せるのか、はたまたすべて巻き込んで地獄に落とし込んだまま終わるのかは、この造語のなかでみんなに設定してもらえたらなと。

―リスナー各自が地獄への解釈を問われるわけですね。

milet:そうです!

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