クーラ・シェイカーが語る爆発的なバンド・マジックと過去・現在・未来、日本への特別な想い

 
インド文化の影響と「ファミリー・ビジネス」

─あなたがインドの文化に造詣が深く、影響を受けていることは知っていましたが、「Indian Record Player」の歌詞には驚きました。あんなにボリウッド映画に詳しいんですね! 特に好きな映画やサウンドトラックを教えてもらえますか?

クリスピアン:たくさんあるよ。……特に1960年代から1970年代初期にかけてのボリウッド音楽は……ボリウッドはいつだってハリウッドの影響を受けてきたけど、音楽の占める割合がものすごく大きいんだ。映画は60年代のポップカルチャーやカウンターカルチャーの影響を受けている。だけどイタリアン・シネマや、エンニオ・モリコーネの影響も吸収していった。だから1960年代のボリウッドを紐解いてみると、クーラ・シェイカーがインドのものを吸収していたのと同じようなことを彼らもやっていたことに気づくんだ。インドも西洋のものをたくさん吸収していたけど、何をやってもすごくインド的になるというか。インド文化のパワーというのは、本当にたくさんの人たちが侵略したというのに、行くとみんなインドっぽくなって帰ってくるところにあるよね(笑)。みんな逆に侵略されてしまうんだ。

─(笑)

クリスピアン:文化的に侵略されてしまう。それがインド・マジックであって、世界のいわゆる「マザー・カルチャー」のひとつであるという主張もそこから来ているんだ。僕が最初に衝撃を受けたインド映画は、1960年の『偉大なるムガル帝国(Mughal-E-Azam)』だった。皇帝アクバルの息子が女性ダンサーのひとりと恋に落ちるという内容で、彼は優秀な兵士だったんだけど、その女の子と恋に落ちてしまったことがきっかけで父親に拒絶されてしまう。愛をかけた素晴らしい戦いだよ(笑)。素晴らしい曲がたくさん使われていて、インドの昔ながらの音楽とハリウッドのミュージカルを組み合わせたような感じなんだ。それがテクニカラーで復刻されたのを僕は観た。まるで『風と共に去りぬ』みたいで、心が完全にぶっ飛んだよ。インドでは超有名な映画だったけど、西洋ではあまり知られていなかった。パラレルユニバースに行けるような感じで魅了されたんだ。すごく古い映画だけど、それがきっかけで(インド映画や音楽に)のめり込むようになった。



『偉大なるムガル帝国』より

─新作でも、古いインドの映画『Yaadon Ki Baaraat』(1973年)に使われていたR.D.バーマンの曲、「Chura Liya」をカバーしていますね。あの曲をああいうアレンジで、デュエットとして仕上げるのをどうやって思いついたんですか?

クリスピアン:曲を聴いて、昔ながらのボーカル曲だというのはすぐわかった。あれもまたこっち(西洋)ではあまり知られていない曲だけどね。あの曲にエンニオ・モリコーネの影響を強く感じたんだ。マリアッチが出て来そうな感じ。この曲ではそれを引き出したかった。それと、時には曲を聴いて「あれ、これ歌えるかも」と思うことがあるんだよね。「僕が歌ったら合うんじゃないか」みたいな。ショップで洋服を見かけるのと同じような感じだよ。「あ、これ着られるかも。僕が着たらきっと似合う」みたいな……(と言って吹き出す)そういう感じだった。ただ、曲にしっくりくる声を見つけないといけなかった。最初は「Govinda」で大昔一緒に歌ってくれたゴウリ(Gauri)に歌ってもらおうと思ったんだけど、彼女は声帯の手術をしたばかりだったからできなかった。それで彼女のレコードでタブラを演奏している甥っ子を通じて別の人を見つけた。ゴウリにそっくりな声だったよ!(笑)。バングラデシュのアクセントがすごく強いんだ。シレット(Syhlet)という地方のアクセントだね。同じ地方の出身だったこともあってゴウリにそっくりだったんだ。素晴らしい仕事をしてくれたよ。




─「Something Dangerous」でタブラを叩いたのは、『K』に参加していたミュージシャンの息子さんだそうですね。物語が一巡した感があります。

クリスピアン:そうなんだよ! 『K』で叩いてくれたのはヒマングシュ・ゴスワミで、「Jerry Was There」と「Govinda」に参加してくれた。2作目(『Peasants, Pigs & Astronauts』)でも歌ってくれていて、僕たちに大きな影響を与えた人なんだ。インドではとても有名な人だよ。彼の息子ヒマネシュはヒマングシュのミニ・バージョンみたいな感じ。僕が出会ったのは彼が9歳か10歳くらいの頃でね。今はもう大人で、タブラを学んできた。そしてファンキーなマザーファッカーでもある(笑)。

─(笑)

クリスピアン:本当だよ! しかも14代続く音楽一家の末裔なんだ。大昔のデヴォーショナル・シンガー(神に捧げる歌を歌う人)たちと血が繋がっているらしい。

─そうやって、インドのミュージシャンたちとも長い間家族ぐるみの交流が続いているのですね。

クリスピアン:そうだね。クーラ・シェイカーは長年の間に、ひとつの大家族になった。バンド・メンバー、その子供たち、奥さんたち、共演したミュージシャンたち、映画監督たち……大好きで信頼のおける人たちと、とても密なコネクションを築いている。だから何か作る時も、仕事としてやるというよりもファミリー・ビジネスの感覚なんだよね。で、ショウをやる時も、特にイギリスではみんな知り合いなんだ。ゲストも、個人的に繋がりのある人たちから選んでいるよ。

僕らの子供たちもみんなビデオに出演しているよ。僕は俳優のサイモン・ペッグと仕事することが多くて、彼がビデオの監督を務めてくれるんだ。すると彼も自分の子供とかお母さんをビデオに登場させる。タダで才能を使っているって訳だ(笑)。

Translated by Sachiko Yasue

 
 
 
 

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